2012年05月06日

運命(第16話)

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運命(第16話)


「うぅ・・・」

眠っていたのか?

キョロ・・・キョロ・・・
辺りを見渡すと濃い霧に囲まれて数メートル先が分からない。


「何処だ・・・ここは?」

こんな濃霧は見たことが無い。

暗くは無いので昼間だと分かる

しかし方角が・・・

「どっちに行ったら良いんだ?」


ん?

すぐ近くで水の音がする


果てしなく広い川
対岸が見えない。霧のせいか?


三途の川を思わせる雰囲気・・・

そもそも・・・なんで、こんな場所に?

気を失う前の記憶は


確か・・・


会長の容態が悪化した知らせを受けて病院に向かっていた。

そこからの記憶がハッキリしない。

闇雲に動いてみるか?

川と反対を目指して歩き出した。


歩いた。


・・・


おかしい!
川には堤防があるはず・・・


でも


いくら歩いても霧で先が見えない

それでも歩いて
更に進んだ。


・・・


どうなってるんだ!
果てしなく続く霧

果てしなく続く川


立ち止まって360度・・・見渡す。


ん?
人影?


霧の中に人影・・・


やっと人に出会えた。
嬉しくなって


「すいませ〜ん!ちょっと道に迷っちゃって」


声を掛けながら人影に近づいて行った。


・・・

!!



「お前・・・」


「こんなとこで何やってるんだ!」

俺の知っている人物

「みんな必死に探してたんだぞ!お前の部屋から女の死体が見つかって
警察やマスコミに追われるし!分かってんのか!?」


「・・・」


「おい!なんとか言ったら・・・」

!?


俺のことなど眼中に無いように歩き出す。

まるで人形みたいだ

「おい・・・そっちは川だぞ!」

「彼に何を言っても無駄です」

!?

後ろで男の声がした。
振り返ってみると


ロングコートの男が立っていた・・・

「お待ちしておりました」


誰だ?


「話しかけても無駄って、どういうことだ?弟に何をした?」

男の細い肩を揺すり尋ねた。

「彼は喜怒哀楽の感情がありません。まぁ・・・
死んでしまった人間には必要ありませんがね」