2012年05月14日

青空〜後篇〜(最終回)

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青空〜後篇〜(最終回)

『あとがき』では第1話から最終回(第20話)までの詳細を記載しています。← こちらをクリック



『闇の販売所』(番外編)更新中


第1話(ゲーム)はコチラをクリック→ → 第1話(ゲーム)







あの3人組と何か関係があるの?一瞬・・・あの恐怖が脳裏をよぎる。

「ご安心下さい。単なる私の想像です。」


私の心配を打ち消すように彼が言い放った。

想像?こんなところに呼んだ理由が分からなかった。


逃げだした方が良いような気がして来た。


ガタ・・・!
椅子から立ち上がると

「私、帰ります!」


それだけ言うとドアに向かって歩き始めた。

・・・


「何処に帰るんですか?」

「何処って・・・うちに決まってるじゃない!!」


「止めたりしませんが、あなたに帰る場所はありますか?」


!?


この人・・・何が言いたいんだろう?

確かに家には・・・もう・・・

「私は闇の販売所という名前の店主をしてまして・・・」


彼は話の途中で

コホン!
と咳払いをして私を見つめる。


えっ?なに?そのお店が何か?


「どうせ・・・死んでしまう命なら幸せになりたいと思いませんか?」


死ぬのに幸せに?

「ちょっと意味が分からないんですけど」

・・・


「私は20年・・・あなたのような人を待ってました。」

!?

待ってた?20年も?
なんか怖いんですけど・・・


それと、何歳なんですか?


「単刀直入に言いますが

・・・


あなた・・・


私の販売所をやるつもりはないですか?」



「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?」


なんの店かも知らない。というか私まだ高校生だし、意味分かんない!

「あなたに取って悪い話ではありませんよ」

「そんなの絶対にやりませんから!帰ります!」


「お待ち下さい。最後まで話を聞いたうえでお決めになっても良いんじゃ
ありませんか?」


彼の言葉には不思議な魅力があった。


何故か?


そんなこと私にも分からない。

ただ・・・

聞くだけなら良いかと思った。


「純粋な心の持ち主が人からの裏切りや暴力により憎しみや恨みに変わる。

その憎しみが大きければ大きい人ほど店主になれる。

あなたには・・・その素質があります。

難しく考えることはありません。ただ、私が来ている・・・このコートを
着るだけです」


「・・・」


「闇の販売所店主になる利点は来世の幸せです。」

「来世?」


「はい・・・何不自由の無い幸せです。たったそれだけ?と思いますか?
違います。その幸せを手にしている人間は世界中で、ごく僅か・・・
みんな何かしらの不幸があるのです」


確かに・・・
そうかもしれない。テレビでアフリカに暮らす人を見ると日本に生まれて
良かったと思う。


「歴代の店主たちが来たコートを着るだけです。それに人を不幸にすれば
するだけ来世が満たされます。
それと同時に彼らの記憶も受け継ぎますがね」


「は?」


「このコートには絶大な力と少しの意思があります。着れば・・・おのずと
何をすべきか分かりますよ」


「イマイチ理解に苦しむけど・・・取りあえずコート着たら力が手に入って
、来世が幸せになるってことでしょ?」


「まぁ・・・そう言うことです」


「なんかウソっぽい・・・」


・・・



「ウソなど付きません。ただ女性の店主は初めてなもので・・・」

「女性だと何か問題でもあるの?」


彼は少し笑いながら「まず・・・声質うあ喋り方が変わります。更に記憶の
9割が闇に封印され、喜怒哀楽の感情が『楽』だけになります」


「記憶なくなるの?そんなの絶対イヤ!!」


「今の記憶は・・・あなたを苦しめるだけじゃ無いですか?」


私の考えてることなんて、ぜ〜んぶお見通しって感じ。



今の記憶は消してしまいたい


「悪いことばかりでは、ありません。決して年を取りませんから」


「年?その・・・なんて言うか、ずっと永遠に店長やるの?」


「そんなことはありません。1500年も先の未来で・・・既に最後の店主は
決まっています。」


「1500年・・・!?」

「私と同じように・・・あなたにも後継者が見つかるはずです。」

「私、まだやるとは言ってません!」

「大丈夫・・・。私には、あなたの未来がわかる」


・・・


「一つだけ質問しても良い?」

「はい・・・なんなりと」


「何のために・・・そんなコートが存在するの?私が店長になったら、あなたは
どうなるの?」


「このコートの存在は、焦らなくても・・・いずれ分かります。後継者が決まると私は・・・」


「どうなるの?」


「消えてしまいます」


!?



「なんで!?消えたら意味無いじゃない」

「意味が無い?

逆です・・・


20年も年を取らずに生きた人間が行く先を考えれば、ごく自然な事」


・・・


「さぁ!どうなさいます?今なら引き返せます」

・・・


私は



私には、やらなければイケない使命に思えた。



「やります・・・」


「分かりました。では・・・このお店で一番の商品『闇の衣』をあなたに・・・」


彼は、ゆっくりと確実にボタンを外し始めた。



「最後にお願いあるんだけど・・・良いかな?」

彼の指が止まり
「なんでしょうか?」


「初恋の人の思い出だけ残したいの」


「それは・・・どうでしょう?なんとも言えませんが・・・

失ってしまうと記憶が9割。残り1割に賭けるしかありませんね」


・・・


ボタンを全て外し終わると彼は・・・


黒い霧に包まれた。


・・・


残されたコートを手に取り、私はコートを羽織った。

・・・


暗く・・・深い闇・・・

私の記憶は、ここに封印された。

見えているが感情とは違う行動に出る私



今日から、闇の販売所店主


遠い過去の記憶
遠い未来の記憶
二つが私の意識に入って来る。


・・・


「おや?さっそく注文のようですね」


私には全てがわかる。

あと5分もすれば闇の販売所に客が来る。心に・・・その客が映像のように
入って来る。かなり焦っていて、何かに逃げるように走っている男


ガチャ・・・


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」


「あの・・・サイト見たんですけど」

息が少し荒い。彼は汗を拭(ぬぐ)いながら答えた。

彼が来た理由も欲しがっている物も何故か分かる。

『闇の衣』まさに闇の販売所で最高峰の商品。


しかし・・・
私は知らないフリをして

「取りあえず・・・中へどうぞ」

・・・


「実は・・・さっき人を轢いてしまって」

「ほぅ・・・それは、また難儀ですねぇ」


・・・


彼はウソを付いている。
3時間24分前に人を刺し殺している。


私にはそんなことまで分かってしまう。刺し殺しておきながら

車で轢いたとは図々しいヤツ。


「その轢かれた人は・・・今病院ですか?」

「それが・・・スピードの出し過ぎで死んでしまったんです。
お願いします。助けて下さい!!お金なら・・・いくらでも払います」


勝手な人間。ウソまでついて助かりたいのか?

「サイトに書いてあった・・・壺を売って下さい」


彼が欲しがっているのは、恐らく煉獄(れんごく)の壺。

どんな大きな物でも一つだけ壺に入れる事が出来て、地獄の炎で焼き尽くす。

死体の処理に困ったか?

・・・


「なるほど・・・よろしいでしょう。ですが、この壺に人間を入れてはイケませんよ」


一瞬・・・


彼の顔に動揺が走る。


「そんなことは、買った俺の勝手だ。どう使おうが自由だ!」


いきなり怒りだす姿を見て思った。

お金さえ払えば、どうにでもなると思ってる。
そんなに自分が可愛いか?


「分かりました。では・・・こちらの商品2千万ですね」


彼は上着のポケットから小切手を取り出すと机に叩きつけ、


「早く持ってきてくれ!」

壺を奪うようにして帰って行った。

・・・


私には彼の未来が見えていた。壺に入れた物は灰も残らないほど燃え尽きる。

しかし・・・憎しみや復讐、怨念で構成された炎!!!

生死に関係なく人間を入れると

・・・


見えない殺人鬼となって、恨みをはらしに来る。


見えない殺人鬼に追われ・・・闇の販売所に助けを求めて来る。

2度目の来店が死に場所とは知らずに・・・

・・・



そこまで彼の未来が見えた。

・・・


「困りましたねぇ。こんなところで死なれると・・・私の方が死体処理に
困ってしまいます」

・・・


一週間後・・・
私の見た未来の通りに彼は死んだ。

初仕事で、初めて人の死を目の当たりにしたが『楽』以外の感情がない私は


「やれやれ・・・」



・・・


そんな客ばかりが闇の販売所を訪れた。

そして半年が過ぎた頃


ん?


ある日、いつもと変わらない午後の事。

闇の販売所は通信販売も行っていて、一つの注文が届いた。


「ん〜・・・?少しマニア向けの商品ですねぇ」

・・・


「確か在庫に・・・まだ『リアリティホラー』が有ったはず」



戸田という名前の申し込み人


リアリティホラーと呼ばれる商品を送ってから


2日後・・・


私は公園のベンチに座っていた。


記憶が無いから分からないが・・・落ち着くベンチ。

それと何故か、女子高生を見ると羨ましくなる。



「な〜んか、あのオッサンこっちばっか見て無い?」

「うわっ・・・キモいから行こ!!」


そんな会話が聞こえてきた。彼女達の目に私は・・・



オッサンに見えてるらしい


本来なら悲しむべき場面。

でも、私には出来ない。


彼女達が小走りに去って行くのを眺めて

一つだけ疑問に思った。


「そう言えば・・・私の名前。なんだったんでしょうね?」


知る必要も無かったが、忘れた記憶が多すぎる。


『失敗』『後悔』などの感情が出来ない分、心に穴が開いてる感じだった。


更に翌日・・・

「ん?また・・・お客様ですね」


心の中に誰かの映像が飛び込んできた。
50代くらいの男性で挙動不審


あと1時間27分後に来店する。

「さて・・・彼は何をお探しですかな?」

深く調べようと思った瞬間・・・


!?

激しい目まいに足元が、ふらつく
「何事です!?」


ガクッ!!

床に片膝を付き


ドン!


そのまま倒れこんでしまった。
「な・・・なに・・・が・・・」


薄れる意識の中で

最後に私が見たモノは

・・・



身体が透明になって行く自分だった。


目が覚めた


「うぅ〜ん・・・」


当然、気を失って倒れたまでは覚えてるけど、何処ここ?



「痛っ!」

腕を擦りむいて血が出ていた。


「も〜!いきなり・・・なんなのよ!?」


ん?


「あれ?私・・・?」


!!


身体を見て驚いた。

コートが無い

しかも



私としての意識がある。



「ん〜と・・・ん〜と・・・なんで?」
考えても仕方ない。


う〜〜ん・・・

ん?

やけに殺風景な森や道。


・・・



「そっかぁ〜」


直ぐに分かった。リアリティホラーの世界にいると・・・

「お兄ちゃん・・・私を苦しめておいて、まだ飽き足らずに殺すの?」

・・・


凄く切なかった
みじめと言うか悲しい


ボロ・・・ボロ・・・

あれ?
久しぶりの涙が、頬を伝って落ちる。


「今の私には悲しむことが出来る」

きっと封印された記憶が開放されたんだ。

・・・


悲しんでばかりは居られなかった。

ここは・・・お兄ちゃんが作ったゾンビの世界。

私を強制移動させたことを後悔させてやる!!!


バン!! バン!! バン!!


コートが無いとはいえ私はやみの販売所店主



不思議な力が時空を超えて伝わって来る。

ひたすら銃でゾンビを撃ち殺す

・・・


「うぅ・・・」
「ぐぅぁぁぁぁ・・・」


群がるゾンビを見て

ん!?



この人たち


私をレイプした人じゃない!?

実の兄として恥ずかしい。怒りを通り越して

空しい気持ちになる。


ザクッザクッ・・・


順調に草むらを歩いて行く。


多分・・・
もう少ししたらボスかな?


・・・



「え〜っと・・・アイツかな?」


身体中が腐った巨体のゾンビが見えていた。


余裕で近づいて行く。


ん?

ん?


ブッツン!

その音がした途端、辺りが闇に包まれた。


「・・・」


お兄ちゃんに、してやられた。電源を落としたに違いない。
また意識が無くなり始める。



何故なら、クリアしてしまうと


お兄ちゃんが、このゲームに引きずり込まれるから


「おや?私・・・何をしてるんです?」


床で寝ていたようで、ヨロヨロと起き上がった。


「え〜っと・・・」



確か、もうすぐ誰かが来店するはず。

眠ってしまった記憶が無かった。

「変ですねぇ」


・・・



ガチャ・・・


先ほどの映像で見た男が入って来た。

「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」

・・・


空は



空は、いつにも増して快晴だった。



青空完了


闇の販売所〜〜〜おわり〜〜〜


『あとがき』では、第1話(ゲーム)から最終回(第20話)までの詳細を記載しました。

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posted by まさるっち at 23:31| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月13日

青空〜前篇〜(第19話)

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青空〜前篇〜(第19話)


静かな室内で鏡の前に佇む少女

時折、笑ったり、怒ったり・・・悲しい顔をしている。

・・・


いかにも女の子らしい部屋で既に30分も鏡とにらめっこをしている。


しかし、彼女の目は・・・笑っていなかった。

「ふぅ〜・・・」

ため息か深呼吸か分からない吐息。

部屋を出て学校へ向かう。


・・・


途中、何人かと挨拶をして教室に入る


「おはよう!」

「あっ・・・おはよう」


「ん〜・・・らしくないね?どうしたの?」


親友が私の微妙な表情に気付いたようで・・・

「うん・・ちょっとね!」

「なになに?もしかして恋しちゃったとか?」


キーンコーン カーンコーン・・・


「あ!後で話してよね」


予鈴に救われた感じだ。

恋なんか長いことしてないなぁ。

私の軽はずみに言える内容では無かった。


私の人生は約2カ月前の夏休みに終わった。
人生が180度変わったという方が適切かもしれない。

私はコンビニのアルバイトをしていて、毎日が楽しかった。

あんな事件が待っているなんて想像すらしなかった。

・・・


7月の比較的涼しい一日だった。


7月下旬・・・

バイトを終えた私は徒歩で家路を目指していた。

西日が眩しく、あと数分もすれB暗くなるだろうと予測出来た。

あの日は・・・住宅街なのに誰ひとりとして人の姿を見掛けなかった。


残り数百メートル
あの角を曲がれば自分の家が見える。


!!

角を曲がろうとした瞬間に肩を叩かれた。




振り返ってみると知らない男三人組。


「なんですか?」

そのうち一人がニヤニヤしながら声を掛けて来た。

「きみ・・・戸田まなみって子?」

!?


いきなり本名を言われて戸惑った。

えっ?なに?
なんで私の本名知ってるの?


どうしよう!?


「どうなんだよ!?ハッキリしろよ!」

いきなり怒鳴られて怖くなった。考える間も無く・・・


「はい・・・そうですけど」


そういうと男が三人が顔を見合わせて

「コイツだな!」

「間違い無いな!」

などと言い始めた。


えっ?何が間違いないの?

!?

一人がいきなり私の腕を掴んで、後ろに回した。


「痛い!何するんですか!!?」

もう一人が私の口元をふさいで。


「うっ!なっ!・・・ぶぐず・・・」

言葉にならない悲鳴をあげた。

咄嗟の出来事に混乱する!手足をバタつかせて必死に抵抗するが

男三人の前では無意味だった。


バシッ!!

「静かにしろ!」という怒声がして顔を叩かれる!


なんで!?

私が一体何をしたって・・・いうの?


もしかして誘拐?

私は大人しくしている方が安全だと思って力を抜いた。


・・・


ブゥ〜〜ン・・・

無理矢理ワゴン車に乗せられた私は怖くて、ずっと震えていた。


日本において戦後、身代金誘拐が成功した例は1件だけ・・・
被害者の大多数が殺されていることを知っていたから


余計に怖かった。


でも・・・違った。

目隠しをされ、ガムテープで口と手を縛られていた。

何処に連れて行くんだろう?私の両サイドに男がいて
二人とも喋らなかった。

・・・


ほんの10分ほど移動して車が止まった。

何処だろ?

!?

左隣に座っていた男が私の胸を触りだした。

「んぐうぅぅぅぅぅ・・・」

必死に抵抗するが・・・

・・・


「よし!やろうぜ!」

えっ!?


いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜・・・・


私は泣きながら叫んだ。


けど



代わる代わる三人の男にレイプされた。

初めての経験をどこの誰かも分からない三人に奪われた。


バシャ・・・バシャ・・・


犯し終えた三人が道端に私を放り出す。


「もし誰かに喋ったらこの写真バラまくからな!」

それだけ言うと車は走り去った。

・・・


腫れた頬、乱れた衣服、血のついた下着・・・


涙しか出なかった・
死んでしまいたかった。


・・・


誰にも言えない。
家族にさえ打ち明けなかった。


「ただいま・・・」


平静を装って帰宅して直ぐに部屋で着替える。

・・・


知られたく無かったから家族には顔を見せなかった。


黙っていれば大丈夫

そう思って、毎日・・・泣いていた。


忘れたくても決して消えない最悪の記憶。

夏休みが終わり・・・私は外出出来ず、しばらく学校にさえ行けなかった。


それでも普通に戻りたいと思って学校に行くことにした。


誰かが知ってるんじゃないか?それだけが怖かった。

朝・・・学校は行くと皆から声を掛けられた

「大丈夫?」

「心配してたんだから」

など・・・知ってる人はいなかった。

良かった。


「メール位返してよね!」
「あぁ・・・ゴメン。携帯・・・ちょっと調子悪くって」

・・・


携帯電話は、あの三人に取られたままだ

あの出来事は、いつか時間が解決してくれる。

私が黙っていれば、誰にも知られずに夏休み前の私に戻れる。


そう信じて疑わなかった。

あとは携帯を解約して、知らぬ顔で毎日を過ごせば良い。

・・・



私の小さな願いは



いとも・・・簡単に裏切られる。


学校に通い始めて数日が過ぎた頃・・・

警察が私を尋ねて来た。


どうしよ!?レイプがバレた?みんなに知られちゃう!
生きていけなくなる!!


うちの母親が対応して

「お母さんも一緒に警察署にご同行願います」


やっぱりバレたと思った。
パトカーの中で、お母さんは無言のまま外を眺めてた。

・・・


取調室・・・

ドン!!

「私・・・そんなことやってません!!!」


想像していたことと違う警察の言葉に腹が立ち

思いっきり机を叩いた。

「ですが、被害者男性の証言によると確かに君たちだと言っていますが?」


「何かの間違いじゃないんですか!?」


警察が切り出した内容は・・・最悪だった。


援助目的のオヤジ(被害者)が私と待ち合わせしたらしい。
そして待ち合わせ場所に現れたのは3人の男と1人の女の子。

四人掛かりで被害者を痛めつけると現金を奪って逃げたという。


その時の携帯アドレスから私が浮上したらしい。
捕まった3人も私で間違い無いと言い張った。


やられた。

携帯を使ってオヤジ狩りの共犯者に仕立て上げられた。


お母さんは、うつむいたまま、ずっと泣いている。

なんで泣くの?自分の娘が信じられないの?


「取りあえず、この携帯電話はお返しします。被害者男性が、なるべく
穏便にしたいとの要望がありまして・・・それに君達4人は、まだ未成年ですから
不起訴になるでしょうし」


翌日・・・


お母さんだけ警察に呼び出されて出掛けていった。

憎い。
あの3人を殺してやりたいと思った!

私の人生をメチャクチャにしておいて、まだ壊す気なの?

・・・


レイプがバレ無かっただけマシだと思った。


お母さん警察で何聞かれてるんだろう?

不起訴処分になったことで捕まることはなかった。


けど

このことでマスコミなんかが騒いだら・・・どうしよう!?


気が気では居られなかった。一人リビングを往復する。

親に心配させたくない気持ちが逆に心配させている?


今は、母親を待つ事しか出来なかった。


数時間後・・・


お母さんが帰ってきて二人きりになって
「まなみ・・・本当に援交とかしてない?」

!?

「私やってない!たまたま落とした携帯、悪用されただけだから
信じて!!」


私の答えに、お母さんは信じてくれたようだった。

「まなみを信じるわ。でも、妊娠とか無い?大丈夫?」


なんで!?
そんなこと聞くの?遊んでると思ってるの?

そういえば私・・・


けっこう長いこと来てない。


生理不順だとばっかり思ってた。
妊娠なんて考えもしなかった。

・・・


「9週目ですね」
産婦人科の医師が無表情に言う。
隣りではお母さんが、また泣きだしていた。


親不孝な私でごめんなさい。

夜・・・
帰宅して、お父さんに激しく殴られた。


「相手の男は誰なんだ!?」


初めて怒り狂ったように言うお父さんが怖かった。

相手なんて言えない。
言えるはずが無い。

何処の誰かも分からない3人組。

「勝手にしろ!まだ子供のくせに!そんな風に育てた覚えは無い!出て行け!!」


・・・


私が悪いの?

ねぇ?


どこまで私は苦しんだら・・・楽になれるの?


たくさん泣いた。
泣いて泣きまくった。

顔が痛いよりも胸が痛かった。生きていることが苦しかった。


翌朝・・・


鏡の前で笑ってみる。
左目が少し痛むがチークで、ごまかせる。

笑ったり、怒ったり、腫れた顔を見て・・・


私は、生きてきても良かったですか?


鏡の中の私は・・・



はやり泣いていた。


学校へ行くと友達が心配そうに見つめて来る。

この悩みだけは言えなかった。また暫く学校を休む事になる。

明日・・・


中絶することをお母さんと決めた。

父親の欄は未記入で書類を提出

・・・


最後までお母さんは無言だった。何も聞かないでいてくれることが

一番、嬉しい

私には、一つ上のお兄ちゃんがいて暗い性格であまり好きじゃ無かった。

同じ家に居ながら顔を合わせることもなく、最近学校へ行ってないようだった。

・・・


私が療養の為に家に居た時のこと


ん?


部屋の前を通り掛った時、ドアが少し開いていて

誰かと会話しているのが聞こえた。

・・・


「えっ?あと10万ですか?もうお金無いんです・・・3万なら何とか」


会話の内容から誰かにカツアゲされているようだった。


次の言葉は、私を奈落の底に突き落とす。


「はい・・・。えっ?もう一回、妹とやりたいんですか?
でもアイツ、中絶したばっかりで!あ・・・はい。
分かりました。じゃあ妹が家を出たら連絡します。」


一瞬、言ってることが良く分からなかった。

私ともう一回・・・?

・・・


・・・


理解するまでに時間が掛った。

私は利用された

お兄ちゃんは苛められない代わりに私を売った。

自分のために実の妹を犠牲にした最低の人間

私の人生を台無しにした張本人がお兄ちゃんだったなんて


・・・


カラン・・・カラン・・・カラン・・・


踏切の前で悩んでいた。

・・・・


もう生きていたくない。
これから生きて行く自信もない

このまま生きてると、また襲われる。


それならば、いっそのこと死んでしまえば・・・


もうすぐ電車が来る。

遮断機に近づこうと少しずつ歩き出した。


ガシッ!!


いきなり腕を掴まれて振り返った。また知らない男性。


「まだ死ぬには早いんじゃありませんか?」


・・・


腕を掴んだ男の人は20代半ばくらいで短い髪の毛に切れ目

9月なのにロングコートを着ていた。

「離して!」


振り払おうとしたが、素直に離してくれない。男の人は信用出来ない。


「宜しければ、お話くらい聞かせてもらえませんか?」

・・・


頭では拒否しているつもりでも身体が言うことを聞かない。
彼の目を見ていると、従わなければイケない気になる・・・

・・・



闇の販売所


怪しげな建物の中に案内されると椅子と机だけの部屋。


彼は椅子に座るように指示し、私が座ると静かに喋りだした。


この無表情な室内が、私にはやけに落ち着いた。
別の空間にいるようで、うまく表現できないけど・・・


お母さんの腕の中に抱かれているような感覚

・・・


「恐怖から始まり、痛みが癒えぬまま家族から見放され・・・そして裏切られた
失意の果てに絶望して死ぬ。

そんなところですか?」


!?


なに?この人!?
私の一部始終を知ってるようなセリフに驚いた。



≪お詫び≫※作者より
青空〜前篇〜において援交や妊娠中絶の内容がありましたが、これは推奨したり
批判するモノではありません。

第1話(ゲーム)からのストーリー展開ができなくなるための表現です。

不快に思われた方への謝罪を致します。並びにご理解をお願い致したく、読み
進めていただければ幸いです。

青空〜前篇〜は終了です。
◇次回は後篇です◇是非、第1話(ゲーム)からお読みください。

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posted by まさるっち at 18:23| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月11日

27:27:27(第18話)

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27:27:27(第18話)


あと二か月足らずで夏休み。

短いようで長すぎる!

まだ梅雨の影響で雲天の空模様

いつもより蒸し暑い

・・・


今日発売される新刊雑誌を買いに行かねば!

帰宅部で良かった♪

AM11:23

PM5:03


いつもの本屋で立ち読み。

お!あったあった!!


暇だから、もうちょっと時間潰そっかな〜
そんな他愛ない考えで歩いていると




ん?
なんだ・・・あの男?

ずっと俺の方を見てる??

ロングコートにフードを被った男がいた。
目線がわからないけど、こっちを見ているような・・・


最近不審者が増えたからなぁ!本屋は涼しいけど
ロングコートはあり得ない。

ん?

あっ!


近づいてきた。

PM5:12

「あの・・・あなた!少しお時間よろしいですか?」

はぁ?
あなた?
かな〜り怪しい。どおうやって逃げようか?


「あっ・・・と、俺、今急いでいるんで時間ないです」

・・・


・・・


「あなた・・・死相が出てますよ」

!!


「し・・・そう?」

「はい・・・もうすぐ死ぬという事ですね」

!?


「ちょっ!どこの誰だか知らないけど、いきなり、そんなこと言うなんて
・・・頭おかしいんじゃねぇの?」

少しキレた。


・・・


「これは失礼しました。ですが・・・もし本当なら、どうしますか?
素直に受け入れますか?」


この人・・・
本当に俺がいつ死ぬか知ってるような口ぶりだ。

「じゃあ、なんで死ぬって分かるの?死相って、どんな風に出るの?」

「そこまでは、お答え致しかねます」


なんだ!やっぱり
変質者の戯言(ざれごと)か・・・


「信じる信じないは、あなたの自由です。
ですが・・・
変質者が本当の事を言うこともある」


えっ?!!
心を読まれた?


男はポケットから紙とペンを取り出すと何か書き始めた。
それを俺に渡すと


「もし・・・気になるようでしたら、こちらに連絡を」

!!

紙を見て思わず絶句した!


「こっ・・・


これは・・・!!?」


何かの間違いか?


紙には可愛らしい
まる文字。

なぜ・・・女子高生のような字?


闇の販売所?」

紙には住所と電話番号・・・それに闇の通販サイトURL


「はい・・・私、闇の販売所なるお店を経営しております」

住所を見ると家から近かった。
こんな店聞いたことも見たことも無い!
頻繁にウロウロする場所だけに余計怪しい。

・・・


ん??
あれ?


いない・・・


住所に夢中になっている間に男の姿は無かった。

PM6:47

「ただいま〜」

「おかえり!」


もうすぐ夕食
食卓には家族4人分の食事が用意されていた。

・・・

・・・


部屋のベッドで寝がえりを繰り返す。
やっぱり気になる。

『もうすぐ死ぬ』と言われて良い気はしない。

そりゃ人間いつかは死ぬけど

俺まだ17だし。


でも本当に死ぬなら理由とか原因知りたい!

それが分かれば
死ななくて済むかも!


でもイマイチ ウソ臭い。
死相なあんか信じて良いのか?


PM10:36

紙に書かれたURL
ちょっとだけアクセスしてみよう。

そう思ってパソコンをいじり出す。

カチカチ・・・カチカチ・・・

・・・


機種が古いから時間が掛った。

・・・


闇の販売所


出てきた。


ん〜と・・・

ん?

「うわ!!フリーズかよ〜」

古いだけあって、たまにこうなる。
じゃ〜ない!


今日は諦めて明日またアクセスしよう。
そんなに焦らなくても良いよね?


多分


翌日・・・

授業を受けている時も
昼食時も
いつもサイトが気になった。

・・・

PM6:37

部屋で再度アクセスを試みる。

ダメだ!途中でフリーズする。うちには、まだパソコンが2台あった。


闇の販売所サイト・・・

「ん〜?なんだ・・・このサイト」

変な商品の道具名が揃ってる。寿命とか家族とか・・・
意味不明な商品で高い。

・・・


ちょっとだけ
電話で詳しく聞いてみたいな。
自分の死について


聞いてみるだけ。

でも、なんて言えば?
俺のこと覚えてる?


トルゥゥ・・・トルゥゥ・・・

「はい・・・こちら闇の販売所です」


出た!!
どうする?


「あ・・・あの、え〜っと・・・」

「おや?一昨日の学生さんですね?」


!?


「やはり気になりましたか?」

「いや・・・気になって無いけど、なんとなく」

「・・・」


「気になってるかも」

「どうです?よろしければ明日あの書店で、詳しく説明しますが」

「説明?」

「詳しく知りたいから電話なさったんじゃ・・・ありませんか?」


PM11:15

明日
いつも行く書店で午後4時に待ち合わせをした。

なんの話をして何の得がある?
イタズラに思う。

どうせ暇だから良いけど・・・


鼻から信じて無い。
単なる暇つぶし

普通に考えて4時に待ち合わせは無理だ!

・・・


ということで体調不良を理由に午前中で早退した。

PM1:18

かなり早く到着してしまった。
一旦帰ろうかな〜・・・


ん?

「待ち合わせ時間よりも随分早いですねぇ」

そりゃ〜こっちのセリフだ!!

「ここでは、なんですので近くの公園で話しましょう」


言われるがままに男に従った。
早退してるから、うろつきたく無かったけど
男の後ろを付いて行く。


公園・・・

この公園は良く知ってる。かなり大きな公園で昼間は多くの子供たちが
はしゃぐ姿を目に出来る。

「私・・・この公園のベンチがお気に入りでして」
と言って腰掛ける男。

おじいちゃん・・・のよう・・・


俺も横に距離を置いて座る。

「さて・・・本題ですが・・・」

間を取って、じらすように空を見ている?


ん〜??

昼間なのにフードのせいでハッキリ分からなかったが、女の子?


でも声は低くて男性独特のモノ。

アゴなどを見る分には男だと思わない。
男でも美男子だろう


「人の死を宣告したり、ましてやそれを助けたりするのは禁じられています」


どういうことだ?


「あなたは私にとって特別でした。初恋の人でしたから」


!!?


気色悪い!・・・とは思わなかった。
男が好きなわけじゃない!そんな趣味もない。


なぜか


自然に受け入れている自分がいる。


待てよ!初恋の人?
ということは・・・
俺の知ってる人物か?


フードの中身が気になった。誰?

「ちょうど4時です。
今から
27時間27分27秒後に
あなたに死が訪れる

「だから、なんで、そんな事がわかるんだよ!?」

「落ち着いて聞いて下さい。何度も申し上げた通り、信じる信じないは自由です。
ですが・・・せめて苦しまずに・・・」


彼(彼女?)は持っていたトランクから
クロスの付いたネックレスを取り出した。

それを俺に見せると
「このネックレスには痛みを吸収する力があります。
あなたが信じずとも、付けることに支障はないはず。是非お勧めします」


そう言うとソレを俺に手渡した。

ウソでも本当でも付けて損は無いってことか。

・・・


「私は・・・あなたと出会った3日間の記憶を消そうと思います。
消さないと後々厄介ですから。もう会う事もないでしょう」


そのまま立ち上がって
歩き出そうとするのを見て


「あの、そのフード取って貰えない・・・ですか?」

俺の方へ振り向くと
下を見つめたまま・・・止まった。

「・・・」


「別にイヤなら無理に脱が・・・なくて・・・も・・・」


バサッ・・・


俺が言い終わる前にフードを脱ぐ



!?


知っている女の子だった。

「えっ?なんで・・・」

彼女は人差し指を鼻に当てると「それ以上は何も聞かないで下さい。
私はあなたの名前を覚えていませんので・・・」


「・・・」


「普通の人には見た目も声も男性だと思うでしょう
詳しくは言えませんが、私には曖昧な記憶しかありません。」

「記憶が・・・無い?」

・・・

「何も聞かないで下さい。私は、これで」


彼女が歩き出すのを・・・


止められなかった。


PM7:18

ベッドに横たわり天井を眺める。彼女を知っている。

どこに住んでいるかは知らないが小さい時に一緒に遊んでいた。

一つ下で今16歳のはず。
俺が中学に入ってからは全く見なくなったけど


確か・・・うちの妹と同じ年だったな!!

聞いてみるか?


しかし・・・何をどう話したら良い?

ん?


ポケットにあるネックレスを忘れていた。

取り出して見つめると、アルファベットで文字が刻んである。


「らふぁえる?」


カチカチ・・・

「ラァファエルっと・・・」


気になったので検索して見ることにした。フリーズすんなよ〜!

・・・


出た!

ラファエル・・・
三大天使の一人と記載してあったが、特に気になる点は無かった。

・・・


初恋の人に天使のネックレスか
・・・


悪い気はしないな

PM10:24

コン・・・コン・・・

「入るぞ〜」
ガチャ・・・


・・・


あれ?妹がいない
風呂か?


明日聞けば良いか・・・そう思って部屋に戻った。

AM7:12

朝の食卓に妹の姿がない
アイツ寝坊しやがったな!

妹を待ってると遅刻してしまう
聞きたかったけど、聞く内容がイマイチ決まらなかった。

・・・


結局、妹と顔を合わさずに家を出た。


あ!

ネックレス忘れた!


AM11:27

廊下で一人空を眺めて考え込む。

あと8時間で俺が死ぬ?まだ全然信じて無い。
第一に、なんで死ななきゃならない?


朝7時半だろ?
交通事故?通り魔か?地震?

それとも・・・

だ〜っ!!
考え出したらキリが無い!


どうしたら・・・良いんだよ!?

PM5:33

結局答えが見つからないまま家に帰った。

ガチャ・・・

ドアが、やけに重く感じる。「はぁ〜〜」


ため息ばかりの一日・・・

部屋のベッドで布団にくるまる。


「来るなら来い!」



・・・


バチッ・・・!バチッ・・・!

聞きなれない音で目が覚める。

「うぅ〜」

いつの間にか寝ていたみたいで・・・

ん?


クン・・・クン


ん!
何か焼ける匂いがする!!


目を開けると

!!


パソコンから煙と一緒に火が出ていた。今にも火が燃え移ろうとしている。

ボォォォォォーという音に跳ねあがり大急ぎで消化に当たる!


「クソ!!!」
頭などでは間に合わない!


ベッドから布団をもぎ取り、パソコンに覆いかぶせた


ブスッ・・・ブス・・・

白い煙と鼻を劈(つんざ)く匂いが室内に立ち込める。


カラカラ・・カラ・・・

窓を開け新鮮な空気と入れ替える。古いパソコンから出火する話は知ってたけど
まさか自分のパソコンからとは思わなかった。


未だにパソコンからは、ビビッとかバチッ!などの異臭がする

コンセント抜かなきゃ。


あっ!
今・・・何時だ!?

忘れていた自分の死。


室内の時計を見ると・・・

PM7:31   を過ぎていた。



助かった!

この火事に気付いて無かったら本当に死んでいたかも知れない。
怪我も無く命拾いしたが怒られる状況


仕方ないよな?


結局ネックレスは使わなかった。

家事で本当に死んでいたのだろうか?
予告された時間は過ぎていて消化も終わった。


助かったのは良いが彼女が気になる。

なぜ・・・あんな格好で
あんな死の予言を?

・・・

考えても意味が無いかもな。お腹が空いた


・・・


部屋を出て階段を降りる。


ん?


リビングに明かりがあるが静か過ぎる。

まだ誰も帰って無いのか?


ガチャ・・・


案の定、誰もいなかった。
四人分の食事の用意はされている。


テレビでも見ようと移動した時・・・


!?


突然・・・
腰の辺りに激しい痛みが走る!

何か鋭利なモノで刺されたようで


「うぅ・・・」

あまりの激痛に声が出ない!腰から腹部にまで突き刺さったのか何か。

身体が、そのまま浮き上がる。凄い力。


宙に浮いている上、腰の骨がイカれた!

「だ・・・だれ・・・だ!?」


振り返って相手を確認することが出来ない。


「ブフォウ・・・!」


大量の吐血に意識が遠のきそうになる。


強盗の仕業か?


!?

なっ!
なんで?


薄れる意識の中、気付いた


PM7:27

リビングにある時計が目に入る。
ま・・・間違って・・・いた・・・のか?


も・・・もうダメだ。

残された数秒に後悔する

せめてネックレスしてれば良かったな。


そして


絶命の瞬間に思った。


帰ってきちゃダメだ。


有美・・・


27:27:27終了


◇次回は青空〜前篇〜です◇お楽しみに
※より楽しんでいただくため、是非第1話(ゲーム)からお読み下さい。

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2012年05月09日

スポットライト(第17話)

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スポットライト(第17話)

「おはよう」
「おはようございます」


スタッ・・・スタッ・・・



「はい!おっけ〜」


「お疲れさまでした〜」


・・・


おはようございます

だれ?


「おい!どうなってんだ!あんな演技・・・俺じゃ無くても出来るだろ!!」


俺が詰め寄った相手は事務所の人間

「いや〜・・・あれは あれで良かったんだと思うよ!他に仕事無かったんだから
・・・良いんじゃない??」


・・・


クソ・・・誰だと思ってんだ!!


親の七光りと言うヤツがいる。
父親が俳優をしているから、そういう風になるかもしれない


だが違う!


子役デビューしてから30年にもなる。
自分なりに役者として頑張ってきた。


子供の頃は忙しかった。

最近、まともな仕事をもらってない。


チンピラB
会社員A



こんな役柄が増えた
名前すらもらえない

ふざけんな!
父親には、もう辞めて違う仕事に就けと言われている。

バカにしやがって!
今さら他の仕事なんか出来るか!?
俺の才能を分かっちゃいない

他の役者のブログを見てるとむしずが走る。



イライラ・・・イライラ・・・


新人が俺を踏み台にして掛け上がって行く表舞台
殺意さえ覚える。

・・・


怒り 憤り 怨念 憎悪 執念

・・・


本当に殺してやろうと思った。



黒魔術』っと・・・


直接殺して捕まったら意味がない。
呪い殺す。本当に死ぬとは思わないが、死んでくれたらラッキー!!
みたいな感じでサイトに検索した

・・・


膨大な量の黒魔術サイト

適当にアクセスしてみるか!!


どれも似たり寄ったりのサイトばっかりだ

「え〜っと・・・次は?」


カチカチ・・・



闇の販売所?これも あんまり期待出来ないな」

・・・


まぁ・・・覗くだけ・・・


「ん〜?」

・・・


「呪い殺す道具 道具 道具は・・・・・」



無かった。

こんなことは良くあることだと思って次に行こうとした時


ん?



「人気者になりたい人?」

その文字が やあけに気になった。


※人気者になりたい あなたへ
『陽と陰のCD』
商品説明:陽の曲を聴くと太陽のように誰からも注目されます。逆に
陰の曲を聴くと野道に咲く雑草のような存在になります。

・・・


俺の為に、ある商品だと思った。

騙されても良い。買ってみるか?


今の生活から抜け出せるなら!!

買う価値がある


「しかし変だな・・・」

おかしな点が いくつかあった。

通信販売やオークションの多くには写真添付がある。

・・・



通販における表示必要事項が無い。

例えば送料や返品などの詳しい説明がない


やはり悪徳業者かと思った

おまけに30万もする。


どうする?

魅力的な商品・・・


・・・



悩んだが買うことにした。これで有名になれば安いもんだ。
騙されたとしても諦めが付く。


・・・



翌々日・・・

今日も仕事らしい仕事が無く午前中に引き上げた

・・・



「クソがぁ!役名すら無いなら呼ぶな!」

ガン!
部屋のゴミ箱を蹴りあげた。


ピンポーン


ん?


「はい・・・」

受話器を取るとモニターに映し出されたのは見知らぬ人間。顔が良くわからない。


「こちらは闇の販売所ですが、商品をお届けに参りました。」

「あ〜・・・今でます」


注文していた事を忘れていた。カードで支払いイケんのかな?
家に俺だけで良かった。


そんなこと考えながら


ガチャ・・・
ドアを開けた。

「本日は、お買い上げ真にありがとうございます。さっそくですが、こちらがご注文
いただいた商品になります」

差し出されたのはCDだけでジャケットや帯などが無かった。


「えっ?ディスクだけですか?」

「何か不都合な事でも?」

「いや・・・別に」


絶対にあり得ない。
裸のまま受け取り

カードは無理だというので現金で支払った。


怪しい。

今なら、まだ断ることが出来る・・・

よし!
断わろう!


そう思った瞬間、男が口を開いた。


「いつも応援していますよ」


「えっ・・・あっ!どうも ありがとうございます」

・・・




無理だ!!!

あんなこと言われて・・・
断われるはず無かった

「では・・・私はこれにて失礼します」

「あ・・・はい。どうも」

・・・



・・・


数少ないファンは大切にしないとな!

さっそく聞いてみることにした


プレーヤーにセットして再生を押す。


ウィ〜ン・・・

という小さな音がして


ベッドに横たわった。



♯♪♪♭♯・・・

なんとも不思議なメロディーが部屋中に響き渡る。

ベートーベン月光という曲に似た音階

・・・



そのまま
眠ってしまった。


ん?

「う〜ん・・・」

どれくらい眠っていた?
携帯の時計を見ると
AM4:14



なっ!?


12時間以上も眠っていた事になる
日付が変わってる!!


うす暗い部屋でプレーヤーの電源だけが小さく光っていた。

まだ少し寝ぼけながらテレビのスイッチを入れる。
早朝だからニュースしかやってないが・・・

・・・



『続いてのニュースです。昨夜未明から深い眠りについていた佐藤浩介さん(33)の
部屋に明かりが付いた模様です。現場から中継が入っています。』

・・・


『はい!こちら佐藤さん宅に来ています。私のちょうど後ろに佐藤浩介さんの部屋が
確認出来ます。ご覧のように・・・』


・・・




なんだコレ?うちが映ってる


シャー・・・


カーテンを開くと



!!!!???

もの凄い数の報道陣がごった返していた。

テレビからは『あっ!ご覧下さい。佐藤さんがカーテンを開けた模様です・・・』


どう・・・なってんだ?

途端に携帯が鳴りだす。


状況が把握できないまま
携帯を拾った。

ん?

「もしもし・・・」

「あっ!佐藤くん?今から こっち来れる?」

「えっ?今からっすか?」

「もう会場用意してあるから、取りあえず事務所ね!」

「えっ?ちょ・・・いきなり」



プッ・・・ツー・・・ツー・・・

・・・


もしかして
これってCDのせいか?

玄関のドアを少し開け顔を出してみた。

!!


パシャ・・・パシャ・・・

な!?


凄い数のフラッシュに思わずドアを閉めた。


違う!
こんなんじゃない!

こんな風に訳も分からず目立ちたかったんじゃない。

・・・




人気者の意味が、全然違う!?

部屋に戻り再びテレビにくぎ付けになった

『先ほどの佐藤さんの画像をいち早く入手しました!こちらが・・・』

!!


クソ・・・これじゃあ まあるで犯罪者みたいじゃないか!

・・・


そういえば

陰の曲


陽が、こんなだから
陰なら、きっと元通りになるはず!


でも聞いて良いのか?

せっかくだから
もう少し


でもなぁ・・・

このまま有名になってもなぁ

・・・


かなり迷ったが聴くことにした。


依然として外は物々しい。


2曲目にスキップして曲が流れ始める。


♪♯〜〜〜〜・・・


ん?
なんだ?

立ったまま目まいがして
ふらつく

ドン!


足に力が入らずに倒れてしまう

「うぅ・・・」

12時間以上も眠っていたのに

また睡魔が・・・


「ねむっ・・・・て」


・・・


「うぅぅ・・・」

凄い頭痛がする。また眠ってしまった。


「イッツ〜・・・」

頭がガンガンする。

・・・


携帯の時計は
PM4:15


またか!
また12時間以上も眠っていたのか?

父親と歯はおyが留守で良かった。




報道陣は?

・・・


誰も いない。

平穏な街並みがあった。
いつもと変わらぬ夕方時。


テレビ番組をチェックしてみたが俺の事は話題になかった。



良かった。


全国ネットで放送されて
少しは名前が知れ渡ったかと思ったが甘かった。

目ざめてから ずっとテレビのチャンネルを操作したけど佐藤浩介の
名前は出てこなかった。

・・・



明日、朝一番から仕事が入ってたのを思い出した
仕方ない・・・諦めて

横になった。


眠れる訳がない!


結婚式場・・・

撮影現場に到着して台本の確認をする


《男性客Aが廊下から会場に入ってきてテーブルに座る》

・・・


・・・


クソ!!また こんな役!!頭に来るぜ!

廊下で待機しながら愚痴を言う。

「大体あんなにカメラが遠かったら俺があんまり映らないし、この役に意味あんのか?」


そんな愚痴とは対照的に撮影がスタートした。

・・・

「よし!」



スタ・・・スタスタ・・・

結婚会場に入った。



「んん?おっ!・・・わっとっと!!」



勢いよく出たせいか転んで


ガシッ!!

そのままテーブルクロスを引っ張ってしまい



ガっシャーン!!?


やってしまった!


ん?


「ぬおわ〜!!」

良く見るとロウソクの火がテーブルクロスに燃え移っていた


バサッ・・・バサッ・・・


急いで上着を脱いで火を消す!


「うぉ〜火事だ!!」


バサッ!バサッ・・・

・・・

・・・




やっと消えた。




けど


「はい・・・オッケー!」


えっ??


「かっ・・・監督!!今のオッケ〜なんですか?」

「・・・」


あれ?無視?


・・・


どういうことだ?
家事で良かったのか?


あれだけのことをやらかしたのに!

・・・


まさか!あのCDのせいか?

逆に存在感がなくなり過ぎている!


ヤバい・・・なんとかしないと!


自宅に急行した。


ん??


な・・・無い!

プレーヤーから取り出した記憶も無かったが


ヤバい!このまま一生、影の薄い生活だと役者なんか夢のまた夢だ!


椅子に座って闇の販売所を検索する

闇の販売所で検索してヒットした!

元通りになる商品を探す。


マウスを触る手に力が入る。人生を元に戻す道具・・・道具・・・


無い?!

商品自体、意味の分からないものだらけだ。


ん?


これは?


※霊能力
商品説明:希少価値の高い特別な能力



霊能力?

コレ・・・使えるんじゃないか?役者だけでは、どうしても限界がある。


けど、役者をしながら霊能力として活躍すれば違うジャンルでテレビに出れるんじゃ?

・・・!!



「4億?」


4億

オヤジなら出せそうな金額だが、なんせ高すぎる。


・・・

だが、これで仕事が入ってくればすぐに取り返せる!
両親も、きっと喜ぶ。
将来が見えて来る。



迷わず購入をクリックした

父親名義の小切手を勝手に用意して家で待った。


注文した日に来る訳が無い・・・のは分かっていた。
だけど存在の薄い俺には1秒でも早く欲しい


ん?


※こちらに記載して無い商品も多く取りそろえております。ご希望の商品が
無い場合は以下の電話番号まで24時間お気軽にお尋ね下さい。


電話か・・・



トルゥゥ・・・トルゥゥ・・・


「はい・・・こちら闇の販売所でございます」

「あっもしもし・・・先ほど、霊能力って言う商品を買わせてもらった
佐藤って言うんですけど」

「えぇ・・・ご注文承っておりますよ。どうかされましたか?キャンセルですか?」

「あの、すぐに欲しいんですけど取りに行っても大丈夫ですか?」


「なるほど、分かりました。いつでもお待ちしております。」


住所の確認をすると歩いて行ける距離だった。

近いな!歩いて行くか・・・


着替えを済ませると直ぐに家を出た。


少し早いペースで大股になる。


ドン!!
いきなり ぶつかって来た男が無視して歩いて行く。


な!

「おい!ぶつかっといて無視すんのか?」


・・・

お構いなしに歩いて行くので腹が立った!

更に・・・歩いて大通りに出ると


ドン!ドン!


何人もの人間が真正面からあたって来る。


おかしい!当たっても気付かずに素通りしていく。
見えていないのか?


昨日よりも存在が無くなっている?


これは非常にヤバい!
一刻の猶予(ゆうよ)も無い。


人ごみを走った。左右に素早く移動しながら障害なる人を避けた。


もうすぐだ!!

もうすぐだ!!


ん?

ブゥ〜ン・・・

!!?


ガッシャーン!!!
「ぐうひぇ・・・」

キィィィィイィ・・・




バタン!!バタン!!!

二人の男が降りてきて

「おい!今なんか跳ねなかったか?」

「誰か居たと思ったけど勘違い?」


!!


「でも見ろよ!バンパーへこんでるぜ!」

「おい!そんなことより渋滞してっから!早く行こうぜ!」

「うわ〜!最悪」

・・・

・・・

「だ・・・


誰か


救急車・・・」


男達が俺に気付かないまま・・・車に乗り込む。


そして


「た・・・助けて・・・く」


ブゥ〜〜〜〜ン・・・


ガン!!!
「ぶべぅえ・・・」

ドン
「・・・」



誰にも気づかれないまま
俺は・・・いつまでも・・・



そこにいる。



スポットライト終了

◇次回は27:27:27です◇お楽しみに
※より小説を楽しんでいただくため、第1話(ゲーム)からお読み下さい。

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posted by まさるっち at 19:55| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月06日

運命(第16話)

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運命(第16話)


「うぅ・・・」

眠っていたのか?

キョロ・・・キョロ・・・
辺りを見渡すと濃い霧に囲まれて数メートル先が分からない。


「何処だ・・・ここは?」

こんな濃霧は見たことが無い。

暗くは無いので昼間だと分かる

しかし方角が・・・

「どっちに行ったら良いんだ?」


ん?

すぐ近くで水の音がする


果てしなく広い川
対岸が見えない。霧のせいか?


三途の川を思わせる雰囲気・・・

そもそも・・・なんで、こんな場所に?

気を失う前の記憶は


確か・・・


会長の容態が悪化した知らせを受けて病院に向かっていた。

そこからの記憶がハッキリしない。

闇雲に動いてみるか?

川と反対を目指して歩き出した。


歩いた。


・・・


おかしい!
川には堤防があるはず・・・


でも


いくら歩いても霧で先が見えない

それでも歩いて
更に進んだ。


・・・


どうなってるんだ!
果てしなく続く霧

果てしなく続く川


立ち止まって360度・・・見渡す。


ん?
人影?


霧の中に人影・・・


やっと人に出会えた。
嬉しくなって


「すいませ〜ん!ちょっと道に迷っちゃって」


声を掛けながら人影に近づいて行った。


・・・

!!



「お前・・・」


「こんなとこで何やってるんだ!」

俺の知っている人物

「みんな必死に探してたんだぞ!お前の部屋から女の死体が見つかって
警察やマスコミに追われるし!分かってんのか!?」


「・・・」


「おい!なんとか言ったら・・・」

!?


俺のことなど眼中に無いように歩き出す。

まるで人形みたいだ

「おい・・・そっちは川だぞ!」

「彼に何を言っても無駄です」

!?

後ろで男の声がした。
振り返ってみると


ロングコートの男が立っていた・・・

「お待ちしておりました」


誰だ?


「話しかけても無駄って、どういうことだ?弟に何をした?」

男の細い肩を揺すり尋ねた。

「彼は喜怒哀楽の感情がありません。まぁ・・・
死んでしまった人間には必要ありませんがね」




死んでる?
何を言ってるんだ?


振り返ってみると

いない!!?

「ちょっと、待っててくれ!」

それだけ言うと追いかけた。

・・・


「一樹〜!どこだ〜〜?」

何処に行ったんだ?

さっきまで近くに居た弟が見当たらない。


「クソ!霧が邪魔で前が」

弟が歩いて行った方向へ走った。

何処だ?


・・・


「んっ!」


そういえば、さっきの男
どっかで見たことがあると思ったら・・・

会長が『旧い友人だ』確かに、そう言ってた。
顔を見たわけじゃないが、黒いロングコート。

今、思い出した。

詳しい事は後で聞けば良い。とにかく走った。

また人影?


一樹か?


なっ!?


ロングコートの男が川岸に立っていた。

「なんで、ここに・・・」


「・・・」


「ちょうど、会いたいと思ってたところだ。
さっき、待っておりました・・・とか」

男が川岸の方に振り向いて喋りだした。


「弟さん、この川を渡られましたよ」

!?

「なっ!」


パシャ・・・パシャ・・・


急いで川に入って後を追う。


「お待ち下さい。もう手遅れです」

「何が手遅れなんだ?やっと見つけたんだぞ!」

「ここは三途の川。それ以上進めば、帰ってこれませんよ」


三途の川


「何をバカな事を!
俺はちゃんと、こうして生きている」


・・・


「その川の水・・・
温かいですか?冷たいですか?」


!?


そういえば、感覚が・・・



無い



「俺たち・・・死んだのか?」

「あなたは、まだ死にきれていない。彷徨(さまよ)える存在です。」


「あんた、死神か?」


「死神?まぁ・・・似たようなことはしていますがね。
ですが・・・違います。」

「弟は死んだのか?」

・・・

「死んだのかって聞いてるんだ!!?」


自分でも驚くほどに叫んだ。普段なら絶対にやらないほどに・・・


「彼は渡ってしまいました。私はあなたに用があってここまで来たのです。」


弟は死んだから諦めろ

そんな風に聞こえた。


「ある女性を助ける代わりに・・・あなたには急きょ、死んで頂くことにしました」


な!


「なに・・・怖い事、まじめに言ってんだ!そんな見ず知らずの女のために殺されて
たまるか!大体、代わりとかおかしいだろ!?」


「・・・」


「なぁ?冗談だろ?」

「・・・」


「弟は・・・弟もそうなのか?」

「彼は、こうなる運命だったのです。しかし・・・
あなたは違う。あなたに非は無かった」


言ってることが良く分からなかった。弟は死ぬ運命で、俺は違った?


「じゃあ・・・なんで?俺は、ここに?」

・・・


「あなたは、ここに来るのが二度目ですよ。見覚えがありませんか?」


!?

「あなたは幼少の頃にn交通事故で意識不明になってませんか?」


な!?

「あなたは、ここで石を重ねて遊んだはずです」



驚いた。
子供の頃、事故った時に

ここと似た場所で石遊びをしている夢を見た事がある。


ずっと夢だと思ってた。


夢じゃ無かったのか?

「あなたの父親が、あなたを助けるために偽りの種という商品を買われました。
死なずに済む代わりに


・・・


いつ死ぬか分からない」


「いつ死ぬか分からない?
そんな・・・信じられるか!種で生き返るなんて聞いたことが無い!!!」


「前もって、お知らせする予定でしたが、急な出来事でしたので・・・三途の川まで
お詫びに参りました」


言ってることが信じられない。
仮にそうだとしたらコイツは何者だ?
生死を自由に操れる天使か?悪魔か?


「お詫びに、あなたに一つだけ!どんな願いも聞き入れることにしました」


「願い事?」


「はい・・・一つだけ・・・」



「本当に何でも良いのか?」

「えぇ・・・なんでも一つだけ。生き返らせてほしい・・・
それでも構いません」


・・・

・・・



俺の願い事は




「弟を生き返らせてくれ」


「自分のことよりも弟さんの方が大切ですか?」

「弟は俺よりも10歳も若い。まだやりたいことが沢山あるはずだ。
俺よりも弟を頼む」

「弟さん思いなんですね。誰かさんに聞かせてやりたい」





誰かさん??

男は川と真逆を振り返り

「よろしいでしょう。あちらの方角に真っ直ぐに進むと良い」



そう言った。

その方角には。やはり霧・・・


抵抗する意味も無かった俺は、すんなり受け入れた。


「あっちだな?行くけど・・・何があるんだ?」

男の口元が笑っているようだった。


「行けば分かります。」

・・・


「分かった」

男の横を通って歩き出した。


「お気を付けて」



少し歩いて振り返ると
男の姿は無かった。

霧に囲まれて見えないのか
それとも・・・
消えたのか


更に歩いて


ん?



あれは!!?


「会長!」

俺を可愛がってくれた人
尊敬する人だった


「倉橋君・・・」





会長に近づこうとするが見えない壁に当たって跳ね返される。


「ぐぅ・・・会長も」

「倉橋君、会社を頼んだよ」


それだけ言うと歩き出す会長。


「会長〜〜!待って下さい!!俺も死んだんです」


会長に追いつこうとするが、近づけない。

会長が振り返って


ニコっと笑ってから歩き出した。


「会長」


俺もう・・・
死んでるんです


・・・


川に向かう会長を見送ると逆を目指して歩き出した。

会長は亡くなられて川に向かった。


ん?


何で俺は川に行かないんだ?

その疑問を無視するかのように霧が歪み出した。

徐々に歪みが増して暗くなる。



俺・・・どうなるんだ?



闇から光へ


「うわっ!!?」


トンネルを抜けて目に直接太陽の光を受けたような眩しさ!

瞳孔が開ききっていたせいか慣れるまで時間が掛かる。


・・・


薄目を開けて少しずつ慣れて行く



ん?ここは・・・



自分の家?

キョロ・・・キョロ・・・


間違えなく我が家の玄関先。
なんで、こんなところに立ってるんだ?

俺は助かったのか?

状況が理解出来ない。
弟は無事なのか?


その時


頭上から声がして


「一樹」


一樹?
声がした方に顔を傾ける



!?


「き・・・きみ確か死んだはずじゃ・・・」


「はぁ?あんたこそ地面に吸い込まれたんじゃないの?」


地面?
なんの事だ?
この子は、うちの二階で確かに死んでいた。

警察も来て騒動になったから間違いない。


「君も助かったのか?」

「まさか一樹も?」


「さっきから一樹一樹って・・・俺は


・・・


一樹だ!」


玄関先にある全身鏡に一樹が立っていた。


「なんで一樹に?」

「なに言ってんの?それより、さっき出てったの・・・うちの妹?」

「妹?」

なんのことだかサッパリで・・・

「私、あなたの手紙見たの!さようなら!!」

「手紙?」
ただでさえ混乱する俺を無視して

彼女は「妹のヤツ靴も履かないで!この靴借りるか」と言い


バタン!


出て行ってしまった。

残された俺は鏡に写る自分を見ていた。


弟だった。


どういうことだ?
あの子が生きているのも不思議だったが


俺は
弟の無事を願ったはず・・・


確かに


弟は
無事だ。


時間と共に冷静になって行く。

日付は死体の見つかる当日だった


タイムスリップ?
弟として?


・・・




二日経過して分かったことがある。


倉橋家には男児は一人しかいなかった。

なぜか俺が存在しない。


そして


殺人事件も無かった。


二週間後・・・

「じゃあ明日から来てくれる?」

「分かりました」


・・・


今、俺は面接に来ている。



桜井建設株式会社。




倉橋一樹として

会長の『会社を頼んだよ』
という言葉を守るために・・・



運命終了

◇次回はスポットライトです◇お楽しみに
小説を楽しんでいただくために、是非第1話『ゲーム』からお読みください。

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2012年05月05日

坂本香織∻後篇〜(第15話)

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坂本香織〜後篇〜(第15話)


『会長どこ行っちゃったんだろう』

のんびり空中で寝転ぶと心地よい

夜行性とか関係無いみたいで昼間でも眠くない。



親には迷惑ばっかり・・・

会長うまく やっててくれると良いけど


戻れないのは 分かってたけど・・・

それでも昨日の彼の言葉はショックだった。


『ハァ〜〜』
ため息しか出ない


私、これからどうなるんだろ?

この身体  確かに便利だけど


楽しくない。



闇の販売所・・・


『ただいまぁ』

「・・・」

『なによ!シカト?』

「・・・」

『ねぇ・・・あなた何者?人間?それとも

悪魔?』


・・・


「ここは、あなたの家ではありませんよ。それに私は人間です」

いつも闇の販売所にいる彼。
家族や素顔、性格に至るまで全くの謎に包まれた人。

何か目的にしているのかさえ分からなかった。

人間に変身した、妖怪か悪魔だと思っていた。

でも、人間と主張したから・・・
意外に驚いた。


『なんで、いつもフード被ってるの?そんなに不細工なわけ?』

・・・


・・・


「みたい・・・



ですか?」

『見せてくれるの!?見たい!!見せて!!』

背が高い方ではなかった。
すっごい男前だったら
どうしよ!?

・・・

フードを ゆっくりと

じらすように脱いだ。


!?



ウソ? ウソ ウソ ・・・






女の子。



『どういう・・・こと?』

「詳しくは、お答えできません」

『声とか喋り方から男性だと思ってた』

・・・

「このコートが・・・そう させてます。」


私よりも年下で、茶髪の髪。どこにでもいう女の子。


頭が混乱して
言葉が出て来ない。


『なんで・・・こんなお店やってるの?あなたくらいの年齢の子なら、もっと
・・・やりたい事とかあるんじゃないの?』


静かにフードを被り直すと
彼女は

「私が選んだ道ですから」


それだけ言うと
奥の方へ消えてしまった。

聞きたいことは山ほど あったけど

奥の部屋へ行くことが出来ない

諦めて街に出かける


歩かないって楽よねぇ〜♪


・・・


ん?


えっ?

一瞬止まってしまった。

人と目が合った。久しぶり人と目が合って嬉しくなった



けど・・・


なんで逃げるの!?

そりゃ私は浮いてて霊体だけど
・・・


少しムッとした私は追いかけた。


「ヒィィ・・・」


ん!?


彼は私以外の霊も見えているらしく

それらの霊からも追われていた。

沢山の霊たち


『うっわ〜!ひっさ〜ん』

見てて可哀そうになる。

いくつもの霊が彼を捕まえようとしてる。
何の為に?


壁や地面から多くの霊が出て来る。

この身体になってから何体かの霊は見たけど
一度に こんなに沢山見たのは初めてだった。


バタン!!!

興味本意で、付いてきてしまった!

彼は自分のマンションに逃げるようにして入って行った。


そう言えば・・・


彼も どっかで見たことあるのよねぇ〜


どこだったかなぁ〜・・・?

彼の部屋には・・・
お札が貼ってあり、中へは入れない。

諦めて消えて行く霊たち・・・


『あり?』

『おっ!おっ?』


スー


入れちゃった!
なんで?

浴室から入った私は・・・


『コレ全部?』

あらゆる場所や物に貼られたお札を見て驚愕(きょうがく)する


・・・


別にシャンプーは
良いんじゃない?


そのまま洗面所に出た。

水を使う場所に、霊が集まりやすいって聞いた事がある。


でも・・・貼りすぎ!!

大体・・・浴室なんかに貼ったら、お風呂使え無いじゃん。
ちゃんと入ってるの?


細い廊下を進んでいくと彼の部屋に出た。


わぁ!わぁ!わぁ!

声に出さなかったけど
凄い。


私には、気付かずパソコンと会話する彼が居た。

「たっかいなぁ!除霊香水

ん〜〜?何見てんの?

彼の後ろから そっと覗きこむ。

※これで あなたに近寄る悪霊から身を守れます。
この香水を使った方々から嬉しいお返事が各地から〜〜〜〜※



ネット販売

普通こんなの買わないと思うけど・・・

人の悩みって
色々あるなぁ。

お金払ってまで、こんなの要らないけど
彼は必死だ!

「香水買っとくか!」


えっ?まじ?

カチカチ・・・カチカチ・・・


・・・


結局、3万円分の除霊グッズを買った彼・・・


絶対、騙されてるって!!


そう言いたかった。

「ん?」

『ん?』


・・・


彼と、また目が合った。


「うぉ〜〜!なんで、この部屋に悪魔が!!!?」


「あっ・・・悪魔?」


彼は叫びながら数珠を持って読経を始めた。

誰が悪魔よ!失礼なヤツ!


ブツブツ・・・ブツブツ・・・


一生懸命お経を読む彼。

・・・

苦しくも何とも無かった。
でも悪い気がして


隠れる事にした。


彼が読経を終えると
「可愛い悪魔だったなぁ」

・・・

・・・


複雑・・・・・


二日間・・・

彼をいじめた。別に好きになったとかじゃなくて

私を見れる人間。
暇だし・・・面白いから!

な〜んとなく。


夜寝ている彼を天井から見下ろす。


あのリアクション!!
さいっこ〜!!


「よ〜し・・・今日も除霊グッズ買うぞぉ〜」

え〜!また買うの?
買ったばかりなのに・・・

またまた そっと覗きこむ。(今回は少し離れて)


闇の販売所?」


!?

彼は
闇の販売所というサイトを開いていた。


あのお店通販も・・・やってるの?

やめた方が良いよ!お兄さん。

彼は携帯を拾うと電話をかけ始めた。
「除霊の道具とか無いですか?かなり特別な除霊道具」


やっぱり買うんだ。
どうなっても知らないよ〜!

・・・

そして彼は電話を切ると「面倒くせ〜」という


ん?どうした?


バタン!

私の疑問など、お構いなしに出ていっちゃった。

・・・


サイト開いて
電話して
外出した。


多分 闇の販売所に行ったんだと思う。
でも、なんで行く必要が?


先回りして、闇の販売所に行くことにした。


闇の販売所・・・


「どうされました?そんなに慌てて」

『まだ来てないようね!』

「・・・」


『電話があったと思うけど・・』

「ええ・・・ありましたよ。彼氏ですか?」


その質問には答えずに『彼を、ここへ呼んだの?』

「彼の霊能力に興味がありましてね」


また何か・・・隠してる。単なる勘だけど。

『私、隠れてる』

「その必要はありません。彼の力もこの中では無力です。」

・・・


そして


ガチャ・・・


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」

彼を座らせると話が始まった。

「さて・・・先ほど電話でお聞きしましたが」

・・・

なんとも楽しくない話
彼の霊能力を買い取る事で話は終わった。


「ありがとうございました。なんか・・・ウソみたいですけど」

「こちらこそ助かりました」

「じゃ、帰ります」

「お気を付けて」

ドアが閉まる。

・・・


・・・


「なぜ・・・彼に付きまとうんです?」

『私、彼のこと知ってるの』

『私、夜の仕事やってて、同じ時期に入店した男性スタッフなの』

「なるほど・・・」

『話したことは無いんだけど、田舎から出てきたばかりみたいで
いつも何かに怯えてて人見知り激しくって
なんか・・・可愛かったんだぁ』


「・・・」

『だから、ちょっと いじめちゃった』

ピー・・・ピー・・・


なに?何の音!?

机の上にあるノートパソコンからだった。

「おや?さっそく先ほどの霊能力が売れたようです。」

『ふぅ〜ん。私、なんか気分良いから散歩行って来る』

「お気を付けて」


街を優雅に歩く女の子に見とれる。

良いなぁ・・・
オシャレに憧れる。
メイクを意識し始めた小学生の気分。

いつまで こんな身体なんだろ。


あれ?ん?


身体が・・・なんか

薄くなってる!


闇の販売所・・・

「おや?早い御帰りですね」


・・・

『身体・・・薄くなってる』

「そう・・・ですね」


・・・


『私・・・どうなるの?』

「恐らく・・・
桜井さんの寿命が残り少し、ということでしょうね」

・・・

・・・

『会長、死んじゃうんだ』



あれ?


なんでだろ?




涙が自然に・・・

止まらない。


『私、このまま あの世へ行っちゃうんだよね』

ポロポロと頬を伝う温もり


『いつか・・・
こうなるんじゃないかって思ってた。』

「・・・」

『なんか・・・ごめんね』

『私、あなたに感謝してる。最初は勝手に魂交換されてムカついたけど・・・

短い間に色んな経験出来て良かった。


ありがとう


さっきよりも薄くなっていく身体を見て もうすぐだな・・・って分かってる。


「・・・」

『本当に・・・ありがとう
今までの人生で最高に楽しかった。あなたも女の子なんだから
もっと、オシャレしなきゃダメよ』


「・・・」

『じゃあ・・・逝って来ます。』

・・・

・・・


「お気を付けて」



『うん』


・・・



「・・・」


「あの・・・少しお話しませんか?」

涙ぐむ私の後ろで彼女が囁いた。


『はなし?』

「死神が来るまで、まだ時間があります」


今さら なんの話が?


「よろしければキャスリングされませんか?」






キャスリング?』

「はい、チェスにキャスリングというルールが御座います。」

『チェス?なんの話?』


「キングとルーク。その駒を場所移動出来るルール。
ゲーム中に一度だけ使用可能で、キングが危険な時、
早めに終わらせたい時などに使います。」


何を言いたいのか サッパリ分からなかった。


「キングが危険な今!あなたがルークと入れ替わるのです」

・・・

『う〜と?つまり
私、助かるの?』


「あなたに、その意思があれば・・・ですがね」


・・・


「私・・・助かりたい!」


彼女が「分かりました」
そういうと何かボソボソと喋りだした。

1秒・・・2秒・・・
また催眠術?


睡魔が襲ってきて、瞼(まぶた)が重くなる。


あれ?でも
ルークって・・・ことは

誰か代わりに死ぬ人がいるんじゃ?


考えた時には

深い眠りの中へ・・・


ドタドタ・・・

誰か足音がして目が覚めた。
「うぅん〜・・・」


見覚えのある部屋


「なんで、こんなとこに?」

ん?


「ヒッ・・!?」

一樹の部屋だった。

誰の血?

毛布に付着した血に悲鳴をあげた。

・・・

私の身体は、なんともない。
なんで一樹の部屋なんかに?


一回で女の子の声がした。


生きてる。

坂本香織として生きてる。


色んなことがあったけど
私に戻れた。


・・・


廊下に出て一階を見下ろすと玄関先から女の子が走って来るのが分かった。


あの経緯は色んな意味でも私を成長させてくれた。
これからは人生をもっと大切に生きて行こうと思う。

・・・

二度目の坂本香織。

・・・


この日以来

闇の販売所を見掛けたことはない。


「ありがとう」


坂本香織終了

◇次回は運命です◇お楽しみに
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2012年05月04日

坂本香織〜中編〜(第14話)

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坂本香織〜中編〜(第14話)

悩んで出した答え。

もう一度

あの場所に行くしかない・・・


一日中
朝から書類に目を通して(適当に桜井とサイン)
鳴りっぱなしの電話対応した(うん、はい、分かりました。の発言のみ)

会議にも出席(うなずいてただけ)



・・・


これから毎日、こんなことしてらんない!



疲れた〜・・・

 
夕暮れ時
車の中で外の風景を眺めていた。夜行性の私は太陽が沈むと元気になる。


でも会長さんの身体だと無理だ・・・。あちこち痛くて眠い。


ん?あっ!!



私が歩いてた。

車内の時計を見ると、もうすぐ出勤時間。

大股で歩く私を見て
悲しくなる。
せっかくの私が台無しじゃない!!

向こうには私に気付いてない。

私も大変だけど会長も・・・


て言うか!


「身体ぁぁ返せ〜〜!!」


「ちょっと!!運転手くん!車止めてちょーだい!」

「えっ・・・運転手君?」

「い〜から!早く!!」


大人しく会長になるつもりなんて無い


とっ捕まえて、あの男の居場所聞き出してやる!


車を降りた途端

「くっ・・・」

片膝を付いて倒れる私。


「かっ・・・会長!大丈夫ですか?」


「いっ・・・息が出来ない。苦し〜い・・・」

「かいちょうぉぉぉぉ〜!」


運転手君の声が遠くの方で聞こえた


私は そのまま意識を失った。



ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・



ん〜
よく寝た気がする。


キョロキョロ・・・
集中治療室?脈拍計の音だけが室内に響き渡る。


二人の看護婦さんが小声で喋ってて


「桜井さんの癌細胞が肺にまで転移して、呼吸不全で居週間も意識不明なんでしょ?」

「そうなの。身寄りも無いみたいで・・・」


そっか〜桜井さん。癌なんだぁ


今さら
『え〜〜〜〜!とか
『ウソ〜〜?』とか
『聞いて無い〜』とか


言わないけど・・・


もっとビックリしたのは






浮いてるんですけどぉ・・・




幽体離脱


すごい!
怖いとか思わなかった。
自由に飛べて壁も通り抜けた


遊んでる暇はない。
早く
あの男に会って身体を取り返さないと!


身体を残して病室を出た。

一樹の家周辺を飛び回った。
わぁ・・・凄い!
気持ち良い



あのお店の場所が思い出せないでいた。


何処だったかなぁ〜



あれっ?


お店の代わりに妹発見。
何やってんの?


多分・・・迷子。
極度の方向音痴で可哀そうになる


・・・


一樹と妹のことを思い出す。


でも

私の妹は、人を疑うことを知らない
そんな妹が好きだった。



多分・・・一樹の口車に乗せられたんだと思う。


『もう〜何やってんの?この道さっき通ったでしょ!』

聞こえるはずない・・・のは分かってる


でも・・・


・・・ん?


妹が建物に入っていく


闇の販売所


ゴン!!


???


『なんで痛いの!?』

この壁・・・通り抜け出来ない。


ガチャ・・・


妹が出てきて、大通りの方へと歩いて行く
妹には悪いけど無視して


ドアを叩いた。


『ちょっと!!入れなさいよ!!』


ガチャ・・・


ドアが偶然開いた?

「おやおや・・・うるさい小鳥がいると思ったら」

『誰が小鳥よ?』


私、何も考えずに来たけど・・・

『あなた・・・私が見えるの?』

「・・・」

「この建物は結界で張り巡らされております。全ての能力が無力化される・・・
私も例外ではありません」

『ちょっと!私の身体返しなさいよ!おじいちゃんなんて詐欺だわ』

「写真を見なかったのは、あなたですよ。それに代金を頂いておりません」

『は?代金?そっちが半ば強制的に交換したくせに!』

「変わった・・・お人だ」


『どっちが?』

「先ほどの、お嬢さんを追いかけてきたのでは?」

『あ!そうなの。私の妹なんだけど、方向音痴で心配だから付けてきたの』


この時点で私は自分の身体の事なんて頭から忘れてた。

「大丈夫です。多分そろそろ・・・」



!?


「あはは・・・また来ちゃいました。あはは」


まるで妹の行動が分かってたみたい。
霊体の私を見て、会話もする。
人の魂を交換したり・・・


まさか・・・悪魔?



私が悩むのを無視して二人会話が始まっていた。


私は

『ねぇ?妹を助けてあげて』


「相当お困りのご様子・・・どうです?よろしければ当店の商品を見て行かれますか?」


かたくなに拒否する妹。それを説得するように


黒ぶち眼鏡を取り出した。
「この眼鏡なら、あなたを家まで導いてくれるでしょう」


『この眼鏡使ったら、妹は帰れるの?』

またまた無視する男に

『私がお金払うから、妹に眼鏡を渡して!』


「では・・・これを」

「あの私お金持ってないんで、またの機会に」

「いえ・・・確かに代金受け取りました」


大通りに歩いて行く妹を見送った。


「妹さん・・・追わないんですか?」

『眼鏡があれば、大丈夫なんでしょ?』

「・・・」

『あと、こんな身体なんだけど、お金どうしたら良い?』

「お金は結構ですよ。霊体との契約はタブーですから」

『えっ?でも・・・眼鏡』

「・・・」


闇の販売所

初めて知った店の名前。

ドアからだと建物の中に入ることが出来た。


『私、本当の身体に戻りたい』

「残念ですが・・・先ほど説明した通り、霊体のあなたとは契約できません。」


『そんなぁ〜!!じゃあ私は会長のまま?』

「・・・」



そんなの、あんまりだよね



夕刻・・・

「いつまで。ここに居るつもりですか?」

『良いじゃない。私、行くとこ無いんだもん』


・・・


何人かが来店して
来店した人が皆、商品を購入していった。


怪しい名前の品々。

説明を聞いてると、まさしく悪魔が使う道具だと思った。


「さて、私行くところがありますので」

『私も行くぅ〜』


もはや身体よりも、興味があった


公園・・・


「・・・」


『誰かと待ち合わせ?』

「・・・」



放置ですか〜〜?




ん?
誰かが走って
来た。



なんで妹が?


「おや?これは昼間のお嬢さん」


・・・


「私・・・追われてて」

「トイレに隠れなさい」


妹が公衆トイレに駆け込む。

追って来た人間は・・・



一樹だった。

ロングコートの男と一樹が言い争いを始めた。


指輪がどうとか言ってる。


こんなに怒ってる一樹は初めて見た。


というより口の悪さに幻滅



なんで、こんな男を好きになったんだろ?


「そうですか。もう手遅れですね」

男が、その言葉を発した瞬間

黒く長い手が、無数に地中から生えてきた。


「うわっ・・・おっ・・・なんだコレ?」


一樹の身体中を掴むと無理矢理・・・


「たっ・・・助け・・・たのむ。イテ〜よ
!たじうぐぁぁぁぁ」



悲鳴と一緒に
地中の更に奥へ・・・


なんか・・・
良く分かんなかったけど


スッキリした。


妹がトイレから恐る恐る出てきた。

「あの・・・ありがとうございます。彼、どうなったんですか?」

「あちらの世界へ連れて行かれたのでしょう。それに私は、この
指輪を探してましたから」


「あの・・・この眼鏡お返しします。お金払ってないし、それに怖いから」

「代金はあなたのお姉さんから頂戴しましたよ」

「私のお姉ちゃん・・・から?いつですか?先月からずっと行方不明なんです。
どこに居るんですか?」


!?


『お願い!!私のことは言わないで!!』


男に叫ぶ。


「申し訳ありませんが、どこに居られるかまでは」

「・・・」

「きっと近くに・・・いてらっしゃる」



『ありがとう』


男が妹にバス停までの道を教えて

何度も・・・

何度も、振り返っては頭を下げては歩いて行った。



「これで良かったんですか?」

『うん!

もう・・・


坂本香織じゃないから』



翌日・・・


空を、まったり移動しながら思った。

あの男の人
本当に何者?


最初は勝手に魂交換されてムカついたけど


昨日は優しいと思った。

闇の販売所の店長。


それしか分からない。
悪魔のような商品を破格で売りつけたり



そうかと思えば、妹を助けてくれたり


何が目的なの?


家族に会いたいなぁ。

このまま飛んでイケる距離なんだけど・・・


お父さん

お母さん





ごめんなさい。

会うと泣いちゃう!

それに


もう・・・坂本香織には戻れないから
会えない。


そう言えば会長が・・・



ん!?


昨日の公園に、一人でベンチに座る店長発見。


あんな所で何してんだろ?

見つけたい時に見つからないくせに!


「本当に・・・人間は憐れ生き物ですね」



「私も、そろそろですかね」

『なにが、そろそろなの?』

「いらしてたんですか。盗み聞きとはタチが悪い」



・・・



『一つ聞いても良い?』

『昨日の妹のセリフ覚えてる?』

「・・・」


『私の妹・・・確かに、こう言ったよね!



お姉ちゃん行方不明なんです。って


彼、どこに行ったの?


あなた何か知ってたら教えて!!』


「知ってどうするんです?あなたは昨日・・・坂本香織じゃない。そう
おっしゃったばかりですよ。

今のあなたには・・・


いいえ


これからの あなたには


知る必要の無いことでは?」


何も言えなかった。


ただ泣くことしか出来なかった。


その後・・・闇の販売所

お店の場所が変わった。


『なんで引っ越したの?』


「・・・」


「・・・」

「ちょっと事件がありましてねぇ」


それ以上は
何も聞けなかった。


夜・・・


多くのサラリーマンが行きかう交差点。
信号待ちをしている何人かが街灯テレビを見つめてる。



『ただ今、入ったニュースです。東京都にある倉橋さん宅の二階の部屋から
女性の刺殺体が発見され死後一週間以上が経過しており、警察では身元の判明を
急ぐとともに交際相手の倉橋さんの二男が先週から行方不明に・・・』



誰もが足早に家路を目指す中


「世知辛い世の中になりましたねぇ」



誰かが そう・・・呟いた。



坂本香織〜中編〜終了


◇次回は坂本香織〜後篇〜です◇お楽しみに
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2012年05月02日

坂本香織〜前篇〜(第13話)

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坂本香織〜前篇〜(第13話)


ジリリリリリ・・・・・・・・

「ん?」ゴソゴソ


ポチッ


スー・・・スー・・・

ガチャ



「お姉ちゃん!今日から仕事じゃないの?」

「ん〜・・・あと5分」

「もう〜!知らないからね!!」

「ふぁ〜・・・。眠い」

私は家族で東京に越してきたばかり


やりたいことなんて無かった。

典型的な夜型人間。


それだけの理由で お水をすることにした。

今日が初仕事


初出勤。というか体験入店

2時間くらいで帰っても良い上に嫌なら一日で辞めても大丈夫。

私には、持ってこいの天職かも!


「おっ!待ってたよ〜〜
香織ちゃん源氏名なんにする?本名はマズイからね〜」


「ん〜と・・・色々悩んだけど〜クミにします」

さっき広告で見た名前だった。

な〜んにも考えずに、接客した。

「クミです。今日入店しましたぁ!お願いします」

オヤジ相手にダルッ!とか思ったけど案外楽しい。


「クミちゃん。可愛いね〜終わったら、どっか遊びに行こう?」

「え〜〜でも〜私、今日初めてだから〜」

適当にぶりっこしてたら受けた。


「クミちゃ〜ん。お疲れ様〜〜!明日も出勤出来そう?」


・・・


それから徐々に人気が出てきて、2週間ほど経過すると指名客で忙しかった。

そんな時・・・

20歳の浪人生が良く指名してくれるようになってた。


「クミ!今日は なんでも飲んで良いよ。結構お金あるし」

「え〜!本当にぃ〜?じゃ〜ねぇ〜ピンドン(ピンクドンペリ)!!」

「良いよ」


クミクミ!って馴れ馴れしい。
でも・・・まぁ〜

毎日、来てくれるから我慢我慢。

浪人生なのに、なんで?
こんなに・・・お金続くわけ?

その浪人生と時を同じくして来店した人がいて・・・


名前を一樹。

明るくて優しくてカッコ良かった。

落ち着いた雰囲気と声
まさに理想に近くって

いつの間にか・・・一樹という男性に惹かれて行った。


そして

付き合っちゃった

会いたい。毎日でも会いたい。

一樹が好き・・・


でも彼は、昼間の仕事で会えない

それに・・・電車で会いに行くにも時間が掛った。


車さえ、あればなぁ!


「車?」


「うん。免許取ったけど車無くって・・・欲しいな〜なんちゃって」

「・・・」

やっぱり無理よねぇ
いくらなんでも車だもんねぇ!

もっと貢いでくれるドル箱いないかなぁ?


彼と一緒にいれるなら仕事なんてどうでも良い



同棲したいな!



せめて・・・。

電話かメールで繋がっていたい。

夜1時


トルゥゥ トルゥゥ・・・

「もしもし」

「あっ・・・ゴメン。寝てたよね?声聞きたくって電話しちゃった」

「まだ、起きてたから大丈夫だよ。仕事終わったら、うち来る?」

嬉しかった。

明日も朝から仕事なのに 会ってくれる気持ちが嬉しい。


仕事なんか・・・

「店長・・・今日 帰っても良い?」

「クミちゃ〜ん!どうしたの?具合悪いの?」

「ちょっと熱があるかもぉ」



もちろんウソ。

早く会いたい!

すぐにタクシーを拾った

1分1秒でも長く一緒に居たい。
男に対して、こんなに好きになったのは初めて。

だから

「もっと飛ばしてよ!!」

なんて言っちゃった。


一樹の家・・・

はやり真っ暗


あれ?

一樹の部屋の明かりが無い。

寝ちゃった?


ガチャガチャ・・・

なんかドロボウに入っちゃった感じ

合鍵を使って、静かに一樹の部屋を目指した。


うわ〜・・・

こんなことしちゃって良いの?

でも来ても良いって・・・一樹が・・・


ギシィ ギシィ・・・

いつも気にしない階段の音が妙に大きく感じる。


部屋のドアを開けると

「グォ〜〜グォ〜〜」


やっぱり寝てた。

電気を付けたら起しちゃう!

けど、この部屋は明かりが無いと危険だった。


なんせ


私の部屋以上に足の踏み場が無い

「イツッ!」

とか

「キャッ!」

小声でベッドに近づく。
なんか色々踏んじゃった。

やっと到着。

「お待たせ!会いたかった」小声で呟く


・・・


どうしよう?


買えろっかなぁ!起しちゃ可哀そうだし・・・


ん?

何か持ったままで寝てる一樹。



手帳・・・かな?

手帳なんか付けてるんだぁ。部屋から想像出来ない



・・・

・・・


見ちゃ



ダメ?


いくらなんでも、そればっかりは



ダメ!!!!




パラ パラ パラ ・・・・・


え〜っと?
『4月3日クミって言うキャバ嬢と知り合う。メチャ可愛い、んでセクシー
4月6日クミとメールで仲良くなる。本名を教えてもらった
4月11日香織とデート、そして初キス』



「うは!」

思わず嬉しくて声が出る

私ばっかじゃん

その歓喜は一瞬だった。


『4月22日 香織の家に行く。妹を紹介してもらったけど
香織より可愛い。コッソリとアドレスを交換した』

・・・


そこで終わっていた


・・・


ウソ?

今日が26日・・・


気が狂いそうになった。
あんなに大好きで大好きな一樹が・・・

よりによって妹と・・・

自然と目が膨らみ次から次へと涙があふれてくる。

私が悪いの?

早く好きになる過ぎた?

なんで?



ねぇ?なんで?

涙が止まんない!
一樹の家を出ると 知らない街を一人で歩いていた。


「遊ばれちゃった」


歩いても 歩いても 涙・・・


適当に見つけたバーで一人で酔った。

閉店時間と聞かされ店を出ると

また知らない街をさまよった。


早朝5時過ぎ・・・

何もかも忘れたかった時に、見つけた。


闇の販売所・・・


なんの店?酔ってた私には関係なかった。



ただ


誰でも良いから話相手が欲しかった。


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」

「おはよ〜ございまぁ〜す!酔ってて悪い?」


「・・・」

「なによ?黙っちゃって」

「いえ・・・ただ驚いただけで、ございます。」


「ねぇ〜?私の愚痴聞いてくれる?」

「えぇ・・・構いませんよ」


彼は黙ったまま 静かに聞いていた


くだらない話だったけど
今の私には 嬉しかった。


「もう・・・生きて行くの辛いなぁ。誰かと人生交換したい」


何気なく言ったセリフ


「誰でも・・・
よろしいんですか?」


「この際誰でも良い!!」
酔った私に怖いモノは無い。

「そうですか・・・では、うちの商品を試されては、いかがです?」

「商品?」

「はい。当店の商品で人生を交換出来るモノがございます。無理にとは
言いませんが、誰でも構わないとおっしゃるなら是非」

「本当にぃ〜?そんな事出来るの?」

「はい。あなた次第ですがね」
またまた、いつもの癖で、な〜んにも考えずに・・・


「じゃ〜〜!交換しま〜す。やっちゃってくださ〜いい」

酔うとテンションが上がる悪い癖


「分かりました。では・・・今はお眠り下さい。時が来たら起しましょう!」


催眠術

そんな言葉が似合う。

すぐに眠気が来て 温かい眠りに落ちた。

・・・


「そろそろ 起きて下さい」

誰かに声を掛けられた。

「ん〜あと5分だけ」





妹の声じゃない!!

ガバッ!



起き上がって気づく

「どこ・・・ここ?」



ロングコートの男の人が一人


「お目覚めですか?昨日のこと・・・覚えておられますか?」

「え〜っと、交換が どうとか」

「交換相手が先ほど決まりました。今からお越しにjなります」


「は?何言ってんの、冗談よ・・・じょう〜だん」

「残念ですが・・・聖域に冗談は通用しません。既に契約済です。」


狭く 窓もない部屋。扉が一つあるだけ・・・
昼か夜か判別のつかない場所で男が言う。


「もぉ〜あんまり訳の分かんない事言ってると警察呼ぶわよ!!」


起き上がり 一つしか無い扉を開ける。


ギィィ

私は家に帰りたかっただけ
牢獄のような冷たい空間が、生理的に合わない。



でも


扉の向こうは


「ウソ?」



果てしない

闇・・・・・の世界


「そのまま出て行かれても、止めたり致しません

ですが・・・その闇に出口はありませんよ」


「私・・・ただ酔っ払ってたから意識とかハッキリ無かったし


だから・・・」


怖かった。来てはいけない場所に来てしまったと思う。


「酔って人を殺したから、許して下さい。それが許されますか?
たとえ陶酔(とうすい)していても契約は契約です。」


「さ・・・殺人とコレとは別の話じゃない!」

「確かに 私なりの例えが悪かったのかもしれません。しかし、
軽い気持ちの口約束でも守って頂く義務がある」


「イヤよ!絶対にイヤ!!!」

「あなたに残された選択肢は二つ


・・・


永遠の闇か



他人の人生です」


「私・・・どうしたら良いの?」

「桜井という人物と魂と交換して頂きます。ただ・・・それだけです」


・・・


「そう」


・・・




「分かったわ」

何を言っても逃げ切れない。酒癖させ無かったら・・・私

もっと違う人生だったかも知れない。
素直に受け入れても良いかな

「こちらが相手の写真です」


「いいの!私・・・見ないから。生まれ変わってからのお楽しみ」


せめて私より可愛い女の子ですよ〜に!

「では、また・・・お眠り下さい。あなたが目覚めた時・・・
あなたは桜井純一郎という男性です。」



はい!?



チリリリン チリリリン・・・


ん?

目覚まし?違う音・・・


遠くで電話の呼び出し音が聞こえる。
昔の黒電話の呼び出し音


ん!!?

ひどい頭痛がする。


「いった〜い」


昨日飲み過ぎたせい?
うちに黒電話なんか無い。


「夢じゃ・・・無かったんだ」
拾い部屋。

大きくシワだらけの ゴツゴツした手。


ていうか
なんで男なわけ?


「んもぉ〜信じらんない!普通 女の子と交換するでしょ?」

・・・

更に鏡台の前で絶叫した。

「なんでよぉぉぉぉ〜〜!!」

おじいちゃんだし!

手見て 大体分かってたけど、せめて男でも若いのが良かった。



ピンポ〜ン・・


ピンポ〜ン・・・


電話とか来客とか
ホント忙しい家ねぇ〜!


誰も出ないのかな?


ピンポ〜ン・・・


誰か応対しても良いのに!
にしても広い家・・・



玄関何処よ?


やっと見つけた玄関。

「はいはぁ〜いい。今出ますから」

ガラガラ・・・



「ウソ?」


正面門まで、かなり遠かった。
あんなとこまで行くの?
来客用の電話あるんだろうけど・・・


「おはようございます。お迎えに上がりました。」

「お迎え?」


私・・・桜井って人のこと、何にも知らない!!



・・・


この迎えに来た人、どっかで見た事あるような・・・

どこだったかなぁ〜?


「会長!今日も顔色が優れませんが・・・」




「かいちょ〜〜〜????」



ぶぃ〜〜〜ン

車内の後部座席で戸惑いが隠せない。
桜井さんて、凄く偉い人みたい。
私、やってく自信ない。

「昨日の株式総会の事後報告書です」

「えっ?あっ・・・はい」
資料を受け取り

目を通しても分かる訳



ないじゃない〜〜〜〜!!!

何処かの会社に到着して唖然とした。

「うわ〜おっきい会社。やるじゃん会長!」

「では失礼します」

「えっ?あっ・・・私。いや・・・僕?俺?わし?
どこに行ったら良いの?」


・・・


「昨日の女性雑誌に影響され過ぎじゃないですか」

女性雑誌?

なんの こっちゃ!?


会長室



ブン ブン ブン ・・・


何度もソファの上で跳ねてしまう私。

き・・・気持ち良い!てか

呑気に遊んでる場合じゃ無かった。私、これから一生おじいちゃんのまま?


絶対にイヤ〜!


どうしたら良いの?

私・・・

自分に戻りたい。


坂本香織〜前篇〜終了


◇次回は坂本香織〜中編です◇お楽しみに
※くれぐれも、最初(第1話ゲーム)からお読みください。

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2012年04月27日

ヒーロー(第12話)

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ヒーロー(第12話)


キーン コーン カーンコン・・・

「終わった終わった。帰ろうぜ」

「今から、どっか行く?」

「ヤダァ〜携帯落としちゃった」


・・・


二学期末テストが終わったばかり

俺は一人 教科書に目を通した。


「あっ!!」
誰かに教科書を取り上げられた。

「おい!イケメン!教科書なんか読んでんじゃねえよ」

「帰るから、鞄持てよ」
「あ!俺のも」
「俺のヤツも!!」


・・・


「うん」


「おい・・・イケメン!ジュース買ってこい。アクエリアスな」
「俺はコーラ」
「んじゃあ、俺もコーラ」
「俺はコーヒー、熱いやつ」


・・・


「うん」


俺はイケメンじゃない。

『えなりかずき』に似ているところから・・・
あだ名が『イケメンえなりかずき』に

そして『イケメン』に略された

クラスでは目立たない存在。このクラスに入って夏休みを過ぎた頃から

パシリにされるようになった。

元々・・・このクラスには僕より運動と勉強がダメなネットオタクがいた。

そいつのお陰で僕は、いじめの対象から外れていたのに。



それが・・・



七月初旬から不登校になり・・・


いつの間にか、僕の居場所が保険室に変わった。

人間は残酷な生き物だ。
歯に犬歯があるのは、その名の通りだと書いてあった。

狭い空間に押し込めるられると、自分の優越感を得るために虐待が始まる。
そんな習性が・・・人にはある。


クソ・・・


アイツさえいてくれれば
僕は普通に高校生活をエンジョイ出来たのに

僕は機械科
残りの三か月を乗り切っても

また・・・同じメンバー。
クラス替えが、あれば・・・


絶望的だ。もうイヤだ
毎日毎日・・・毎日毎日・・・


せめて


放課後、殴らないで、下さい


冬休みが終われば退学しよう。

両親には悪いけど・・・

死んでしまうより・・・マシだろ?

冬休み初日に、ある人が尋ねて来るまで、そう思ってた。


ピンポーン・・・

「母さ〜ん・・・誰か来たよ」


・・・


居ないのか?


ピンポーン

誰だよ?こんな朝早くに


「はい・・・どちら様?」

扉の前に立ってた人物

「よっ!」


・・・



「上がっても良い?」

「良いけど・・・」


なんでコイツが?


コイツは隣りの普通科で
確か・・・『戸田』って名前



入学してから一度も放したことが無い。
コイツは、そのクラスで・・・



いや
学年一番の『いじめられっこ』だった。


いじめられてた。過去形になる・・・



「お邪魔します」


・・・


戸田のクラスでは夏休み中に12人もの生徒と担任が集団で行方不明になっていた。

その事件直後に登校して来るようになった戸田。
まるで・・・他人


成績トップ 学級委員長 部活動 恋人・・・


なぜ?


「家・・・よく分かったね」

「まぁ・・・そんな事、どうでも良いじゃん」


・・・


「なんにも無い部屋だけど、ゆっくりして行ってよ」

戸田が部屋を見渡して
「君さぁ・・・学校で、いじめに合ってるよね?」

なんだ!!いきなり?

「今日は、いじめられない方法を教えに来たのさ」

「いじめられない方法?」

「そう!確実に変われる方法」


かなり説得力がある。
同じ屈辱を味わった人間にしか分からない。

「ど、どうするの?」


・・・


闇の販売所さ」



闇の販売所


「この店で、ドッペルゲンガーと言う商品を買えば間違い無く変われる」

「え〜・・・なんか怪しそうだから良いよ」

「買えよ!」

「良いってば〜」


「買え!!!」


「うぐっ」


もの凄い力で僕の首を掴み・・・持ち上げた。

「買え!」


「うぐっ・・・お前なんか!べっ・・・勉強じゃ負けないのに」



ドサっ!


急に戸田が力を緩めたので、軽く尻もちをついた。


「試してみるか?」

「さん」

さん・・・?


「いち よん いち ご きゅう に ろく ご さん ご はち きゅう・・・
・・・・・・・・はち さん」


なっ・・・何を言ってるんだ?




「円周率」


「えっ・・・円周率ぅ!!!?」


「ざっと・・・1千ケタ・・・他で勝負するか?」

か・・・勝てない

「何で勝負する?数学 文学 歴史 英語 化学 一般常識 どれが良い?」

「ま・・・参りました」


戸田は、そのまま「借りるぞ」と言いパソコンを触り始めた


カチカチカチ・・・・


「よし・・・取りあえず一体だな」



取りあえず?


戸田が・・・

「商品代だ!そう言うと封筒を置いて帰って行った」


ドッペルゲンガーって何だよ?



ピンポーン

!?


と・・・戸田か?


「はい・・・」

黒いロングコートを着た男が立っていた


「ご注文ありがとうございます。闇の販売所のものですが」



闇の販売所?早いな・・・



「あぁ・・・お金なら、ここに」


「お待ち下さい。ご注文頂いたドッペルゲンガーですが闇市場にて入手困難でして」


「闇市場?」

「大変・・・申し訳ありませんが、お時間を頂けませんか?」

「あの・・・ドッペルゲンガーって一体なんですか?」


「・・・」



部屋・・・



僕は、これまでの経緯(いきさつ)を全て話した。

「そうですか。無理矢理に買わされたのですね」

「どうしたら・・・良いですか?」


・・・


「ドッペルゲンガーは本人を介して人間に限りなく近づく没人形(マリオ)です」

「マリオ?」

「恐らく、戸田と言う少年はドッペルゲンガーでしょう。ドッペルゲンガーは下手をすれば
本人を乗っ取りますから」

「僕が会った戸田が人形?」

「はい・・・間違いありません。インフルエンザウィルスに似ています」


「感染するんですか?」

「いえ、人間が猿から現代人に進化するまで70万年掛りました。しかし、インフルエンザは
・・・その70万年を、わずか一時間で進化します」



な!


たった一時間?


「人間には足元にも及ばない知識が発達し、欲望も発達します。」

「・・・」

「恐らく、あなたを没人形にしようとしたのでしょう。世界征服でも思いついたのかも
しれませんね」



!?


世界・・・征服?


「それほどの知識が二つ・・・あれば可能でしょう」

「あの・・・戸田の家族とかは気づいて無いんですか?」


「彼の家族は、人形でしょうね」


「ど・・・ドッペルゲンガーなんですか?」


「いいえ・・・私の記憶では彼が注文したのは藁人形三体」


「違うんですか?」


「ドッペルゲンガーを作るには本人が押す必要があります。藁人形は人間を復元する
だけの操り人形
ドッペルゲンガーを注文しなかったことを考えると恐らく・・・家族は・・・もう」

「私は・・・世界が征服されても構いませんがね」

!!

「ぼ・・・僕は・・・・イヤだ」

「あなた!彼を止められますか?」


・・・


「あなたに勇気があるのなら、こちらを差し上げましょう」


男は、トランクからガラス製の小瓶を取り出した。

ガラス瓶の中には黒い粉

「人魚をご存じですね?人魚の肉を口にすれば不老不死になる」


・・・


「これが肉ですか?」

「いいえ・・・人魚の肉を焼いた物。人魚の灰です!」


人魚の・・・灰?


「人間以外の・・・あるゆる命を絶つ事が可能です。それが、たとえ悪魔でも」

「・・・」

「この灰を彼に振りかけるだけです。
ただ、気をつけて下さい。人間には劇薬です。」


げ・・・きやく?

「人間に振り掛った場合・・・」

・・・




「壊れます」

「では、失礼します。ご武運を」


バタン!

玄関先で見送りながら思ったこと・・・


あの男の人なんなんだ?
親切だけど世界征服されても良いとか・・・


この展開を楽しんでるみたいな・・・感じだった。

帰り際に男が言ったセリフが頭に残る。



〜「忠告しておきます。彼に・・・あなただとバレては、イケませんよ。
ドッペルゲンガーだと彼は思ってますから」〜



何度も、そのセリフが頭をよぎる

ドッペルゲンガーに成り済ます。
ドッペルゲンガーに成り済ます。


それって

賢いフリをしろって事?

自慢じゃないけど

僕は

バカだ。


いつも赤点ギリギリ。
休みの日も補習・・・補習・・・補習・・・



慣れたけどね。

どうする?

どうしたらよい?

バレない方法?冬休み中に頑張って勉強するか?


・・・


・・・


そんなんじゃ、絶対バレる。
無い頭をフル回転する。

戸田のヤツ・・・そう言えば円周率言ってたな。

俺も1千ケタくらい覚えたら良いんじゃない?


・・・


そんな訳ないか

取りあえず図書館でも行って、何か探そう

市民図書館・・・


・・・


・・・


来たのは良いが、どれにする?簡単なのはダメだ。

となると


≪六法全書≫ ≪医療大辞典≫ ≪理工力学≫ ≪精神心理学適応集≫・・・・・

東大行く人の本か?

この文字見ただけで頭痛が・・・


ちょ・・・ちょっとレベルが高すぎた。

もう少し落として


ん?


これだ!



≪雑学王への道≫


「え〜っと・・・なになに」


『問@次の星座のうち実際に無いものはどれか?
@かみのけ座
Aじょうしき座
Bまくら座
Cけんびきょう座』


・・・


『問A信号機の電気代を支払っているのは、次の機関のうちどれか?
@日本道路公団
A各市町村
B警察
C日本政府』


む・・・難しい。
全く・・・分からない。


※答えは一番最後に掲載します。


あまりにも短すぎる冬休みが明日で終わる。明日戸田に

バレずに近寄って
バレずに人魚の灰を


ん!

待てよ・・・


これ失敗したら、口封じに殺されたりするんじゃ



登校初日・・・


「・・・であるからにして、諸君らの未来に・・・」

なげ〜よ!校長の話。


1時間以上も立たされる身になってほしい




・・・



「・・・である。それから最後に、前途有望な諸君なら・・・」


体育館
寒い。


キ〜ン コ〜ン カ〜ンコン・・・


ポン ポン


肩を叩かれて振り返り、無言になる。

「イケメン!後で集合な」


・・・




戸田のことばかり気にして、すっかり忘れてたコイツらの事
忘れてた。


「ぐぅひぇ」

一発入った

「イケメ〜ン!寂しかったかぁ〜!ふひひゃ」


今日は3人か・・・


ポケットの小瓶を守るようにして倒れる。
割れないようにしないと

取り囲むようにして、蹴られる


「うぐっ・・・」「ぶひぅ・・・」


「何をしている?」




戸田だった。


なん・・・で・・・


ここに?

「戸田ちゃ〜ん!君も殴られに来たの?

・・・えっ?」


ブン!

という音と共に宙に舞う巨体。


「ヒィィ・・・」

残された二人が逃げて行く。


た・・・助かった。


「なぜ・・・反撃しない?」


・・・


そう言うと戸田は気絶している相手に馬乗りにした。

「えっ・・・ちょっ」

戸田は殴り始めた。

「や・・・やめ・・・」

みるみる相手の顔が腫れて行き、戸田の拳が血で染まる。


「ゃ・・・めろ!それ以上すると死・・・死んじゃう」


「別に構わない」


更に殴り続ける戸田。


こ・・・コイツ本気で殺す気だ。

「お・・・おい!やめろって」

ボン ガン ズガ・・・

鈍い音がした。



「やめろ〜ぉぉぉぉぉ〜〜!!!」


持っていた小瓶で戸田の後頭部を殴りつけた。


パリン!


止まった


「なぜ・・・止める?」


「ヒィィぃ・・・動いた!」

戸田が立ちあがって、こちらを見る。

「お前・・・人間だな?」


ば・・・バレた!


戸田が歩いて来る。


こ・・・殺される。逃げなきゃ!

戸田が・・・



止まった?
違う!


散らばった灰が動いて・・・


「ウ グ・・・ナ・・・・・ナニヲシタ?」

灰が戸田の身体にまとわりつくと苦しみだした。


「ク クルシイ・・・ウグ・・・」


ドサッ!!


倒れた戸田の身体が、またたく間に黒く変色して行く。


「ウヒャ・・・ヒヒヒヒ」

今度こそ助かった?


・・・


「ウヒャヒャ・・・うひ・・・エヘ・・・ヒ」


世界は救われた?



「ィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ぁヒャヒャヒャヒャ・・・・・・・」



世界を救ったヒーローは



いま・・・





精神障害病院にいる。



ヒーロー終了

◇次回は坂本香織〜前篇〜です◇お楽しみに
※必ず第1話からお読み下さい。

文中の答えは、どちらもBでした。

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posted by まさるっち at 22:19| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月25日

迷い人(第11話)

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迷い人(第11話)


おかしい・・・

不思議に思うのは俺だけか?


ここ数年、東京の、ある一定の地域で変死者や行方不明者が続出していた。

日本では毎年10万人以上の行方不明者がいる。


どこに行ったか気にならないのか?



ある高校の一つのクラス限定で集団行方不明

ある一家の行方不明


行方不明者に共通している点は無い。
あるとすれば・・・全員のパソコン履歴が削除されている事


数年前に大阪で起きた闇サイト連続殺人事件(実話)に似ている。

関連性は薄い。

俺は警察や探偵じゃない

ましてや新聞記者でも無い。普通のサラリーマン

別に気にしなくても良いのだが

気になることがあった。


黒いロングコートの男


俺が、その男を目撃すると必ず行方不明者が出る。

考えすぎか?


いや・・・

公園・・・

何かをするでも無く、ただ、ただ男が突っ立っていた。

様子を見たかったがバス停に急いでいた俺は無視した


・・・


「ヤバ!」

財布が無い!どこで落したんだろう?

来た道を探し戻るとバスに乗り遅れた。


最悪。


でも、


ラッキーだった。


『本日未明のバスが崖から転落。運転手 乗客合わせて23人の死亡が確認。
警察の調によると運転手の・・・』



当日、夜のニュースで知った事故

危なかった。



もし乗っていれば24人目の犠牲者になっていた。

あの男を目撃して
すぐの事故。


以前から何度も見掛けた後に、事件、事故。


個人的に・・・調べてみるか。

「おい・・・もう一軒飲みに行こうぜ〜」

「先輩飲み過ぎですよ。明日も早いから、止めた方が・・・」

「ビッグ・・・おう!先輩に意見すんのかぁ?」


この人、酒さえ飲まなかったら良い人なんだけどなぁ〜


「よ〜し!次行くぞ〜」

「あっ!!」


夜の繁華街で見つけた。

「先輩、俺ちょっと急用思い出したんで失礼します」

「えっ?おい!お〜い。寂しいよ〜」

先輩には悪いが

やっと見つけた。もしかしたら勘違いかもしれない。
誤解かもしれない


尾行するだけだ。

ただ怪しいと思うだけだ。

単なる興味

ダメなら帰れば良い。


どこまで行く気だ?

徐々に人気の無い・・・オフィス街に近づく。

そして角を曲がった


急いで俺も角を曲がる。



!?


いない・・・


どこへ・・・行った?


人通りの無い場所だった。


ん?


近くで何人かの騒ぎ声がする。

廃墟・・・の中から?

潰れたであろう店の中から聞こえた、


なんだ?


興味本意で、店内を覗く

!!


数人が男女が交互に、一人の男に尾行していた。


「ど・・・どど・・・しよう」


しかも
尾行を受けている男は椅子に座らされ、脚にはセメントが固まって見えた。



「けけ・・・けっ警察に・・・」


「やめておきなさい」


!!
振り返って見ると

ロングコートの男

なんで・・・ここに?


「でも、彼・・・このままだと殺されて・・・しまう」

「そうでしょうね」


軽く・・・そうでしょうね?


「あんた!人の命なんだと思ってるんだ?」

「時に正義は死を招く。彼を助けると、あなたに標的が変わりますよ」

「うぅっ・・・」


それは・・・


「彼は、こうなる運命だったのです。見つかる前に逃げたほうが懸命ですよ」

「・・・」

そして、見捨てて・・・しまった。


「困りましたねぇ。もう・・・あそこで仕事が出来ません」


仕事?

「あんな廃墟で、なんの仕事が?」

「あなたには廃墟に見えましたか?」

「誰だって廃墟に見える」


・・・



「そうでしょうねぇ。あのお店は人によって見え方が違う」


だから廃墟だって!!

「彼は二度目の来店が、死に場所だっただけです。まぁ・・・死ねませんけどね」


二度目?


「じゃあ、暴行受けてたやつ知ってたのか?」

「えぇ・・・まぁ」

人が殺されそうな時に平然と歩いてる。

何者だ?

「いつまで、ついて来るつもりですか?」


ん!
そう言えば・・・ここ何処?


「ここから先は・・・ついてこない方が良い」

「は?別に、ついて来た訳じゃない。あんたに指図される筋合いはない!」

「ここから先はサンクチュアリです」


「サンクチュ有り?」


サンクチュアリ。つまり・・・聖域です。止めたりしませんがね」

「だから!指図しないでくれ」


そのまま・・・男を無視して進んでしまった。

なんなんだ。この男は!
ただのお節介野郎だ!


あれ?


振り返ると、また・・・いない


まぁ・・・いい。


時計は23時。リンチされた男・・・どうなったかな?


もう手遅れかも。

帰って寝て、忘れるに限る
「タクシー」


お!
まだ・・・誰か起きてるな。

「ただいま」


・・・


やけに静かだな。浴室から姉きの鼻歌が聞こえる


ガチャ・・・

「おぅ!ただいま」

「・・・」


「キャァァァァァァァァ・・・・・〜〜〜〜〜」

!?


「ちょ・・・ちょっと、そんな大声で叫ぶとオヤジたち起きちまうだろ!」

「だれかぁぁぁぁぁぁぁぁドロボウ〜〜〜〜〜〜」


はぁ〜?


ドタドタ ドタドタ・・・


二階からオヤジたちがゴルフアイアン片手に降りてきた。

「あ〜あ・・・オヤジ起しちゃった。だから言ったのに」

「何がオヤジだ!うちには息子は・・・おらん!早く出て行かないと警察呼ぶぞ!!」


な!?


「ちょ・・・ちょ・・・悪い冗談やめてくれ」

オヤジが姉きを守りながら・・・「おい!警察に連絡しろ!」

「うん!」

少しずつ、後退する。


本気・・・っぽい


「あ!もしもし・・・今うちに変な男が・・・はい」

クソ・・・まじかよ!



ドアを開け逃げだした。


オヤジたち、本当に俺のこと知らない顔だった。

どうなってんだよ!

「なんのドッキリだ?」

満天の夜空に問いかける。



キィ キィ キィ ・・・



公園のブランコに揺られて久しぶりに空を見た気がする。

公園で野宿なんか高校の時に、家出して以来だ。


チュンチュ・・・チュ・・・


小鳥の鳴き声で目が覚めた。

「ん?朝か・・・ふぁ〜」
寒い・・・


クソ!!
目が覚めたら、布団の中に居て欲しかった。

ゴソゴソと会社に行くために駅へ向かう。

駅に着いて缶コーヒーを買う。いつもの日課になってた。


あ!先輩だ

昨日のこと・・・怒ってないよな?


「先輩おはようございます」

「・・・」

シカト?


「あれ・・・?先輩・・・?ちょっと・・・?怒ってんですか・・・?」

先輩の肩を掴む。


バシッ!!

「痛ッ!」


手を叩かれて


「君、誰だ?朝から止めてくれないか?」


えっ?
身体が硬直した。先輩まで、そんなこと言うのか!?

何か・・・変だ。
まるで俺が、この世に存在して無いように皆避ける。


あっ!

そういえば、昨日
男が言っていたな。


聖域とかなんとか


次の駅で下車した。


どうしても確かめたかった


区役所・・・


「そんな!!何かの間違いじゃ無いんですか?」

「申し訳ありませんが・・・その名前で二度検索しましたが、
そのような方は・・・」



そんな


やっぱり存在して
ない


一体どうなってるんだ!?

公園・・・

帰るとこも、行くとこも、無い。
どうしたら良い?


ん!!


本当に俺。ツイてる。


ロングコートの男・・・が

歩いて来る。


「どうです?こちらの世界は?」

「どうです?じゃねぇ!どうなってんだ!」


男を怒鳴る声に力が入る。

パラレルワールド。あなたの世界と並行して存在する・・・もう一つの世界」

パラレルワールド?」

「はい。しかし、あなたは存在してませんねぇ」

「なんで、この世界に俺は存在して無いんだ?」

「・・・」

「どうなんだよぉ!!!」

男が少し笑ったような


「警告したはずです。これ以上進むなと」

「そりゃ、俺が悪かったよ。じゃあ俺は、これから・・・どうなるんだよ?」

「助けて差し上げても構いませんが」

「本当か?帰れるのか?」


男が公園の先を指して・・・


「あそこを真っ直ぐに進めば帰れるでしょう」





俺が走りだそうとした瞬間・・・


「お待ち下さい!!タダで行って良いとは言っておりません」

「なんだ?金とんのか?俺は、こっちで存在して無いんだぞ。通帳や印鑑なんて無いぞ!」

「あるじゃないですか!」





「あなたの・・・若さ・・・霊感・・・記憶・・・心・・・家族・・・」

「何言ってんだ?」

「どれをもらい受けましょうか」



ゾク!!


なんか・・・怖いこと言いだし始めた。


「けっ!そんなもん・・・やれるか!!」


口走りながら一目散に走りだした。
逃げたもん勝ち


お!なんだ?
空間が、歪んでる。

「まだ・・・イケません」
後ろで男の声がした。
構うもんか!


その空間目掛けて一気に飛び込んだ。


・・・



・・・


「本当に・・・人間は哀れな生き物ですねぇ」

「私も・・・そろそろですがね」


「イテテテ・・・テ」

勢いよく飛び込み過ぎた。

「ふぅ〜」


キョロキョロ・・・

「どこだ・・・ここ」


ん〜?


ここ、日本じゃ無いな!

瓦礫(がれき)の山

崩壊した建物・・・横転した車

・・・


マズイ場所に来たかな?


多分・・・異常な暑さから考えて赤道付近の戦場


クソ!なんでこうなる。


日本語しか話せねえぞ

「と・・・取りあえず人を探して日本大使館に行くか」


・・・


暑い・・・異常に暑い
覗が乾いた。


・・・

ひ・・・人がいない。

どっちに行ったら良いか、全く分からない。

戦場だと、間違って撃たれるかもしれない



早く!こんなとこ オサラバして日本に・・・



ん!


「お待ちしておりました」

な!

「なんで・・・ここに居るんだ?連れ戻しに来たのか?」

「そんなつもりは、ございません」

「俺は、帰りたいだけだ。邪魔しないでくれ」

「暑そう・・・ですねぇ」

「あぁ・・・一体どこの戦場なんだ?暑いし、人も見当たらない」


ん?


男が、指を上に指して

「上をご覧なさい」

「うえ?」


なっ!

なんだ・・・


あの異常な大きさの



太陽は!?


「年々・・・太陽が巨大化していることはご存じですか?その内、太陽系をも飲み込む
大きさになります」



「にっ・・・日本は?世界はどうなるんだ?」

「ここは日本ですよ」


!?


日本?ここが?

「そんなデタラメだ!」

「ウソでは・・・ありません。ここは1500年後の日本」






「違う!未来の日本は、もっと近代的なはずだ。うそっぱちだ」

「20世紀末の予測には・・・
少子化が進めば1500年後の日本の人口は、わずか一人という結果が出ていました」


たった・・・一人?

「おい!頼む・・・もう一度、俺が居た場所に返してくれ」


・・・


「彼は公園で≪まだイケません≫と警告したはずです」


彼?

この男自身じゃないか?・・・


「長く待たされました。彼は私であって私ではない」


???


「私は、この国に残った最後の日本人」


「言ってる事が、全然分からない。なんで最後の日本人なんだ?」



「そのうち・・・分かります」

「人が減り・・・都市が滅び・・・温暖化した地球」

「・・・」



「今から、約億年後には地球はあ崩壊します。あなたには・・・それを
見届けてもらいます」


「は?俺そんなに長生き出来ねえし」

「大丈夫、あなたには、その力がある。今は分からなくても」


少しずつ近寄って・・・来る・・・


「イヤだ!!死にゆく世界で一人なんて!2億年も、出来るか!!」


イヤだ・・・来ないでくれ!?イヤだ!イヤだ・・・イヤだ!来るなぁぁぁぁ!!


「さぁ・・・どこへ逃げても同じです。運命を受け入れなさい」



闇・・・


真っ暗だ


どうなった?俺が支配する世界。俺は・・・ただ・・・



尾行しただけだ


迷い人終了


◇次回はヒーローです◇お楽しみに
※ぜひ第1話からお読み下さい。

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2012年04月22日

カルネアデスの坂 後篇(第10話)

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カルネアデスの坂 後篇(第10話)


これから・・・50歳以上も離れた娘として生きて行かなければ
ならない。

今、出来ることは なんだ?


「倉橋君!」

「はい」


・・・


「近くの書店で10代20代女性人気の雑誌を買ってきてくれ」


・・・

けしからん。なんだ、この露出の多い服装は!?


パラパラ・・・



ん?

携帯が振動する

『通知不可能』


・・・


「もしもし・・・桜井だが」

「こちら闇の販売所です。準備が整いましたので、お時間大丈夫ですか?」

「早いな・・・二時間も経ってないぞ!」



闇の販売所・・・


まだ心の準備も出来て無いのに・・・


あの時、決心したはずだ。自分に言い聞かせて深呼吸をひとつ


「よし!行くか」


・・・・


「いらっしゃいませ・・・お待ちしておりました。」


店内には男と鉄パイプ製のベッドが二つ


・・・


ベッドには女性が横たわっていた。

「彼女は・・・既に深い眠りに入っておられます。さぁ・・・こちらへ」


・・・


無言のまま横たわる。

「お目ざめになったとき、あなたは坂本香織という女性です」

「分かった。成功を祈る」


「もちろんですとも」
男が笑ったように見えた。


そして


深い・・・眠りの中へ・・・



ジリリリリリリ・・・



ん?


目ざましを止めて眠りについた



ん!ん!?


目覚まし時計?


・・・


頭が割れそうだ。

「どこだ?」


入れ替わったのか?
闇の販売所。じゃない場所


・・・


散らかり放題の女性服と雑誌

多分、あの娘の部屋か・・・


それにしても



汚いな!


ガチャ・・・

ドアが開いて

「お姉ちゃん目覚まし鳴ったでしょ?もうすぐ仕事じゃないの〜?」


お姉ちゃん?


もうすぐ仕事?


ん!?

そういえば
この娘の名前しか分からない。

展開が急すぎて肝心なことを忘れていた。


「きみ!!」

「はぁ?」


「私の妹よ。名前は、なんだったかな?」

「そんな冗談より、お姉ちゃんなんて格好で寝てるの?」


かっこう?

「なんと!」


この娘・・・
パンツ一枚じゃないか!!


今どきの娘は 皆こうなのか?


いま・・・何時だ?

18時を少し過ぎた辺り
今から仕事?

「妹よ。私はなんの仕事をしていたかな?」


「はぁぁぁ?キャバ嬢でしょ」

きゃば・・・じょう?



冗談だろ?

見た目は若い女性でも中身は76歳のじいさんだ。

バカらしい!
そんなものにつきあってられるか!


「お姉ちゃん・・・どうでも良いけど遅刻しちゃうよ。
今月ピンチなんじゃ無いの?」


クソ・・・


この娘として生きて行くには、荷が重すぎる。


しかし・・・
俺は・・・もう女だ。
この娘として生きて行くと決心したばかりじゃないか!



既に入りては郷に従え


行ってやる!!


「妹よ。服の用意と化粧をしてくれ」

「はぁぁぁ?なんで私が?それと『妹よ』っての止めてくれない?
まじキモいんだけど」


目上に対する言葉がなっとらん。


クソ・・・


「そうか・・・悪かった。おこづかいを渡すからお願いします」


俺は情けない。


会長という肩書が懐かしい。

人にチヤホヤされた期間が長い
今から・・・俺が接客するのか?
この破廉恥(ハレンチ)極まりない姿
背中がスースーする。



「クミちゃ〜ん。遅いよぅ〜・・・クミちゃん指名のお客さん。もう咳についちゃってるよ
今日も頑張ってね」


は?


「俺は・・・香織じゃないのか?」

「今日も面白いね〜クミちゃん。さぁ!早く行ってあげて」


俺は・・・クミか・・・


「クミだ!よろしく!座るぞ!」

・・・

「くっ・・・クミちゃん今日は、いつもと雰囲気が違うね」

「そうなのか?」


・・・

「えっと〜クミちゃん 何か飲む?」


「いや・・・酒は好かん!」


・・・

「いつもはボトル下ろしてぇ〜って、ねだるのに珍しいね?」

「そうなのか?では

・・・おろしたまえ」


「クミちゃ〜ん。お客さん怒って帰っちゃったよ〜どうしたの?」

「そうか・・・では俺も失礼する。実に不愉快だ」

「えっ!?クミちゃん・・・ちょっと」



バタン!!!


俺には向いてなさすぎる。確かわが社の人事部空きがあったな!
「はぁ〜〜」


自分で育てた会社に面接に行くとはな


・・・



家は・・・どこだ?

トルゥゥ トルゥゥ・・・


「はい・・・もしもし」


寝ぼけ声が受話器から聞こえる。

「もしもし。申し訳ないが迎えに来てくれないか?」

「はぁぁぁぁぁ?今何時だと思ってんの?」


この娘は苦手だ。
すぐに怒る。口と態度が悪い。


プッ ツー ツー・・・

切れた


最近の若いもんは年上に対する態度がなっとらん。


ポン。ポン。


ん?
肩を叩かれて振り返る


「ねぇ?な〜にしてんの?俺らと遊ばない?」

「悪いが・・・先を急いでいるので失礼する」


・・・


熱が出そうだ。やはり無理がある。素直に死を受け入るべきだった。

タクシーを拾い
カプセルホテルへ行く


明日



やはり闇の販売所へ




♪♪♭♪♯♭〜〜〜〜


!!!!・・・!!!


何事だ?
けたたましい爆音量で目が覚める。


ん?


携帯?迷惑な!!!

『メール受信中・・・』


・・・


『この前はあ・・・ゴメン。今日会える?一樹』



一樹_


内容からして彼氏か


・・・


俺が会うのか!?



ポチ ポチポチポチ・・・


『あ たるぇ!ァ・・・ぇだぜぉ』

『よし!こんなもんだろう』

メールなど初めてだ。簡単携帯しか持ったことが無い・・・が
多分・・・大丈夫だ!



『メール送信中』


再び爆音が鳴る。

クソ!!


『メール受信中・・・』


『あたるって誰だよ?まだ怒ってんの?今から渋谷駅の前で待ってます』



・・・


「よし・・・我ながらうまく行ったようだな!」


渋谷駅前・・・


この辺りは、じいちゃんと良く来た。すっかり景色が変わったな。


「香織!」


ん?

「あれ〜?なんで今日に限ってスッピンな訳?」


コイツが一樹?


「まぁ・・・色々あるんだ。それで何か用か?」

「つめてぇ〜。どっか遊びに行く?」


最近の若者の遊びなんぞ知る訳が無い

「将棋なら得意だぞ!」


・・・


「へぇ〜意外。今から うち来る?」


ブゥゥ〜〜〜ン


車で移動してもらって助かった。
なんだ・・・この靴は?
二日歩いただけで、痛くてかなわん。


女という生き物は本当に苦労する。


・・・


「この前は本当にゴメンな」


・・・


何の事かさっぱり分からん。




一樹の家・・・

ほぉ〜。中々立派な木造家屋だ。

ん?


『倉橋家?』

倉橋?


まさかな・・・


「飲み物取って来るから、先に俺の部屋行ってて」

「部屋?」



「二階の突き当たり」

彼は確かに・・・『香織』

そう呼んだ。





そうか!そうか分かったぞ!
人によって使い分けているに違いない。

では・・・やはり香織か?でもなんのために?



ガチャ・・・



全く・・・


足の踏み場も無いとは、このことだ。


ガチャ・・・
「香織・・・炭酸飲めたっけ?って、なんでテーブルの上で正座してんの?」


「空いてる場所は、ここしか無かったからだ」



類は友を呼ぶとは良くいったものだ


「ふぅ〜ん!香織、目・・・瞑(つむ)って」

「なっ・・・」


まさか!?この男、接吻する気じゃあるまいな?


「いいから瞑って」


・・・


本当にするのか?
男だぞ!クソ!?


やってやろうじゃないか


「・・・」


「うっ・・・」


「うぐぅ・・・」

「・・・」

「な・・・なぜだ?」

「・・・」


「どういうことだ?」

「・・・」



「なぜ・・・



・・・



この娘を刺す?



激しい痛みが、お腹に押しかかる。
よろめきながら・・・
一樹にしがみついた。


「ゴメン。邪魔なんだ」


じゃま?

「お前・・・俺の手帳見ただろう?」

「て・・・手帳?」

「とぼけんな!」

「ぐぅぁ・・・」



胸に痛みが来て、温かい血が身体を伝うのが分かる。


「俺、お前の妹と付き合ってたんだよ!別れてくれない・・・
お前が邪魔なんだよ」



なっ!
「そんな・・・理由で!」


「お前さえいなくなれば幸せになれる」

・・・


「ふっ・・・ふざけるな!殺しが正当化されて、たまるか!」


ゴトン・・・


そのまま床に倒れ落ちた

「ふっ・・・ふふふ・・・」
笑ってしまう



「気味悪り〜女!刺されて笑いやがった」


これが笑わずにいられるか!!
騙された

この娘・・・最初から・・・こうなることが分かってて交換したな


虫が良すぎると思った


「ふふふ・・・」

「・・・」


どちらの人生を歩んでいても死ぬ運命だったか・・・


どうせ



どうせ・・・死ぬなら




男のまま死にたかった



一樹が、まだ意識の残っている俺を毛布で包みだした


カルネアデスの坂終了



◇次は迷い人です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 01:04| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月17日

カルネアデスの坂〜前篇〜(第9話)

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カルネアデスの坂〜前篇〜


白い壁 白い廊下 微かな薬品の匂い。

病院の待合室は、どこか重苦しい雰囲気


いつ来ても緊張する
会社の健康診断で


『要・再検査』


個人的に来るハメになった。

生涯現役

20代で株式会社設立
以来50年以上身を粉にして働いてきた。

数年前に代表取締役(社長)を退任して会長になる。


仕事一筋に生きてきたせいか結婚もせずに・・・ここまで来た
まだまだイケる。これからは更に会社を大きくしなければ・・・

「直腸癌です。既に多機能に移転していて、投薬療法しかありませんが、それでも
三か月ないし二カ月でしょう」


たった、・・・三か月?


膨大な遺産や名声を得ていても・・・どうすることも出来ない


・・・


老後の楽しみも無かったが

受け入れたく無かった。

「すぐにでも当院での入院をお勧めしますが」

「いや・・・どうせ死ぬなら冷たいベッドの上より、畳の上で死にたい」


話がまとまった。

待合室で待たされている時間が長かった。・・・死の恐怖・・・


「会長、午後から株主総会がありますので」

「あぁ・・・表に車を回してくれ」

部下には黙っている方が良いだろう。


身寄りも無く・・・誰に看とられる訳でもなく死んでいく

こんな悲しいことは無い。
喪主は誰がするんだ?

車の中で死んだ後のことばかり気になった。
死ぬ人間が死んだ後の事を気にしても仕方ないことだが、人には迷惑をかけたくない。

オフィス街の景色を眺めながら車の窓を開け放つ。




いい風だ。


「ん!?」



あの男・・・


「倉橋君、車を止めてくれ」

「ですが会長・・・」

「いいから、止めろ!」


あの男を私は知っている
ずっと昔・・・一度出会ったことがある。


1960年代・・・


敗戦から間もないころ・・・
戦争の傷跡が色濃く残っていた時代

戦争で両親を亡くして祖父と二人暮らしになった。
食べる物にも困る貧しさ


生きる為に14歳から働き始めた。

貧困の時代・・・
朝早くから夜遅くまで働いた。

そんな時に出会ったコートの男。

俺が22,3歳の頃に突然、道端で声を掛けられた。

「すみません。この辺りで、桜井さんというお宅をご存じないですか?」

「この辺で桜井はうちだけですけど」


夏の・・・

とても暑い日だった気がする。

物が無い時代に帽子付きのコート・・・


それ以前に真夏日に汗一つ流さずに冷静に立ち尽くしていた。
鼻と口しか分からない・・・失礼なヤツだ。

帽子脱げよ。最初に、そう思った。

「それは良かった。すみませんが案内してもえらえますか?」

「じいちゃんに用ですか?」

「はい・・・うちに来てくれ。そう・・・ことづかっております」


人嫌いのじいちゃんが?


酷暑・・・少し歩くだけで全身から汗がしたたり落ちる。

後ろから付いてくる客人は平然として息も乱れていない。

「暑いですねぇ」


・・・


冷やかに言われても

なんだってトリカゴなんか持って、うちを訪ねてくるんだ?


黒い布に・・・おおわれたトリカゴが気になった。


「じいちゃん、お客さん」



軒先で座っていた・・・じいちゃんが振り返る。

「いやぁ〜・・・わざわざ来ていただいて申し訳ない。
ささ・・・どうぞ上がって下さい」


・・・


まるで俺なんか眼中にない感じで丁重に客人を招き入れた。

人嫌いのじいちゃんが笑ってる。

じいちゃんは結核を患っていた。
病床にありながら招いた客人


なんの話をして?
聞き取れない。

家に入っても帽子を脱がない客人

本当に失礼なヤツだ。


・・・


30分少しして男が帰っていった。

「お邪魔しました。お体お大事に」

態度は失礼だが言葉づかいは紳士的だった。


「じいちゃん・・・」


じいちゃんの側にはトリカゴ
そして中には青色の鳥。

じいちゃんは貰った、としか言わなかった。


・・・


あえて何も聞かなかった

なんで鳥なんか!
食べ物買った方が断然良い。


この時は・・・


そう思った。


一か月後

じいちゃんが血を吐いて、容態が悪化した。

「じいちゃん!今医者連れて来るから!」

「待ちなさい。ウゴォホ・・・ゴェホ・・・」
咳と一緒に血が飛び散る。


「じいちゃん・・・死んじまうよ」

「呼ばなくて良い!自分の死期ぐらい分かる。そんなことより、ここへ座りなさい」


「じいちゃん」

じいちゃんはトリカゴを両手で支えながら語り出した。

「よく聞きなさい。この鳥は幸せを運ぶ鳥・・・わしが死んで10年はお前に幸せが
舞い込んでくる」

「・・・」

「良いか?ちょうど10年じゃ。その後は、逃がしてやれ・・・分かったか?」

「分かった」

「ゴフォ・・・ゴフォ・・・」

目をそむけたくなるような咳。


じいちゃんは翌日・・・

亡くなった

痛々しい死から間もなく
両親、祖父の遺産を元に建設会社を設立


それが当たった。


崩壊した建物が多かったせいかウソのように仕事が殺到した。
瞬く間に一部上場にまで伸し上がり高度経済成長の先駆けとなる。



10年後の命日・・・

言われた通り青い鳥を放してやった。

じいちゃんの置き土産


幸せの青い鳥を売った男


その男が、いま目の前を歩いてる
間違えようの無い黒のロングコート。昨日のように覚えている。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ年は取りたくないものだ」

ほんの少しの距離で息が続かない。

「会長!」

「はぁ・・・はぁ・・・」

膝に両手を付けて立ち止まった。

「会長・・・この後、株主総会が・・・」

「よし!!倉橋君、おんぶしたまぇ」


・・・

「ここで・・・ですか?」

「早くしないと見失ってしまう」

「・・・」



「分かりました」

「あの全身、黒づくめの男を追ってくれ」

「分かりましたぁ!」


流石に若いだけに体力に限界がないように感じる。

「いいぞ〜〜倉橋君。次のボーナスは特別割増にしておく」

「ありがとうございます」


俄然(がぜん)早くなった・・・若い頃を思い出すなぁ。

男が路地に入って行くのが分かった。

路地裏にある建物・・・



闇の販売所?


男が店内に入っていくのが確認出来た。


「倉橋君・・・降ろしてくれ」

「会長!あの男が何か?」


その質問には答えずに左手を上げて制した。


「少し・・・待っていてくれ」


地味な扉を開け 店内に入った

来ることが分かっていたのか?正面に男が立ったまま出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」

間違いない


昔、見た男に瓜二つどころか本人だ。年を取っていれば・・・俺より上のはず!
・・・だが



なぜだ?


「君を追いかけて来たんだが、君は私を知らないのか?」

「大変・・・申し訳ありませんが以前どこかでお会いしましたでしょうか?」

「50年以上昔・・・君を見た事がある。でも、君は私よりも若い。必死に
追いかけて来たが勘違いだったようだ」


・・・


「邪魔したね」


帰ろうと黒いドアに手を掛けた。俺は何バカなことしてんら。
普通に考えれば分かることなのに


「それは、多分・・・私だしょうね」



な!



「それは・・・本当かね?彼の息子や親類じゃないのかね?」

「・・・」

「その帽子付きで長めのコート・・・それと決して脱がない帽子。
似ているがご本人なのか?」

「それは、私本人であって私ではありません」


言ってることがサッパリ分からん。

「理解に苦しむのだが」


・・・


「詳しくは・・・お答えできませんが、私の取り扱う商品を試した人であれば
何となく、分かるんじゃありませんか?」



言われてみれば、そうかも知れない。あの鳥のお陰で今の俺がある。
不思議に思うだけ時間の無駄!だろうな


「そうだな。今さら君を疑っても仕方ない・・・申し訳ない」

「どうです?よろしければ当店の商品見て行かれませんか?」

「相変わらず帽子は脱がんのだね。そこが良いのかも知れんな」

「見たい」


・・・ですか?

「いや・・・興味がない。それと商品の話なんだが、やめておこう。
俺は、もうすぐ癌で死ぬんだ」


あかの他人に話す事でも無かったが、自然に言っていた。

「カルネアデスの坂・・・という言葉をご存じですか?」

「がるねあです?聞いたことも無いが、それが?」

「日本の刑法第37条に該当する言葉で・・・緊急避難とも言いますね」


・・・


なにが言いたい?


「わが身を守るためなら、他人を犠牲にしても罪にならない法律」


・・・



「他人を犠牲にして助かってみませんか?」


!!!?


「そんな・・・悪魔みたいなことが可能なのか?」

興奮のあまり、男に近づいていた。

カルネアデスの坂という名前の商品は御座いません

ですが・・・

変わりに死んでくれる人なら居ます」


一体どういうことだ?


「身代わりに死んでもらう?少し気が引けるな」

黙ったままの店主を見つめて・・・

「しかし本当に・・・身代わりに?」

「はい・・・身代わりです。無理にとは言いませんが」

「何をすれば良い?」

・・・

「簡単なことです」

・・・

「魂を交換します」

「俺は・・・もうすぐ死ぬんだぞ!それじゃ相手が可哀そうだ」

「大丈夫です!相手の方は誰でも構わないと言われております。

たとえ

死ぬのが分かってる人間でも」


そんな・・・本当にそんな人間が?

「もしかして犯罪者や俺より年上じゃ無いのか?もっと凄い病気の持ち主とか」

「あなたよりも、だいぶ年下ですよ。犯罪者や持病もなく・・・ごく普通の
一般人です」


おかしい!?

何故そんな人間が

「納得いかないな!普通の人間なら絶対に否定するはずだ」

「理由までは、私にも分かりません。ですから、無理にとは言いません。」


どうする?


お言葉に甘えるか?
もう少し・・・生きていたい。
死ぬのが怖かった


相手が良いと言うのなら・・・

「こちらが相手方の写真です」


な!!!


これは・・・



間違えなく






「おや?どうされました?」

言葉が見つからない。

もうすぐ喜寿(77歳)になる男が・・・女?


この娘と人生を交換するのか?


抵抗がある


「彼女の名前は坂本香織さん21歳。綺麗な方ですよ」


俺が・・・



女に?


「どうされます?お辞めになりますか?」

仕方ない

「分かった!この娘と交換してくれ」

「では・・・こちらの商品1億になります」

!!

「1億?」

「はい」


死んだら使えないお金・・・
安い買い物だ。


まだ悩みながらも買う事にした


「連絡をお待ち下さい。お気をつけて」


そして店を出た

「会長!知り合いだったんですか?」

「あぁ・・・旧い友人だ」


・・・

・・・



「倉橋君」

「はい」


「おんぶしてくれ」

「分かりました」



カルネアデス前篇終了


◇次回は後篇です◇お楽しみに

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2012年04月14日

夢(第8話)

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俺は古い人間なのかもしれない

職場では同僚との折り合いが悪い。昔から人づきあいが下手だと分かってる。
親友など持った事がない。

妻とはお見合いで結婚
男の子が一人生まれた。


妻とは喧嘩ばかりの毎日。互いに顔をあわそうとしない。


父親を見下すわが子は、家庭内暴力に恐喝。



もう・・・


うんざりだ

学生時代が人生のピークだったように思う。


ただ純粋に夢に向かって頑張ってた日々が懐かしい。


もう一度・・・あの頃に・・・


書斎で机に腰掛けて両手を組み折る。



「私のワガママを許してくれ!」

手続きは全て終わっている。

荷物を拾い部屋を出る。


コン・・・コン・・・

「うっさい」


・・・


最後に息子の顔を見て行きたかった・・・

息子だけは愛していた。


本当に・・・すまない。



闇の販売所・・・ここへ来るのは2度目だ。


俺は、この店で買った。財産を全て売り払って買ったモノ


過去にタイムスリップする夢・・・後悔はしてない。



「いらっしゃいませ・・・お連れ様もご一緒ですか?」

「連れ?」



・・・



「これは失礼しました」


犠牲にしたものは、あまりにも大きい。でも過去へ行って歴史の事実そ知りたい!


昔からの夢


「心の準備は出来ましたか?後悔なさいませんか?」

「あぁ・・・やってくれ。家族にも別れを言って来た」


本当は手紙を残して来ただけ。許してくれ・・・本当に


「分かりました。では、いつ・・・どの時代に行かれますか?」

「日本の愛知県で1560年に行きたい」

「おやっ?彼、消えてしまいましたねぇ」


ん??カ・・・レ?



「もしかして、その時代へは行けないんですか?」

「いえいえ・・・そんな事はありませんよ。では始めましょうか」

ヨロシクお願いします」

「行かれる前に・・・こちらをお渡ししておきます」


渡されたのはブレスレット


「これは?」

「時間や次元・・・時空・・・時代・・・場所・・・それら全てに関係なく
使える通信機です」

「なんで通信機なんか?」

「特に意味はありませんが、無事に到着したか確かめる物です。1時間ほどで
消滅しますので」


・・・


本当に大丈夫なのか?ブレスレットをハメながら疑問に思う

「では、目を閉じて・・・リラックスして下さい」


・・・


身体が宙に浮いた!

凄い!?

店主が何か呟いてる。意識が遠のいて聞こえない


・・・


「永縁三年・・・・・・桶狭間へ・・・・・お気をつけて」



俺は高校で歴史を教えていた。真実を見た訳でもなく、知らないまま教えるには
抵抗があった。


夢が叶う。


宇宙浮遊さながらの浮遊


関ヶ原にすれば良かったか?久しぶりの興奮に胸が高鳴る。



もうすぐだ!



「うぅ・・・」


着いたのか?立ったまま気絶していたようだ。


ここは?

辺りを見渡す。

森???の中に着いたようだ


キョロキョロ・・・


ん?


なんだ?どうしたってんだ!?

足が言うことを利かない。
「どうなってんだ!」


そうか!ブレスレット・・・

腕をあげブレスレットに話しかける。


「聞こえるか?聞こえたら、応答してくれ!」



・・・


「聞こえてますよ。いかがです?戦国時代は?」

「それが、森の中に居るんだが脚が動かない!なんとかしてくれ」

「それは、変ですねぇ。確かに送り届けましたが」

「おいバカにしてんのか?助けてくれ」

「分かりました。私も、そちらに向かいましょう」


良かった。


ん?


あれは・・・人かな?


かなり遠くで五人前後の人影が見えた。

「お〜い、こっちだ!こっち・・・お〜い」


つい嬉しくて声を大にして叫んだ。大昔の人に会える。
こちらに気付いたのか・・・少しずつ近寄って来る。


あれ?


遠すぎて良く確認は出来なかったけど・・・現代風の・・・


スーツやTシャツにジーパンに見える。



なんで?


「こちらに居られましたか。随分、探しましたよ」

「うわっ!」


急に声がして驚いた。


「あ・・・あんたか!驚かさないでくれ。それより・・・ここは、桶狭間じゅないのか?
一体どうなってるんだ?」


・・・


男がしゃがみ込み地面を確かめる。

「なるほど・・・そういうことですか」


・・・


「どうやら・・・あなたは強制移動させられたようですねぇ」

「強制移動?」

「はい・・・私よりも大きな力によって」

「それより、こっちに来てなんとかしてくれ」


・・・


「おい!大金払ってんだ!助けてくれ」

「残念ながら、これ以上そちらへ行くことはできません。」

「おい!!ちょっと・・・冗談は止めてくれ!」

「冗談などでは・・・ございません。エキストラが映画に写っては
マズイでしょう?」


エキストラ?

「あんたを信用して・・・ここまで来たんだ。助ける義務が、あんたにはある」

「申し訳ありませんが、私には・・・どうすることも」

「では、私は・・・これにて」

「おい待て!いや・・・待ってくれ。俺これから・・・どうなるんだ?」

「それは・・・」


「それは?」


「後ろを・・・ご覧なさい」





「うし・・・ろ?」

振り返ると、あんなに遠くに居た人たちが近くまで来ていた。


!!?

こっ・・・


コイツら


先週から行方不明になってる俺の生徒じゃないか!?


「お前ら・・・どうして、ここに!?」



『うぅ〜』『がぁ〜うぅ・・・』


ゆっくりと歩いてくる。

まるで・・・


ゾンビのようだった。


一人が俺の肩に噛みつく

「ぐぅぁ・・・離れ・・・ろ!」

「お前ら・・・冗談は・・・よせ!!」


ゾンビのようでは無く、ゾンビだった。

いつの間に周りは・・・沢山のゾンビに囲まれている。


一人・・・また一人・・・俺に噛みついて来る。


「や・・・止めてくれぇぇ・・・お前ら!」


こんなところで訳も分からずに死ぬのか?

俺は父親として、教師としても失格だったかもしれない。


夢も叶わずに終わってしまう



「ようこそ・・・リアリティホラーの世界へ」


店主が嬉しそうに呟く



夢終了


◇次回はカルネアデスの坂〜前篇〜です◇お楽しみに

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2012年04月12日

穴(第7話)

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霊感

俺には人一倍感じる。

いや・・・二倍も三倍も感じる。もしかしたら、それ以上かも知れない。


うっすら分かる。そんなレベルじゃない


はっきり動いて行動してるのが分かる。


今も・・・サラリーマン風の男がこっちを見ている。



交差点の真ん中で・・・鋭い眼光で


目を合わせちゃダメだ。
知らないフリをしないと


彼らは・・・見えている者に助けを求める。

左顔半分の皮膚が無い。多分・・・交差点事故で無くなった霊だ


『助けて・・・』『痛いんだよ・・・』『苦しい・・・』『誰か・・・』


街中どこに行っても聞こえる悲痛な叫び


俺には・・・どうしようも無いんだ!早く消えてくれ!!


地方の農村で生まれた俺は小さい時には既に霊たちと遊んでいた。


過疎化で子供が少なく同じ年頃の子どももいなかった。

そんんあことは知るよしもなく、毎日毎日・・・


『ヒロくん・・・もう帰るの?』


「うん!もう帰らないと。まだ帰らないの?」


『うん・・・もっと遊ぼうよ。次かくれんぼしよ』

「でもぉ」

「ヒロくん?何してるの?」

隣りの家のおばさんに声を掛けられて


「うん。みんなと鬼ごっこ」

「みんな?」


そのことが原因で村から気味悪がられた。


成長して行くにつれ・・・多くの霊を見るようになった。

落武者・・・老婆・・・赤ん坊・・・生首・・・


彼らは俺が見えていることに気づくと助けを求めてくる。

『熱い・・・熱いよう・・・助けて・・・苦しい・・・なぜ助けてくれない』


やがて絶望から憎悪に変わる。


『なぜ・・・助けてくれない?助けてくれないなら、お前も苦しめ!!!』

生首 悪霊 自縛霊 ・・・様々な霊が引っ切り無しに追いかけてくる

両親も霊感が強かった。
母親は原因不明の病で死んでいた。それから一週間もたたないうちに、父親が
事故死・・・即死だったという。


何かの祟りだと思った祖母が霊媒師に除霊をお願いした。


両親の強い霊感を受け継いでいる。親の死は多分・・・僕びせいだ。

幼いながらそう思った。

霊媒師が言うには・・・何かが霊をたぐりよせているという。
原因は分かっていた。

さっそくお祓いの儀式が始まる。


その間・・・霊たちの声が聞こえて来る。


『やめ・・・て・・・』『お母さん苦しいよ〜・・・』『殺してやるぅぅぅぅ〜

たくさんの声


霊媒師が死んだと聞かされたのは一週間ほどしてからだった。


その日から更に・・・身の回りで怪異なことが起こり始める。

誰かに階段から突き落とされたり、浴室で足を引っ張られたり、寝ていると首を
絞められる。金縛りに合わない日はない。
高校を卒業して祖父母が亡くなった。病死と診断されたが違うと思う。


思い切って村を出ることにした。
村人からは避けられたし、もう未練は無かった。

暗く陰険な村にいるより都会の賑やかな場所が気分も紛れる。

どこにでも霊は存在する。
彼らと目を合わせなければ、近寄って来ない。


取りあえず・・・地味に生きて行こう。

東京に出て始めた仕事が夜の仕事
ホストじゃなくて、男性勧誘の呼び込み

それなりに給料は良かったし田舎では味わえない楽しさがあった。

「お兄さん一時間だけどうですか?」


そうやって毎日が普通に過ぎても・・・見えるモノは見える。


除霊グッズ集めるのが趣味になってた。さすがは東京みたいな・・・


壺 水晶 数珠 お札 お香・・・


働き始めて気づいたことがあった。



一人だけ・・・いや・・・一体の霊だけ他と少し違う霊がいた。 

うまく表現出来ないけど違う霊


その霊は20歳位の女性で、なぜか笑っている。嬉しそうな霊なんて初めて見た。

近寄って来るふうでも無く


夜 布団から天井を見上げると彼女が笑っている。綺麗な霊だな

でも霊は姿を変えて襲ってくる事もある。安心は出来ない。

多分・・・怨念が強すぎる悪霊だ。


「よ〜し・・・今日も除霊グッズ買うぞぉ〜」

カチ カチ ・・・  カチカチカチ


通販サイト・・・いつもの店っと!


ん〜?


「闇の販売所?」


いかにも除霊グッズがありそうな感じ



え〜っと・・・除霊の道具は・・・?



トルゥゥ・・・トルゥゥ・・・ 


「はい・・・こちら闇の販売所でございます」


「あっ・・・もしもし・・・さっきサイト見て電話したんですけど」


「何をお探しですか?」

「除霊の道具とか無いですか?かなり特別な除霊道具」

「ほう・・・面白いですね。よろしければ当店に足を運んでいただけませんか?
詳しく話をお聞かせ願いたい」



めんどくせ〜 



交差点の真ん中で叫ぶサラリーマンの霊

飛び降り自殺であろう全身血だらけで、這いずり回る女性


とびっきりの除霊グッズありますように!!


心の底から願いつつ闇の販売所を目指す。



闇の販売所・・・あった!


殺風景な店。路地裏に隠れてて普段なら絶対に分からない



「よし!」


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」

「いや・・・さっき電話したものですけど」

「これはこれは・・・ご足労願い申し訳ありません」


やたら丁寧すぎる言葉づかいに、こっちが緊張してしまう。


「どうぞ・・・おかけ下さい」

「失礼します」


面接に来た訳じゃないぞ!


「さて・・・先ほど電話でお聞きしましたが」

「はい・・・俺・・・じゃなかった。僕かなり霊感があるみたいで、霊がハッキリ見えたり
声が聞こえるんです」

「それは・・・高度な霊能力ですねぇ。今この部屋に霊はいますか?」

「いえ・・・この建物には見当たりません」

「そうでしょうねぇ」

「は?」

「残念ながら当店には霊を振り払う類の商品はありません」


じゃぁ〜なんで呼んだんだよ?


「あなたの・・・その霊能力1千万で買い取りますが、いかがです?」

「いっ・・・いっせんまん?」

「でしたら2千万で・・・」


「いやいやいやいや・・・そんなこと出来るんですか?」

「もちろんですとも」


こんな厄介な能力・・・欲しい訳が無い。何度恨んだことか・・・


欲しいんだったらタダでも構わない。


「本当に売っていただけるんですか?」

「はい。いや是非!」

「その能力は、いくら欲しいと願っても手に入れることの出来ない貴重な能力ですよ」

「僕には不要な能力です」

「そうですか・・・では誓約書にサインと振り込み口座を」


本当に無くなるのかな?
半信半疑でサインする。


「では・・・少しの間、目を閉じて下さい」

言われるがままに目を閉じる。男が何か呪文のような言葉を口走る。


「結構ですよ!確かに受け取りました」


「はぁ・・・」


それだけ?

「あの・・・もう霊能力は・・・」

「あなたには・・・もう見えたり聞こえたりしないはずです」


・・・


「ありがとうございました。なんか・・・ウソみたいですけど」

「こちらこそ助かりました。長く探しておりましたから」


辺りに霊を感じない!こんな事生まれて初めてだ。


「じゃ、帰ります」

「お気をつけて」


ドアが閉まる


・・・



・・・


「なぜ・・・彼に憑きまとうんですか?」


「・・・」


自分の目を疑った。

あれだけ溢れかえっていた霊たちが何処にもいない

目の見えない人が手術でもして見えるようになった感覚。
凄い・・・奇跡だ!
悲痛な叫びや助けを求める声もしない


やっと普通の人間になった。災いだらけの日々だったけど、実際なくなってしまうと
少し寂しいな。


「うわぁっ!」


プッ・・プー

クラクションと共に怒声がする。

「何処見て歩いてんだぁ!!気をつけろ!!」

「す・・・すみません」

突然誰かに背中を押された。振り返っても・・・誰も・・・


ん?


あ・・・足が動かない。だ・・・誰かに掴まれているような・・・


「おい早くどけよ!」



「すみません」

身体をねじるように歩道に逃げ込む。

な・・・なんで?霊感ないのに・・・



今まで見えていたから、どうにか対処出来たが




全く


見えない。


殺される!



急いで闇の販売所に引き返す。
見えない相手に殺されるなんて・・・ありえねぇ!


「いらっしゃいませ・・・どうなさいました?そんなに慌てて」

「ヤツらに・・・殺されそうなんです」

「そう・・・ですか。やはり・・・」

「何か知ってるんですか?どういうことか説明して下さい」


「あなたに彼らが見えなくても・・・彼らには、あなたが見えているのでしょうね」

「つまり・・・どういう・・・こと?」

「彼らは今まで通り、あなたに助けを求めてくるでしょう」

「そんな!?俺には、もう霊感なんてない。見えなくなった分、余計危険が増えた
だけじゃないですか!」

「彼らにそんな理解を求めても無意味でしょうね。残念ですが」


・・・


「返して下さい」


「お金・・・要らないですから返して下さい」

「残念ながら、先ほど4億円で売れてしまいました」

「よん・・・おく?たった数分で?」

「はい。大変珍しい商品でしたので、すぐに買い手が見つかりました」


あんな迷惑極まりない能力が4億?そんな能力欲しがる人が?


じゃあ俺・・・これから一体どうして生きて行けば良いんだよ


・・・


「・・・」


ゴーストリングブラックホール・・・そういう名前の商品がございます」

「それってお祓いの道具ですか?」

「最初に申し上げた通り除霊などの商品は扱っておりません」


「はぁ・・・それで?」

「ゴーストリングはあらゆる霊に触ったり感じる事は出来ます。
ブラックホールは、名前通り」


「名前通り?」


「はい、闇の穴です」

受け取るはずだったお金と引き換えに、リングと穴を貰った。




〜〜『あらゆる物を引きずりこむブラックホール。いつ・・・どの時代・・・どの
世界またはどの次元に繋がっているか分かりませんが、彼らを穴に閉じ込めることが
可能です』〜〜



帰りの途・・・店主の言った言葉を思い出す。

「閉じ込める・・・か・・・」

お祓い屋みたいだな


ゴーストリングをハメてみる

ゾクゾクゾクゾク・・・来た。

あの感覚

なんとも表現しにくい第六感。

寒い・・・身体が硬直する

悪寒ってヤツか?


ブラックホールは邪魔な悪霊を捕まえて投げ入れたり生ゴミなど・・・とにかくなんでも
処分出来た。瞬時に穴を作れるのが良い!


ゴーストリングのお陰で除霊の仕事に就いた。霊を捕まえる能力。始めは口コミから・・・
そして一年を過ぎる頃には事務所を構えるほどになる。


どちらも便利すぎる。
ただ穴に放り込むだけで大金が手に入る。


人生が変わった。


全国至る所に除霊に周った。一日10体以上の除霊もあった。
従業員も雇い一人では追いつかないほど忙しかった。


でも楽しいから良い。昔の人を避ける生き方に比べると・・・・・


2年が過ぎた頃、麻布にマンションを購入した。有り余るお金で



「そろそろ彼女作っても良いかな。21歳の若社長だし」


ある夜・・・

リングが無い事に気付いた。


や・・・ヤバい!?あれが無いと仕事どころか命にかかわる。


「あれ?昨夜、確かに・・・ここに・・・寝室かな?」


寝室を探し始めた時


「うわっ!?」



なっ!・・・・・・・・包丁・・・・・・


何処から?


天井・・・からだった。

なんで天井から?



しばらく見上げていると黒い点が現れる。


なんだ・・・ありゃ?


徐々に点が大きくなり、渦が出来る。


あれ


もしかして




ブラックホール・・・じゃないよな?

また何か降って来た。




「うわ!」


生ゴミだった。


『いつ・・・どの時代・・・どの世界またはどの次元に繋がっているか
分かりません』



店主が言ってた・・・言葉・・


・・・


逃げなきゃ!?


ガチャガチャ・・・・


あれ?


あ・・・開かない!?



ウソだろ?今・・・リングがない!


おい!おい!おい・・・


今まで何百何千の悪霊を放り込んだブラックホール。


その出口が・・・ここ?やめてくれぇ


こんな狭い部屋に、数千以上の悪霊が降ってきたら

俺・・・



どう・・・なるんだ?



穴終了


◇次回は夢です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 23:15| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月11日

心眼(第6話)

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心眼


「いらっしゃいませ・・・何か・・・・・・・・おゃ?」


「あ・・・・・ごめんなさい。私ちょっと道に迷っちゃったみたいで」


「なるほど・・・分かります。当店は普通の人には見つけられませんから」




「は?」



「いえいえ、気になさらずに・・・どこへ行かれる予定ですか?」


「私・・・こっちに出てきたばっかりで・・・・。マンション探してたら変わった
名前のお店だったから・・・つい」



「変わった名前ですか」



「あ!ごめんなさい。私そんなつもりじゃ」

「良いんですよ。ただ、このお店は一度来店してしまうと、必ず・・・・・もう一度
来店してしまうんです」




あっちゃ〜・・・・・変なとこ来ちゃった


「じゃ・・・私・・・このへんで」


「お気をつけて」



つい先月・・・父親の転勤に伴い家族で越してきた東京


超が付くほど方向音痴な私。初めての街での迷子になった。


たまたま通り掛ったお店で尋ねようと店入ったら・・・黒いフードで顔を隠した店員

なんのお店?




いきなり変なこと言われて困惑しちゃった。

え〜っと・・・地下鉄苦手だしなぁ〜


知らない街を一人で歩くのは好き。人間ウォッチングも好き。


これは神様が私に与えた試練に違いない!いつもそう思う。


試練を乗り超えるために地下鉄を探す。


何人かに道を聞いたけど


おっかしいなぁ・・・通り過ぎたのかなぁ。



10分ほど歩いた頃



ありゃ・・・


また来ちゃった。


闇の販売所・・・


「あはは・・・また来ちゃいました。あはは・・・は・・」


「こんなに早く再来店された人は、あなたが初めてですよ」


「あはははは・・・地下鉄を探してたら・・・来ちゃったみたいで」
「よほど・・・あなたが気に入られたようですね」



「はい?」


やっぱ間違えたぁ。また変なこと言い出すし・・・


「相当お困りのご様子・・・どうです?よろしければ当店の商品見て行かれませんか?」


「そんなあ・・・買う気とか無かったですから。ちなみに、このお店何屋さんですか?」


なんでも屋。とでも言いましょうか?人に便利な商品を取り扱っております」


「はぁ・・・便利な商品。ですか?」


「こちらなど、いかがです?」



男が差し出したのは黒ぶちの眼鏡



「この眼鏡なら・・・あなたを家まで導いてくれるでしょう」


「えっと・・・眼鏡がですか?」


「この眼鏡は目に見えない物を写し出す。例えば・・・人の純粋さ、人の寿命や考えなど」


ウソっぽい。仮にそれが本当でも欲しくない。お金ないし・・・



「では・・・これを」


「あの私お金持ってないんで、またの機会に」


「いえ・・・確かに代金受け取りました」



もらってしまった。


眼鏡するほど悪くないけど


店を出て眼鏡をする。特に変わったところは




ある!!


通行人にツノがあったり牙があったり
人の純粋さ?


性格が悪ければ悪いほど醜い生き物に見える。

男も女も口が裂けてたり、目が多数あったり・・・妖怪が歩いてる感じ。


これで・・・どうやって帰るの?

心が見えても、これじゃぁ帰れ・・・・・ん?


なに・・・あれ?



人の頭に文字が浮いてる。

これ・・・この人の今考えてることっぽい



(地下鉄乗って急いで会社に帰らないと)



地下鉄!?


この人についていけば地下鉄に行ける。



(今日の夕食は簡単で良いかなぁ)

(早く帰って夕飯作って・・・それから)

(あの子ちょ〜可愛い。こっち見た)


人の考えてること・・・全部見えちゃう。妖怪みたいな人ばっかりで違う世界に
迷い込んだアリスのよう


これってかなり便利よねぁ。使い方によっては人生変わる



にしても・・・みんな

普通のことしか考えてないのよねぇ


「ただいまあ〜」

「おかえり!どこ行ってたの?」

「うん。ちょっとブラブラ」

あんなに優しいお母さんでも耳が大きくて口が裂けてる


やっぱ普通に澄み切った心の人間なんていないよねぇ



みんな欲の塊。多分赤ちゃんとかじゃないと。


でもお母さんは・・・まだマシな方。

お父さんなんて、漫画に出てくるような悪魔だった



私ってどんなだろう?


鏡を前に緊張する私


ドキドキ・・・


すっごい怪物だったら、どうしよう。
意外と普通だったりして!お父さんより醜かったらイヤだなぁ・・・


眼鏡を掛け直す。


そして



「あれ?」



「普通じゃん」


何度も眼鏡をズラして見たけど、いつもの私。



違う!


私の思ってる事が浮いてない


自分自身の心は読むことが出来ないんだ。自分の事は自分で分かってるから
当り前か。


でも、こんな便利な物


あの人は確かに『代金は受け取りました』って急に言ったけど



私・・・1円も払ってない


私自身の姿は誰かに見てもらわないと分からない


他人に自分の心を見られるなんて絶対にイヤ!!


それに、どう説明して良いか分かんない。



ん!



携帯が鳴ってる

あっ!彼氏からだ。


こっちに来てから知り合った4歳年上の彼氏。

すっごく優しくてカッコいい。
一目ぼれに近い
大切にしてくれる彼氏からだった



「もしもし」


「もっし〜・・・何してんの?暇してんなら俺んちこない?」


「うん」




彼氏に興味があった。眼鏡越しに見る彼に・・・



一番人間らしくあってほしい。大好きな彼氏


期待しちゃダメ!って分かってるけど。目や口が裂けてるかもって分かってるけど



このまま付き合って結婚にでもなったら


見ない方が良いかも

醜かったら?


ううん・・・大丈夫!


取りあえず眼鏡はずしとこ

バスに揺られて、外の風景を眺める。色んな人と色んな建物



あれ?



今日、彼氏って仕事じゃなかったっけ?勘違い?
休みなら会ってたはずだから・・・

え〜っと・・・


まっ!会ってから聞けば良いか


早く着かないかなぁ・・・



ピンポ〜ン・・・


・・・


・・・



ガチャガチャ

「おう、上がれよ」


「うん」


いつもの何気ない会話
その彼の声も好き。低くて落ち着いてて癒される


彼の部屋は、男の部屋って感じで来る度に汚れてる。


もう〜・・・しょうがないなぁ!



「今日って仕事じゃなかったっけ?」

「ん?・・・あぁ・・・ちょっと体調悪いから休んだ」



凄く元気そうなんですけど。
「そんなことよりさぁ・・・先週すっごいもん拾ったんだよね〜。
じゃ〜ん」


そう言って彼が私に見せてくれたのは


シルバーリング。



ごく普通のシンプルな
シルバーリング


「ちょっと眼鏡かけてイイ?」

「目・・・悪かったの?」

「うん。ちょっとだけね」



大丈夫・・・彼なら大丈夫



・・・



・・・


「ひっ・・・」

思わず口をふさぐ


「おい・・・どうしたんだよ?」

「いやっ!!来ないで」



彼の腕を思いっきり振り払う。


今日一日沢山の人を見てきた。
色んな人の心の顔を見てきた。
みんな少しずつ妖怪化してる感じだった。


けれど



けれど・・・彼は



目が顔の至るところにある。口からは更に口があって・・・全身が緑色

触手が何本もあり・・・腕や触手にも目がある


人の形すらしてない・・・気味の悪い生き物。幾つもの目が私を見つめる。



「どうしたってんだよ?取りあえず落ち着けって」


「・・・」


「大丈夫か?」


「うん」


だおうしたらいい?私には優しいけど、裏で何をしてるのか分からない彼

騙されてた?

あんなに好きだった彼が、あり得ない姿だった。


「さっきのこの指輪なんだけどさぁ・・・絶対驚くよ!」

「・・・」


「この指輪を・・・ハメると・・・」
「・・・」



「じゃ〜ん」





「なっ?すげ〜だろ?」


???


「そして外すと・・・ほら」


??????



「なっすげ=もん拾っただろ?」


「う・・・うん」


私には緑色の怪物がリングをハメたり外したりしている姿しか分からなかった。



何が・・・すごかったの?


「ちょっと飲み物取ってくる。何が良い?」

「うん。なんでも良い」


うわのそら・・・


彼の部屋を掃除しながら
「ハァ〜」

ため息しか出ない。どうしたら良いんだろう?



ん?


クローゼットで何か光ってる蒼白い光


なんだろ?

クローゼットを開けて

「うっ・・・」


声を上げそうになって必死に堪える




死体・・・と分かる。血だらけの毛布に包まれた一部から・・・。

女性の腕


人殺し。


信じてた彼が・・・


急いで鞄を持って階段を降りる。

「ちょっと・・・どうしたの?」

「ごめんなさい」


靴も履かずに外に出てガムシャラに走る。


後ろから追いかけてくる緑の物体

逃げても逃げても逃げても・・・執拗に追いかけてくる。


角を曲がったところに公園。隠れなきゃ



「おや?これは昼間のお嬢さん」

この人・・・眼鏡の・・・


「私・・・追われてて」

「トイレに隠れなさい」

急いでトイレに隠れる。



「なぁ?ここら辺で女の人見かけなかった?」

「見かけませんでしたが・・・」

「そうか」


「おや?あなたが中指にしている指輪・・・どこで?」

「どこでも良いだろ!今急いでんだ」


「その指輪は私が先週落とした物です。返していただけますか?」

「これは買ったんだ!何言ってんだ?」


「私を怒らせない方が良い。それに・・・その指輪は人間には扱えない」

「あぁ?人間には扱えない?じゃあ犬や猫が指輪すんのか?あぁ?」


「その指輪の名前はダークネスコントラクト。ただ透明人間になるだけの指輪じゃ
ありません」


「・・・」


「闇との契約リング・・・。その指輪をハメたトータル時間、分かりますか?」


「さ・・・3、4時間・・・」


「そうですか、もう手遅れでしたね」



「なにがだよ?」


「・・・」


「うわっ・・・なんなコレ」








地中から沢山の黒い腕が緑の物体を掴む。そして・・・そのまま地中に押しこむ
緑の物体が揺らぎながら少しずつ埋もれて行った。悲鳴とも・・・つかない叫び声を
発しながら・・・



「あの・・・ありがとうございます。彼・・・どうなったんですか?」

「あちらの世界へ連れて行かれたのでしょう。それに私は、この指輪を探してましたから」



「あの・・・この眼鏡お返しします。おかね払ってないし、それに怖いから」


「代金はあなたのお爺さんから頂戴しましたよ」


「私のお爺ちゃん・・・から?いつですか?先月からずっと行方不明なんです。
どこに居るんですか?」


「申し訳ありませんが・・・どこに居られるかまでは」


「・・・」

「きっと近くに・・・いてらっしゃる」


「その眼鏡は持っておくと良いでしょう。これから役に立つかも知れませんから」

「はい・・・ありがとうございました」


「この道を真っ直ぐに行けばバス停に着きます。そのバスに乗れば家の近くまで
帰れるでしょう」


「はい」


怪しいとか思わなかった
何故・・・私の家を?この時そんな疑問を考える余裕がなかった




「これで良かったんですか?」


「・・・」


男が空に向かって言う。


バス停留所・・・


あと5分ほどでバスが来る。


そういえば、眼鏡を掛けて初めて普通の人に出会った。
目はフードで分からなかったけど・・・口や鼻が人間だった


バスの一番後部座席


お爺ちゃん・・・どこにいるの?捜索願いを出したのは数日前



あれっ?


この人も・・・?この子供まで

途中何度か停留所から人が乗り込む


後ろの座席から前に移動して見た。

この人も・・・いや・・・!乗客全員がそうだった



全員が緑色の顔をしている




なんで?


ドン!?



!!!!!!!!!!


ガッシャーン!?・・・バスがゆっくり横転して落ちて行くのが分かる。


誰かの悲鳴が聞こえた。



そっか・・・・・そういうことか!
この指輪の・・・もうひとつの能力忘れてた。


人の心の純粋さ

人の心を見透かす

そして

緑色は・・・その人の死期が近い事を示してたんだね

私・・・



まだ死にたくない



心眼終了



◇次回は穴です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 20:28| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月09日

箱(第5話)  

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ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・ガタンゴトン



朝の通勤ラッシュ・・・

もう何十年も・・・この通勤ラッシュを経験している


そして会社を目指す。


55歳になったばかりで若いもんには負けない!気力と体力には自信があった。

もうすぐ家のローンも無くなる。


あと少し頑張ろう。


先月まで・・・その気力で満ち溢れていた。



そう・・・先月までは・・・


リストラ・・・

何十年も会社に尽くしてきたつもりだ。役職もあり部下もいて、小さい会社ながら
頑張って来た。ローンや子供たちのために・・・


リストラされたなんて・・・とてもじゃないが家族には言えない。



職を失ってから半月。いつもの通り通勤ラッシュに乗り込み・・・
そして職探し


まともな仕事なんてある訳ない


家族にいつまでも隠せる訳も無い。

分かっている



いっそ逃げだしてしまいたい。



図書館で寛ぐ時間が増えていた。
一週間以上通っている。
日本のサラリーマンの約半数が天変地異を望んでいて、いまの生活から逃げたいと
思っているらしい。

こんな世間が悪いのか

それとも私の不甲斐なさか


保険金でなんとか・・・なる。

私だけが犠牲になれば家族の生活は約束される。


残された家族を思うと不憫に思うが仕方ない。




思い立ったら即決断


図書館で色々自殺について調べた結果・・・



・・・




さっそくロープと脚立の購入
そして目的地を決める。



翌日・・・


いつも通りの家族四人での朝食・・・最後の晩餐・・・



すまない。許してくれ。   こうするしか・・・



妻や子供たちの顔を見回す。
「お父さん朝から気持ち悪い!ずっと見つめて」


娘の顔を見つめ過ぎて言われた。
そんな年頃だから仕方ない。


「今日は車で行ってくる」


妻は・・・ただ・・・

「いってらっしゃい」



隣りの県との県境


山道を更に山奥へ


正午を過ぎていた。この辺で良いだろう。

震えている?覚悟はして来たつもりでも怖かった。


中々 実行に移せないでいた。タバコを吹かしたり・・・横になったり



ダメだ!ここまで来て・・・決意が鈍る



18時を過ぎていた。暗くなり始めた山中は静かすぎる。
車から降りて適当な大木を探す。


ロープをくくりつけ、脚立に乗る。




「さようなら」・・・・・







「あの・・・もし・・・」


「誰だ?」


声を掛ける方を振り返った。黒のロングコートをまとった男が立っていた。




こんな山奥に・・・


「こんな深い森の中で何をなさって?」


「見ればわかるだろ?今から死ぬつもりだ!止めないでくれ」




「そうですか・・・これはお邪魔しました。では失礼・・・」


「・・・」


何事も無かったかのように歩き出す男に


「おい」


「はい・・・どうかなさいましたか?」


「止めないのか?」


「止めるなと言われたのは・・・あなたですよ」



「そうだが・・・」


「見れば、あなたは脚が震えてらっしゃる。どうです?宜しければ近くに
私の屋敷があるので、お話だけでもお聞きしますが・・・」



屋敷?深い山奥の更に奥で・・・しかも道もない場所に?


怪しい。悩んでたが、私には死ぬ勇気がない


道なき道を進む。無言のまま・・・


暗い。静かすぎて・・・よからぬことを考える。


映画にあるような殺人鬼。恐ろしい殺され方をするんじゃなかろうか?



「すみません。本当に家があるんですsか?道もないし明かりも無いんですが」


「・・・」


「・・・」



まさか・・・本当に殺人鬼?


殺される!


死ぬ覚悟はあったが殺される恐怖が圧倒する


どうせ死ぬつもりだった。だが怖い




逃げよう。



「今から引き返すと夜道は危険ですよ」



なっ!


まるで心を見透かされたような・・・
何も言わず引き返そうと思った時だった


「あちらに建物が見えますか?」


建物?



あった。今どき珍しい洋風建築の家


家というより豪邸に近い


あの建物の中に多数の死体があったりしないだろうな?



「心配ですか?」






また?心を読まれた



偶然か?



大きな鉄扉を超えてエントランスのドアを開ける。


ホールを抜けて応接室に通された



「今、お茶をお持ちしますので」


「いや・・・お構いなく」



立派すぎる建物に高そうな調度品。何者だ?



男がティーカップを私に差し出して対面に座る。




「さて・・・何か訳ありのご様子ですが・・・」



リストラ・・・家族・・・自殺・・・包み隠さず全てを話した。



あかの他人に・・・



「そうですか。それは大変でしたねぇ。失礼ですが、あなたはお年は
おいくつ?」



「55だが・・・何か?」



「買い取りは無理ですねぇ」




はぁ?



買い取り?何を訳の分からないことを言ってるんだ



「もし・・・よろしかったら私がお力添えいたしますが」


「いや・・・他人のあなたに迷惑を掛けることは・・・」



「迷惑などではありませんよ。ただ少し私の仕事を手伝って頂ければ」



「仕事?」


「はい・・・私、珍しい商品の販売を営んでおりまして、少し手伝って頂ければ
・・・あなたが貰っていた給料と同じ額を毎月振り込み致します
10年間振り込みで悪い話ではないでしょう?」


「それは本当ですか?」


「私はウソは言いません」


「何をすれば良いんですか?なんでもします」


「なぁに・・・簡単なことですよ」



「箱に5分ほど入っていただくだけです」


「それだけ?」


「はい・・・それだけです。この箱、間違えて取り寄せてしまいまして・・・
効果が今一つ分からないものでして・・・。実験台になってもれれば」



「実験台!そんな・・・なんの実験台ですか?怪しいじゃないですか!?」



「いえ・・・無理にとは言いません。私からの提案の一つですから」



実験台・・・



どうせ死ぬ気だったんだ。これで死なずに今まで通り家族と過ごせるなら



「本当によろしいんですか?」



「ヨロシクお願いします」


人が一人入れるほどの正方形の黒い箱
これしか無い。これで幸せになれる。


「では誓約書にサインと振り込み先を教えて下さい。」


箱の中を覗くと普通の箱
何も変わったところは無い。
私は無言で箱に入った
そして蓋をされる




闇・・・闇・・・闇・・・



やけに静かだ。ヒザを抱えてうずくまる。





ん?




身体が熱い!どうなってるんだ?

熱い・・・火傷する・・・熱い・・・熱い!?

蓋を開けようとするが、開かない。


熱い!呼吸も苦しい・・・燃えている?

燃えてる訳じゃない・・・くっ・・・苦しい!炎の中にいるような・・・



ど・・・どうなるんだ?




ガタ・・・



蓋が開けられる。ぐ・・・苦しかった


はぁ・・・はぁ・・・助かったのか?




わっ!



か・・・身体が縮んでる。男が巨人のようにデカイ。

上から見下ろす男は携帯で誰かと話をしているようだ



小さくなってしまった?





「そうですか。はい・・・わかりました」


「・・・」




「ではハムスターならどうですか?ハムスターなら内緒で飼えますか?
ちょうど今手に入ったばかりのハムスターがありまして」



ハムスター?私が?


言葉が・・・出ない・・・



「チュー・・・」



「おやおや・・・これは可愛い」

そう言って男は私の身体を拾い上げるとカゴに入れた



おい!聞いてないぞ!?


おい・・・



もはや人間じゃ無くなった私はどうなるんだ?


男は私を外に連れ出した



「お待たせしました」


「キャッ」


「おや?これは失礼・・・驚かせてしまいました」


「あの・・・闇の販売所の?」



「はい お待たせして申し訳ありません」


「こちらが先ほどお話ししたハムスターとカゴとエサになります」


「あの・・・本当に良いんですか?カゴまで」


「もちろんですとも」



男が誰かと話をしている。聞くことは出来るが言葉が・・・



「チュー・・チュー・・・」




・・・




私は誰かに・・・もらわれたのだろう。



わぁ!



うゎっ!


そんなにカゴを振って歩くと、私が・・・うわぁ!?




「ただいま〜〜〜」



そんな



そんなことって




ないだろ!?




(私だ)




(お父さんだ・・・有美・・・)


有美・・・頼む。何か食べ物を・・・。空腹で倒れそうだ



午前2時
私はカゴを食いちぎってリビングに向かった。


信じられない身のこなし、そしてアゴの力


冷蔵庫を喰い破る歯
食べても食べても・・・満たされない。



気が付くと食べた分だけ大きくなっていた


そこから記憶が飛んでいる。

ひたすら肉を食べている事が分かる




人肉・・・



無我夢中で食べた





うまい




もっと・・・肉・・・



暗い。

どこだ?

突然目が覚めたような感覚・・・

ピンポ〜ン



有美が玄関へ向かうのが分かる。

私は何をしていたんだ?


暗い・・・


明かりを点けよう。



もう少し






誰かがリビングに入って来た


有美か?



「明かりをお探しですか?」





「あんた・・・あんときの!?」


「おやおや・・・これは大きくなられましたねぇ。自分の姿を確認されましたか?」



「あぁ・・・ハムスターになってる。どういう事だ?」




「あなたはこの世界の生き物ではありません。私と一緒に行きましょう」


「イヤだ!私はこの姿でも良いから家族を見守りたいんだ」



「家族を?あなたは・・・まだ分かってらっしゃらない。あなたが何をしたのか」




私は取り返しのつかない事をしてしまった。



愛する家族・・・


愛する家族のためにわが身を犠牲にしたのに



愛する家族を食べてしまった。



息子の亡骸の前で涙が止まらない。




「さぁ・・・行きましょう。この穴の向こうに仲間がいるはずです。さぁ!」



私は力なくうなずくと、暗い闇の穴へ入って行った。
有美が心配だった。けど・・・もうどうしようも無かった。



「さて・・・あとは外のお嬢さんだけですね」



箱終了



◇次回は心眼です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 22:07| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月08日

不老不死(第4話)

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不老不死

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
夜の人ごみをひたすら駆け抜ける。

人々のほとんどが走る影に気づいてないのか・・・無視してるのか


今捕まる訳にはいかない
脚が折れてでも逃げ切ってやる



絶対に・・・



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


かなり走った。でもまだ逃げなくては・・・





今から5年前・・・

まだ中学2年だった俺をオヤジが見捨てた。

ある日突然見知らぬ男達が家に入ってきて・・・何か話し合いをして
訳も分からず母親が平手で打たれてる訳が分からなかった。


原因はすぐに分かった。
父親の借金


土地や家が無くなった一家


父親は高校の教師をしていて不自由なく生活をしていた


中流階級で土地 家 財産

借金なんてあるはずがなかった


しかし家や家財、土地は全て売りに出されていた。




なぜ?



定年停職間近の父親は退職金も受け取らずに




行方不明



大金を手に入れて行方不明になった親父


そして・・・なにもかも失った俺と母親



生まれ育った家を追い出され施設に預けられた。


母親も・・・すぐに行方をくらました



結局・・・両親に見捨てられた。



家を出ていく当日

父親の書斎で見つけたメモ


あり得ない内容


見つけた手紙・・・

俺や母親に対しての謝罪が書かれてた。


夢を叶えるために全てを売り払い、そして家族を捨てた。




最低だな!!!!




親父は闇の販売所という店から夢を買ったと書いてあった。



そんな大金で買った夢



それは




タイムスリップすること


歴史オタク


その夢を実現する為に俺の人生が終わった。


帰る場所は施設



なんでだよ親父?
そんなんの為に家族とか全部捨てたのか?
そんなに大事な夢か?



それから、ずっと探している。闇の販売所・・・


電話帳やら市役所・・・ネットにも無い。


アルバイトで貯めた金で探偵も雇った。



手掛かりゼロ



1時間ほど前 仲間3人で騒いだ帰り。



「いってぇなジジイ」


ぶつかって来たジジイに絡んで殴ってやった。


ジジイは必死に謝っている。なんだこのジジイ・・・服装がB系


もっかい殴った拍子に封筒が落ちる。



ん?



なんだ?







「それだけは勘弁してください」


すっげ〜大金・・・


100万の束が6・・・

スゲ〜・・・


「これで勘弁しといてやる。おい、行こうぜ」



後ろのほうでジジイが叫びだした。


すぐに俺達3人は走り出す。


「はぁ・・・はぁ・・・」



5分ほど走って路地に逃げ込む。
「おい・・・いくらあんだよ」
「あ〜・・・600万・・・」



「マジで?スゲーじゃん。今から風俗行こうぜ」


「そうだな。取りあえず3人で風俗行って飲み明かすか・・・」
「マジ!ラッキーじゃん」


他の2人が勝手に話を進める。


600万もある。3人で割ったら200万・・・


ブスッ・・・


「グゥァ・・・なっ・・・何すんだよ」



持っていたサバイバルナイフで一人の脇腹辺りを刺した。


「う・・・うるせ〜!この金は・・・俺んだ」



必死に逃げた。



「おい・・・待てよ!おい」

もう一人が追ってくる。


これだけあれば・・・あんな奴らと組まなくて良い
母親も探せる・・・オヤジも・・・


「待てぇぇぇコラぁぁぁぁぁ」


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」


逃げて逃げて人ごみに紛れる


「はぁ・・・はぁ・・・」


捕まる訳にはいかない。



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

時折後ろを振り返る・・・いない



「はぁ・・・はぁ・・・」



呼吸を整えて歩き出す。


これからどうする?


もう施設には戻れない。


とにかく身を隠すためにネットカフェに入った



喉がカラカラだ。
取りあえず冷たいモノ



そして個室に入った



とりあえず寝よう


そう思っても・・・大金と人を刺した感触が、そうさせない。


あっ!しまった。



凶器のナイフが無い

今から取りに戻るか?



いや・・・マズイ・・・



捕まったら殺される。


ネットで逃げ道を探しながら働く場所を探そう


そう思った。この街には・・・もう居られない



パソコンなんか5年以上使ってない。



あれっ?




どうだっけ?



・・・



・・・



・・・長い・・・




ん?



あれ?


なんで?





闇の販売所・・・




たまたま?


あれだけ探しても無かった・・・のに


偶然見つけた。必死だったからかもしれない



もちろんアクセスした。



商品と言っても聞いたことの無いモノばかり



怪しい名前

そして



・・・



住所の記載がある




かなり近い



行ってみよう。



あった!!


路地裏から離れるようにして佇む店


店内が少しだけ明るい


誰かいるような・・・



ここまで来たんだ。入ってみよう



裸電球に事務椅子だけの店内


店じゃ・・・ないのか?



「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」







いつの間に?


後ろに男が立っていて問いかける。


「いや・・・ちょっと聞きたいことがあって」


「はい・・・なんでしょうか?」
「この店・・・タイムスリップって売ってるんですか?」



「・・・」



「ここではなんですので中へどうぞ」



椅子に座らされて、男は立ったまま・・・こちらを凝視する。

「聞きたいこと!と言われましても、お応えできかねますが・・・
確かにタイムスリップならうちの商品ですねぇ」


「それを買った男を覚えてるか?」


「・・・」



「俺のオヤジなんだよ。どこにいったんだよ?タイムスリップとか
言って、本当は金だまし取ったんじゃねぇのか?」


「これは人聞きの悪いことを・・・」


「分かりました。あなたに少しだけお見せしましょう」



・・・



「過去を」


この闇の販売所そのものを信じて無かった。


でも・・・違った・・・



ここどこだ?
見覚えのある・・・椅子 家具 机にカーテン
一人の男が机に向かっている。


オヤジ?


俺が最後に見たままのオヤジ



「おい!オヤジ・・・お前一体何やってんだよ?おい」


無造作に肩に手を掛ける


けど



すり抜けた。



過去にいるんだ俺!昔の家・・・オヤジの書斎。
今・・・俺が住んでいた家は違う家族が住んでて・・・昔の
風景のままだ



「私のワガママを許してくれ」


「えっ!?」
俺に言ったのか?



違う。多分・・・残される俺と母さんに言ったんだ


荷物をまとめてドアを開けるオヤジ。


コンコン

俺の部屋をノックするオヤジ


「うっさい」


当時の俺がドア越しに言うのが聞こえる。


悲しそうにうつむくオヤジ。そして無言で出て行った。



なんで・・・俺・・・うっさいなんて言ったんだ


当時の俺と今の俺、あんま変わんねぇな。



電柱に隠れながらオヤジの後を追う



そっか!別に隠れる必要なんて無いか。



電車を乗り継ぎついた場所・・・


闇の販売所


場所が違う。・・・けど間違いなく闇の販売所・・・



一緒に入ってみると広い空間に椅子と男だけ


「いらっしゃいませ・・・お連れ様もご一緒ですか?」



「連れ?」



・・・



「これは失礼しました」


闇の販売所店員と目が合った。


コイツには俺が見えている。
そして・・・知らないフリをした。
なんだ?この店員


俺を無視して、話始める二人
「心の準備は出来ましたか?後悔なさいませんか?」


「あぁ・・・やってくれ。家族にも別れを言ってきた」



なっ!!!



そんな別れなんて聞いた覚え無いぞ!

「分かりました。では、いつのどの時代に行かれますか?」



「日本の愛知県で1560年に行きたい」



あん?



また真っ暗な世界に包まれる。

おい!待てよ!!



そっから どうなるんだよ?


頭が重い!頭痛のような感覚で椅子に座ったまま目を開ける。

「いかがでしたか?あなたが見てきた・・・過去・・・」


「ありゃ・・・本当にオヤジなのか?」


「それはあなた自身が確認したはず」


「今の俺みたいにオヤジは過去に行ったんだろ?その後のオヤジは
どうなったんだよ?」


「今あなたが行ったのは魂だけです。そしてあなたのお父様が行かれたのは
身体と魂両方です」


「じゃあ・・・オヤジは?」


「俺さぁ・・・夢だったんだよ」

「と言いますと?」


「いつかオヤジ見つけたら一発ぶん殴って・・・それで母親と3人で暮らす
夢があったんだ」



「それはまた・・・親孝行ですねぇ」

「でも、もう諦めた。叶わねえ夢追いかけてもしようがねぇだろ?」



「俺さっき人刺したんだよ」


「それはまた・・・物騒な・・・」


「怖くねぇのか?オッサン」



「私、オッサンと呼ばれるような年齢では無いんですがね」


「どっちでも良いよ。・・・なぁ?」
「はい」


「俺に・・・なんか売ってくれよ。今600万ある。これで人生変わるような
もん売ってくれ」


「なるほど・・・分かりました」



「でしたら永遠の命などはいかがですか?」



「いいねぇ。本当にそんなもんが存在するなら不死身になりてぇよ」


「本当は2億は下らない商品ですが・・・値引きいたしましょう」




2億?



バッカじゃねぇの?値引きすぎだろ



「よろしいですか?不老不死になれば決して死ぬことは許されませんよ」



「構わねぇ・・・やってくれ」



「・・・」





「お客様こういうお話をご存じですか?あるところに親孝行の青年がいて
、彼は正直者で親切だった」


「・・・」



「ある時・・・両親が流行病に倒れて泣き崩れていると、神が舞い降りて
正直者の青年に三つの願い事を叶える約束をしてくれた」



「さっそく青年は両親の病気を治すようにお願いした。すぐに元気になった
両親は、いつも通り生活を続けた。しかし寿命には勝てず両親は他界した」



「・・・」



「そこで青年は二つ目の願い事に両親を生き返らせて欲しいと願った。しかし
生き返ったのは全身が腐ったゾンビの両親だった」


「・・・」



「夜に『ただいまぁ・・・開けておくれ息子よ』とノックする両親。困った青年は
三つ目のお願いをした」

「この三つ目の願い事・・・お客様には分かりますか?」


「さぁ?両親を消してくれ・・・かな?」




「いいえ違います。三つ目の願い事は自分もゾンビにしてくれ・・・だったそうですよ」


「バカじゃん。もっと有効に使えっての!」


「今の話を聞いても・・・永遠の命。受け入れますか?あなたは、まだ母親が居るじゃ
ないですか」


「いや・・・いいんだ。俺を捨てた人間だ。それに不老不死になってりゃ・・・いつか
良い事がある」


「そうですか・・・では、商談成立ですね」



「イテテテ・・・イッツ〜」




あん?どこだここ?



ここ・・・ネットカフェじゃねえか


いつの間に寝てたんだ!?

あれ全部夢だったのか?



夢か・・・



今何時だ?


やべっ!もうすぐ退出時間だし


やけに身体が重い


あっ!



あれ?


金が無い・・・600万が無い!

さっきの個室か?


クソ!


急いで店員に訳を説明して個室に入った



無い・・・無い・・・無い・・・



どこにも無い



闇の販売所・・・夢じゃなかったのか?



ぼ〜っとした頭を抱えながら店を後にした。

参ったなぁ〜。もっと違う事に使っとけば良かった。


一瞬で大金が無くなった途端・・・普通の思考に戻ったように思う。


あんときは逃げてたし・・・動転してたから
今考えたら不老不死なんて要らねぇ




ん?



なんだ?


道路を挟んだ向かいの公園入り口に沢山の人だかり


パトカーも数台



まさか!?

アイツ死んだんじゃねぇだろうなぁ?



昨日刺した場所とは、かなり離れてる。

それに後ろから浅く刺したつもりだ



いや


違う事件かもしれねぇ


ちょっと・・・確認しとくか


「はい、下がって下がって」
警察が野次馬を後ろに押し戻す



「なんかあったんすか?」



近くにいたオッサンに聞いてみた。


「あぁ・・・なんでも人が死んでたらしいよ」






死んでた?


アイツか?


野次馬を押しのけて先頭に躍り出る



違った。アイツじゃない


でも


逃げなきゃ!?



死体の顔を確認して、素知らぬ顔で歩き出す。


アイツじゃなかったけど・・・


死んでたのは・・・昨日の





ジジイだ・・・・・




ヤバい!?あのジジイの衣服には俺の指紋が付着してる


早く遠くへ


出来るだけ遠くへ逃げよう。


連れを刺して大金も無くなった。施設にも戻れない


所持金は



270円・・・クソ!


タバコも買えねえ


元カノ頼ってみっか!




取りあえず地下鉄だな。

確か230円で行けたはず。


腹減ったぁ!不老不死だから死ぬことは無いっしょ。



昨日から動きまわってるせいか空腹で辛い


元カノんちまで行けば・・・



「おい・・・やっと見つけたぜ!」


「ん?ヤベッ・・・」



空腹も忘れて走り出す。



クソ・・・ついてねぇなぁ。


ん!



一人・・・二人・・・三人・・・四人



おいおい・・・


何人仲間呼んでんだよ!?





げっ!?行き止まり・・・!


「ぐうぁ・・・」


いきなり後頭部に痛みが走る。


「おい・・・600万どうした?このおとしまえどうすんだ?あぁ?」


「へっ・・・もう・・・ねぇよ・・・」


「うぐぅえ〜」



腹に重い蹴りが来て・・・頭や腕 背中 全身に痛みが・・・


気を失った。



「うぅ・・・痛っ・・・アイツら無茶しやがって」


イテテテ・・・




どんくらい気失ってたか分からない。暗さから夜だと分かる。

「悪い事はするもんじゃねぇな」



えっ?マジかよ?冗談だろ?
痛みで下半身の感覚が無かったからか・・・

椅子に縛り付けられている上に膝から下にはセメント

すでに固まっていて動かない!
冗談きついぜ!?


「目ぇ覚めたか?刺して逃げたりしなきゃ助かったのによ」

「おい・・・冗談だろ?ただ刺しただけだぜ」


「ただ刺しただけ?」




「ぶぅぇ・・・」




木刀で何度も殴られる。そして声も出ない位にガムテープを巻かれた


おい!止めろ!?止めてくれ・・・俺は死ねないんだ





止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ




ザッブ〜ン・・・



あ〜あ



落とされちゃったよ。残ってた酸素が海上に上がっていく。



やべ・・・死んでしまう・・・苦しい・・・誰か・・・助け・・・て・・・




死んで。生き返る・・・苦しみ・・・そして死。生き返る・・・苦しみ・・・死ぬ。

生き返る・・・・・・・



永遠の命なんて望むもんじゃねぇ


終わりの無い永遠の苦通螺旋・・・



永遠の命は・・・永遠の地獄でしか無い。



不老不死終了



◇次回は箱です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 23:59| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月06日

ペット(第3話)

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ペット


「ねぇ〜〜〜買っても良いでしょう?」


「ダメったらダメ!大体誰が散歩やご飯の面倒を見るの?」


「学校から帰ってきたら散歩に連れてくからさぁ〜買ってよ」


「前もそう言ってママに押しつけて・・・最初だけじゃない、面倒みたの!」


「ケチケチばばぁ」


「なんか言った?」



タタタタ・・・



ふぅ〜・・・二階にある自室に逃げると大きくため息


「はぁ〜犬欲しいな・・・」



ん?


パソコンの電源が入ってる。さてはお兄ちゃんだな


自分の使えば良いのに・・・



闇の販売所?もう変なサイト開いて・・・」



・・・


面白そうね・・・

でも有害サイトかも・・・


「う〜っと・・・なになに?きっとお役に立つ商品か」


「うわっ高っ・・・
しかも何に使うのか分からない商品ばかり」


「うは!!ペットあるじゃん」え〜っと・・・



・・・



ん〜と


九十九神?ティアマト?ガネージャ?


これ何の動物!?


コン コン・・・


「有美入るぞ」


ガチャ



「ちょ・・・ちょっとノックくらいしなさいよ!!」


「思いっきりしましたけど!!何してんの?」


すぐに画面を閉じて・・・

「ううん。なんもしてないから!それより何?


「もうすぐメシだってよ」

そう言うとお兄ちゃんは興味なさげにドアを閉めた。



闇の販売所か・・・



翌日・・・


ペットショップに友達と一緒に来た。

来たのは良いけど・・・高すぎて到底お小遣いじゃ買えない額


「可愛い・・・メッチャ可愛い・・・」 
愛くるしい子犬たちに癒される。


君たち高いね〜



夕食後に何となく闇の販売所サイトを覗く



意味の分からない名前の商品・・・しかも高い。



災いのボールペン
予告ノート
全知の消しゴム
囁く下敷き
償いの定規
次元のコンパスなど・・・




文房具なのにどれも数百万以上でドラえもんの道具みたい。


買う人なんか・・・いるのかなぁ〜?


更に進んでいくとますます訳の分からない商品ばかり

「ふぅ〜・・・ん?」


ちらに記載して無い商品も多数取りそろえております。ご希望の
商品がない場合は以下の電話番号まで24時間お気軽にお尋ね下さい。
・・・か




掛けちゃおっかなぁ〜・・・。



手軽な価格で飼いやすくて癒されるペットありますか?
相手にされなそう・・・



ん〜と・・・ん〜と・・・ん〜と・・・


暇つぶしに掛けちゃえ。


ちょっと怖かったんで非通知で掛ける私・・・


トルゥゥ・・・トルゥゥ・・・


心の中で何故か出ないで欲しいと願う。


怖い人だったらどうしようかと色々考えた。

やっぱり切ろう



ガチャ・・・



タイミングって怖いなぁ〜



「はい・・・こちら闇の販売所です」


「あの・・・その・・・えっと・・・えっと・・・」


「・・・」


「おやおや・・・そんなに緊張なさらずに落ち着いて話て頂ければ
結構ですよ」


優しい男性の声が聞こえる。なぜか落ち着く
魅力的な低い声に緊張が解けて・・・不思議な感じ。



「あの・・・え〜っと・・・」


「若いお嬢さんですねぇ。お金が欲しいとか恋人が欲しいとかですか?」


「いえ・・・あの・・・手ごろなペットが欲しいんですけど」


「お金も恋人も欲しいんですけど、可愛いペットが欲しいんです。その・・・」
 

「なるほど・・・ちなみにお客様のご予算は?」


「え〜っと、今3万ちょっとしか無くって・・・ダメですよ・・・ね?」


「分かりました。3万でお譲りするペットはありませんが、ちょっと飼っている
猫が子供を産んだので飼育されてはどうですか?もちろんお代はいりませんよ」


「えっ!?良いんですか?」


・・・


「あっ・・・でもうち、ペットうるさいから猫は・・・」

「ではハムスターなどどうですか?ハムスターなら内緒で飼えますか?ちょうど
今手に入ったばかりのハムスターがありまして」


私って超ワガママだなって思いながら、内心喜んでた。


「あの・・・でも・・・お金は?」


「・・・」


「それに配送してもらっても、お母さんいるし・・・その・・・」


「・・・」


「そうですね・・・大切に飼っていただけるならタダで構いませんよ。
今から近くまでお伺いします。」


「えっ?今から?」



22時過ぎてますけど・・・



お父さんは未だ帰ってきてない。お母さんはお風呂。
お兄ちゃんは部屋に入ったら出てこない。


よし!今しかない



ガチャガチャ


半ば家出みたいに指定された近くの公園に向かう。


この公園・・・



不気味だから嫌い


約束の時間よりすこし早かった。もおう少しゆっくり来れば良かった。



襲われたりしないよね?



こんな暗い公園で待ち合わせって変だなぁ。って・・・思い出した



「お待たせしました」

「キャッ」

突然背後から声をかけられ尻もちをついた。


「おや?これは失礼・・・驚かせてしまいました」


この声


電話の声・・・



「あの・・・闇の販売所の?」

「はい、お待たせして申し訳ありません。」


この厚いのに・・・コート?



顔が良く分からない
普通の人だよね?・・・多分・・・



「こちらが先ほどお話したハムスターとカゴと餌になります」


「あの・・・本当に良いんですか?カゴまで・・・」


「もちろんですとも」



男の口元が笑ったように見えた。


「あの・・・ひとつ質問しても良いですか?」


「はい・・・なんでしょう?」


「サイトにあった・・・きゅうじゅうきゅうがみ?ってどんな動物ですか?」


「あぁ・・・あれは『つくもがみ』と読みます。良く動き回るのが特徴ですね」


「はぁ・・・なるほど・・・」



あんまり分かって無い



「では・・・私はこれで」


「ありがとうございます。助かります」

「最後に餌は忘れずに与えて下さいね。大きくなりすぎて手におえなくなったら
私が引き取りましょう」


「ん?これハムスターですよね?」



「はい、特別な・・・」



特別な?・・・






もしかして血統書付きとか?高級なハムスター?


マジで?



勝手に想像して・・・その日は・・・いつも通り一日が終わった。


ほんとう、ラッキー!!



翌朝・・・


昨日の男の人いつの間に来たんだろう?気配なかったし・・・


・・・


あれっ?
「お父さんは?」

「昨日から帰って無いのよ。全く・・・」
背中を向けたまま・・・お母さんが言う。



お父さんが帰って来ないなんて久しぶり・・・また喧嘩かな?



そんなことより遅刻しちゃう。
急いで支度しないと三日連続はヤバいでしょ。


あ・・・



ク〜ちゃんに餌あげなてない。


ハムスターの名前はク〜ちゃん。
あまりの可愛さに見とれてしまう。



「いいなぁ」




はっ!遅刻しちゃう・・・




ギリギリセーフ。



キ〜ンコ〜ン カ〜コン・・・


一時限目・・・



・・・



・・・?ん?・・・なんだこれ・・・



制服のポケットから四つ折りにされた白い紙



ん?



お買い上げありがとうございます。


始まりに書いてある言葉


赤い文字だ。


『お買い上げありがとうございます。ここでハムスターの飼育のポイントを
まとめましたので以下の事項をお守り下さい』

1 一日三食与えて下さい
2 特別な餌が必要ですので無くなり次第お知らせ下さい
3 一日二リットルの水を与えてください
4 脂系、肉類を絶対に与えないで下さい


いつの間に?こんな紙・・・ポケットに・・・


昨日制服のままだったけど預かった記憶無いし


というか一日三食とか・・・もう無理じゃん。
2リットルも見ず飲むもんなの?



知らなかった



どうしよ・・・三食とか水とか・・・
そんなこと言われたって(書かれてるけど)


今日は友達とカラオケ行く予定あるし


まぁ


多分


一日くらいなら平気でしょ。
そんなにすぐに死なないと思う。



多分・・・


分かんないけど・・・



「やっば〜。すっかり遅くなっちゃった!」


夜・・・街灯を頼りに足早に家に向かう。



カラオケ歌いすぎちゃったみたい。


絶対怒られる。
なんか言い訳 言い訳 言い訳



無いな〜



言い訳しか頭になかった。



「あれ?」


我が家の明かりが・・・



絶対に家族がいる家なのに真っ暗



「おっかしいなぁ」



ガチャガチャ







鍵・・・掛って無い


「ただいま〜」



し〜ん・・・・・




「お母さ〜ん?いないの〜・・・」

靴はお父さん以外きちんと並べてある。



「寝たのかなあ?」


リビングのドアを入れると部屋が明るくなった。




「キャ!」



「もう〜お兄ちゃん!いるなら返事くらいしなさいよねぇ」


「明かりもつけないで何してんの?」


ソファに背中を向けたまま座っているお兄ちゃん


「お母さんは?お父さん帰って無いの?」


「・・・」


「お兄・・・ちゃん?」





ガタガタガタ・・・・・・・・



二階の廊下を誰かが走るような音がした。


「えっ?何・・・いまの・・・」


「・・・」


「ねぇ?寝てるの?」



お兄ちゃんが座っているソファに近寄って・・・



そして


お兄ちゃんの前に移動した時・・・



「ヒッ・・・」



言葉にならない悲鳴

一瞬の硬直




そして





「キャァァァァァァァァァァ・・・」



だらしなく垂れ下がった両腕


血まみれのソファ・・・


首から下腹部まで裂けた穴・・・無残に飛び出している内臓。
散乱している内臓の一部


まるでカラスに食い散らかされた生ごみのように・・・


恐怖と共に震える身体



ガタガタ・・・・・・・・ガタガタ・・・・・・ガタ





「けっ・・・警察に・・・電話しなきゃ」


よたつく脚で電話に駆け寄る


「いち・・・いち・・・ぜろ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




・・・



・・・



「あれ・・・なんで?つながんない」



もう一度・・・




・・・



繋がらない


「ウソ?」




『無駄だ』



「!?」


『お前が悪いんだ』


な!なに?なんのこと?
何処から聞こえるの?


『お前が悪いんだ』


「何処?だ・・・誰ですか?」



『お前に飼ってもらった。ク〜ちゃん』



「ク〜・・・ちゃん・・・?」


ク〜ちゃん?ハムスターの?どういうこと?


金縛り・・・そんな感覚で見えない生物と話を続ける



『まだ・・・分からないのか?お前が食事をくれないから、お兄ちゃんを
食べたんだよ』




本当に?




「だって、そんな・・・そんなこと言われたって私・・・」



『黙れ!お前が悪い』


「お母さんは?お母さん何処?」


『寝室で寝ている』


「寝てる?良かった」




『首から上が無い状態でなあ』




「そ・・・んな・・・お母さん」


涙が止めどなく溢れる。言葉にならない。


「うっぐ・・・ヒッ・・・く・・・・・・・お母さん・・・ヒッ・・・?」




『お前が悪い』


「ヒッ・・・く・・・ぅう・・・」



『明かりを消せ!』



怒っているように聞こえた。



こ・・・・・殺される




『お前は殺さない』


「え?」



『早く明かりを消せ!』




無言で起き上がり・・・パチッ


わずかな月明りだけの真っ暗なリビング



「ひぃぃぃ・・・」



どこから現れたのか・・・人間の子供くらいの大きさ


長いシッポ 紅い目 真黒い体



これが・・・あの愛らしかったク〜ちゃん?



『お前は殺さない。これからは、お前が食事を調達して来い』



食事・・・を・・・調達?



私・・・が?




『新鮮な人の肉だ。もう、この肉しか食べない』



それって、どういうこと?



私が人を殺して・・・それを・・・食べる?


ど・・・どうしよ?そんなこと出来ない



『お前が悪い』



私が悪い



お兄ちゃんもお母さんも殺してしまった。




私が




ハッ!お父さんが帰ってくる・・・どうしよ!?




お父さん・・・今日も帰ってきちゃダメ!!




お願いだから



ピンポ〜ン



「!」



ピンポ〜ン

『誰だ?』


「た、多分・・・お父さんだと・・・」



『チッ・・・良いか、何も言わずに中に入れろ』



「は・・・はい・・・」



お父さんな訳がない。いつも合鍵で入ってくるし、さっき私は
施錠してない。



逃げれる!・・・助かった!


その思い一心で玄関のドアを開けた





「なんで?」




「夜分遅くにスミマセン。お留守かと思いました。ご就寝中でしたか?」


「いえ・・・まだ・・・起きてました・・・」


「そうですか」


「はい」


「多分・・・大きく成長してしまって手におえなくなったんじゃないかと思い
お伺いしました」



この人・・・まさか・・・こうなること知ってて!

それに住所まで・・・



どうしよ



「ハムスター元気ですか?」


「それが・・・その」



「だいぶ、お困りのようですね。顔色が悪いですよ」



「・・・」



「お嬢さん・・・外で10分程待っててもらえませんが?」


「でも」


「大丈夫・・・それに私にも責任がありますから。さぁ早く」

私の腕を掴んで外に連れ出す。




ガチャガチャガチャ

鍵の閉まる音


どうしよ・・・あの人も殺される!

逃げなきゃ


警察に・・・行って・・・



なんて説明するの?



ハムスターに家族を殺されました?



物音ひとつしない自分の家

昨日まで普通だった家が、今は違う建物みたい。



ガチャガチャガチャ







何事も無かったように男が玄関先で私を見る


「あの」



「お待たせしました。すべて上手く行きましたよ」



すべて?

うまく?


「今日は謝らなければいけませんね」



放心状態の私を無視して話を進める



「今日の出来事を誰にも言うな。と言っても無理でしょう。ですから・・・
私からのお詫びとして」



「そうですねぇ〜・・・過去にタイムリープして差し上げましょう」





タイムリープ?


なにソレ?



「ご安心下さい。痛くないですし・・・一瞬で終わります・・・」

男が無理矢理・・・私の口をふさぐ



「な”びする”んで・・・」



ふさがれた口から一生懸命に声を出す。けど・・・クロロフォルム?



最後のほうは・・・記憶が・・・



・・・



さっきまでの不安 恐怖 焦り 絶望 孤独・・・


無くなった時


深い眠りに沈んでいく自分が分かる



「ねぇ〜〜〜飼っても良いでしょう?」


「ダメったらダメ。大体誰が散歩やご飯の面倒を見るの?」


「学校から帰ってきたら散歩に連れてくからさぁ〜買ってよ〜」


「前もそう言ってママに押しつけて最初だけじゃない。面倒みたの」


「ケチケチばばぁ」


「なんか言った?」



急いで自分の部屋に・・・



あれ?



この光景どっかで見たような・・・さっきのセリフも知ってる。


どこで聞いたんだろ?



ん?



パソコンの電源が入ってる

闇の販売所
※買い取りも致します


「なんか・・・面白そうねぇ・・・なになに?」



ペット終了



◇次回は不老不死です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 23:10| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月04日

寿命(第2話)

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寿命


安アパート。

外は凄い台風でアパートが時折揺れてはきしむ。


東京で一人暮らしをしたいが為に浪人生をしている。



二浪・・・



都内の三流大学を受験したが『不合格』


次、ダメなら田舎に帰ろう。

でも・・・帰ってもやりたいことなんて無い。


ムシャクシャしてた時に・・・


ギャンブルにハマった。

初めは時間潰し程度だった。


一万・・・二万・・・


翌日も


翌々日も


気が付いたら生活費が無かった。


通帳残高・・・



320円。
マジで・・・ヤバい・・・


バイト先から前借りするか、親に泣きつくか

友人に頼み込む


バイト先は不景気で取り合ってくれない。

親は余裕が無い。

東京に来てから金を貸してくれるような親友はいない。



サラ金かな?


※一定の収入があれば、どなたでもご融資致します※


そんな触れこみが東京には溢れかえっていた。



ブイ〜ン



自動ドアを超えて受付には満面の笑みで女性が対応してくれる。


これで、何件目かな?


多分・・・



5件目


一定の収入と言っても月に5万円程の稼ぎ


どこも貸し渋って難色を示す。


諦めかけた時、貸してくれそうな所を紹介してくれた。


今にして思えば・・・騙された・・・


紹介先は闇金・・・


法外な利息


執拗(しつよう)な電話や取り立て



脅し




まるで映画の世界だ。


俺が借りた金額は5万円。



すぐに返せる。



たった5万円・・・



それが


わずか2週間で50万円


絶対無理だ。そんなお金返せっこない。

もう嫌だ。


親に頼むしか・・・


無理かも・・・・・・・




死ぬ?



そんな風に悩んでいたのが1カ月ほど前の話。



今、財布の中身はズシリと重い。


どうしようもなく途方に暮れていた時に見つけた。



闇の販売所
※買い取りも致します。


買い取りも致します?


街をふらついていて偶然見つけた店だった。


この際、何でも良かった。
テレビパソコン、冷蔵庫、洗濯機・・・


売れるものは、何だって良かった。


怪しい雰囲気を漂わせる扉を開け、店内に入る。











何かを売っているにしては店内に物がない・・・むしろ
店だとは思わない



昼間なのにうす暗く電気もついていない。

「すいませ〜ん。誰かいませんか〜?」


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」


奥のドアから一人の男が入ってきた。


黒いロングコート・・・目深に被ったフード・・・

口元以外、顔が全く分からない店員


サービス業だろ?



「あの・・・表の看板見たんですけど・・・」



「・・・」


「・・・」



「あの・・・買い取りもしますって・・・」


年齢不詳の店員が笑ったような・・・


「そうですか、何をお売りいただけますかな?」



「えっと・・・液晶テレビとか家電製品でも買い取って
もらえるなら、何でも・・・」



生きるためには仕方ない・・・テレビや冷蔵庫がなくたって
生きて行ける。


「おやおや・・・お客様何か勘違いなさってませんか?うちは
リサイクルショップなどではありませんよ」


「えっ?でも買い取りもしますって・・・看板に」



「お客様、相当困っておいでのようですが当店は・・・


・・・


世にも怪しいモノしか買い取りは致しておりません」




「そんな
俺・・・そんな珍しいモノなんて・・・持ってないし」


「あるじゃないですか?」


「えっ?」




「あなたの若さを買い取りましょう」


「若さ・・・を?」



「はい・・・
あなたの若さ1年を20万円で買い取りましょう」


「じょっ・・・冗談じゃない。そんなもん死んでも売れない」


「おやおや・・・そうですか。それは残念」


「帰ります」

それだけ言って俺はドアを開けた。

帰り際、店員が・・・呟いた・・・



「あなたは きっと また ここに来る」


「2度と来るか!!!」

苛立ちをあらわにしてドアを閉めた。


空腹で倒れそうだ


すれ違う人は皆無口で・・・誰もが俺を馬鹿にしているように
思えた。


もう少しで・・・アパート。


部屋の前・・・


3人の男が俺の部屋のドアを取り囲んでいた。



マジ?


雨も降ってきて・・・人生で一番ついてない日


重くドス黒いドアを押しあける。


「いらっしゃいませ・・・そろそろお越しになる頃だと思いました」


「そう・・・で・・・すか?」


「ここに来るお客様は必ず・・・もう一度来店なさる。何故かわかり
ませんがね」


そう言うと店員は椅子を差し出した。

無言のまま椅子に座る。


そして・・・


「5年・・・買い取りお願いします」


「承知しました。では・・・こちらの誓約書にサインを」


サイン・・・



空腹のまま『どうでも良いや』
そんな気持ちでサインした。


目を覚ますと安アパート
正午過ぎになっていた。


あれ?いつの間に自分の部屋に・・・



夢?


机の上には無地の封筒。
大金が入ってるのを確認して夢じゃなかった・・・と気づく。
現実?鏡の前に立って確かめたけど・・・昨日と変わった様子は無い。


本当に今は25歳なんだろうか?取りあえず・・・お金を返しに行こう。


闇金業者に80万円支払った。


そのままの足取りでコンビニに向かい食料を調達


何日分かの食料を買い溜めしたつもりだったけど・・・あっという間に
無くなった。


まあ、無理もない。久しぶりの食事だったし。


それに、まだ約20万ちょい残っている。
借金してからアルバイトや予備校にも行ってないや


まっ!いっか!!



パチンコでも行って忘れよ



豪遊・・・わずか3日で20万が消えた。

おっかしいな〜・・・そんなに使ったつもりは無かったけど
財布の中身は空っぽ


人間・・・実際に汗水垂らして稼いだ金じゃないと大切にしないな。



分かってたけど・・・生活費に困った末


闇の販売所を訪れていた。



すんなり買い取ってくれた若さ・・・なんかタダで大金貰ってるようで悪い。


同じように5年の若さと引き換えに100万円。今度は丸々自由に使える。


ラッキー!!


無駄遣いしないようにと思いつつも1万なら良いか!
パチンコに熱中して気づけば負けた。

夜・・・歩いて買える途中にキャバクラの呼び込みと仲良くなった。
そしてキャバクラに行ってしまった。


まだお金はある。


初めて夜の東京を知った気がする。

綺麗で艶(あで)やかで良い匂い、同い年くらいのホステス達


そこで一人の女の子と出会った。田舎では決して会えないような


美人だった。


「お兄さん、こういうとこ良く来るの?」

「いや・・・初めて・・・」


「なんか慣れてそうだよね〜」



そんなに老けて見られたことは無かった。同い年くらいの子に
お兄さんなんて


・・・






まさか!


急いでトイレに入って自分の顔を確かめた。


伸ばし放題のアゴヒゲにボサボサの髪の毛・・・落ちくぼんだ目・・・
艶の無い肌・・・


まだ20歳とは到底思えない自分の顔を触って初めて気づいた。
本当に歳とってる
昨日と違う自分


計算して30歳の自分
たった3日で10年も老けた。
あり得ない・・・どうしたら?



「大丈夫?」
店内に戻って彼女が心配そうに聞いてくる。


「あ・・・うん。ちょっと疲れただけ」


親や友達に合わせる顔が無い・・・30歳の自分を周りが納得する
はずがない。


どうしよう・・・



隣の彼女が嬉しそうに話しかけてくる。
良い匂いで・・・俺の悩みなんか小さく感じる。



このまま時間が止まってくれたら良いのに


バカだな・・・本当に・・・
そう思って家に帰った


お風呂に入ってひげを剃って鏡の中の自分を見る


20歳じゃない!手にも小じわが沢山あって違う人みたいだった


翌日・・・外に出る気力もなく・・・部屋で考えた。


考えても考えても答えなんて見つかる訳無い。


そう思って吹っ切れた



取りあえずパチンコ行こう。


夜、またパチンコに負けた。
そのまま癒しを求めて昨日と同じキャバクラへ


何もかも忘れさせてくれる彼女は魅力的だった。
名前はクミ


話が上手く飽きさせることのない時間。


何してんだろう。



分かってたけど・・・パチンコとキャバクラ通いが止められなかった。


クミの為なら何でもしてあげられる。

クミも多分そう思ってる。
クミの喜ぶ顔が見たくて指名もしたし次々とボトルも降ろした。


そんな生活がいつまでも続く訳もない。


やっぱり・・・最後は・・・



闇の販売所



思い切って10年分・・・200万円契約した。


これでクミに会えるし
ブランド物の鞄をプレゼント出来る。
彼女の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

俺・・・


いま・・・いくつだ?


そんな事よりパチンコで時間潰してクミの店に行くことで
頭がいっぱいだ。


「はじめまして」


クミが俺に言った。





「何言ってんの?もう飲んでんの?」






クミがキョトンとした顔で俺を見る。



・・・


失敗した!!いきなり10年老けたら俺だと分かる訳ない。

トイレで自分の顔を見て思った。


白髪の混じった髪の毛にだらしないお腹
おまけに中年オヤジ独特の匂いもする。


クミに嫌われたくない。


クミを失いたくない。・・・けど。
昨日までの俺って言っても信じてくれる訳ない。


新しい・・・自分に・・・
初めて来店した客になる事でクミと仲良くなれば良い。


その後・・・また何度も指名してあげた。喜ぶ顔が可愛かった。


クミは俺に惚れている。


それから2週間ほどしてクミから欲しい物があると切り出された。


「車?」


「うん。免許取ったけど車無くって・・・欲しいな・・・なんちゃって」


その日はそれで終わったけど。買ってあげたい。


その思いだけで闇の販売所を訪れた。


「おや・・・いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」


いつもと変わらぬ店員と店内

迷うことなく・・・歳を売った


今・・・

俺の手元には600万の大金
これさえあれば高級車が買える。


でも・・・俺って分かるかな?
早く会いたい


大金片手に急いで店を目指した。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ」


おかしい。たった数メートル走っただけで息が続かない
「はぁ・・・はぁ・・・」



ドン!

「なんだぁ〜このジジイ。いきなりブツカッテきやがって」

「あ・・・ごめんなさい・・・ちょっと急いでて」


「急いでてじゃねえよ。そんなんで許して貰えると思うなよ!」


「かっ!勘弁して下さい。本当すみません。」



路地裏で3人組に殴られて蹴られてのた打ち回る。


「このジジイすんげ〜大金持ってんぜ」


「ちょ・・・そのお金は勘弁して下さい。いま・・・手に入れたばっかで」


「うるせ〜」そのまま殴られ


「うっ・・・ぐぇ」


「これで勘弁してやるよ。じゃあな・・・じ〜さん」




なんで・・・こんな目に・・・
体中が痛い。


え?


嘘?


歯が何本も抜けてる。
残りの何本かがグラついて・・・起き上がれない


「チクショー・・・俺が何したってんだよ」


もう・・・クミに会いに行くお金が無い。



このまま死んじゃうのかな?俺・・・



俺・・・いま何歳だよ?


ショーウィンドーに写る自分に聞いてみた。


白髪とシワだらけの顔に似合わない若者の服


中身は若くても見た目はおじいちゃんだ。


何度も何度も顔を触って・・・確かめる。


財布には20万ちょっと


これで・・・どうしたら・・・幸せになる?



「いらっしゃいませ」


闇の販売所


「あの・・・若さを・・・若さを売って下さい。」

「おやおや?お客様・・・若さをお求めですか?」


「いま・・・20万ちょっとあります。それで買える分だけ
売って下さい・・・お願いします」



「・・・」


「・・・」



「残念ながらお客様・・・当店では1歳につき100万円でお売り
しております」



「1歳で100万円?俺は1歳20万で売ったのに・・・」


「こちらも商売ですから・・・」


「そんな!?1歳も買えないなんて・・・どうしたら良いんだよ」


「・・・」


「お客様相当お困りのようですね。こういうのはどうでしょうか?」


「お客様の残りの若さを500万で買い取らせていただきます。」


!!!?


「そんなことしたら・・・俺が死んでしまう」


「はい・・・確かにお客様は死んでしまう」
「ですが、その500万で来世に賭けてみませんか?」


「来世?」


「はい・・・あなたの残りの人生は既に見えています。そこでお客様の
現世の記憶があるまま生まれ変わってみませんか?記憶があるまま生まれ
変わるのに500万なら安くはありませんか?」



「でも」


「記憶があれば決して同じ失敗はしませんよ。始めから善も悪も分かるの
ですから」




そして俺は記憶のあるまま生まれ変わった。


同じ失敗を繰り返さないように・・・


あの日と同じように嵐で強風が身にしみる。


俺が住んでいた安アパートには今女性が住んでいる。


どこかクミに似ているようだけど違う。



俺も安アパートに住んでいていつもその女性を見つめている。



なぜ・・・



同じ安アパートかって?





それは俺が蜘蛛(クモ)だから・・・



生まれ変わったとしても人間とは限らない。



人間の記憶があるまま食事をしている時・・・ハエや蛾を食べている時




記憶は・・・残さないほうが良い



寿命終了


◇次回はペットです◇お楽しみに・・・

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posted by まさるっち at 21:24| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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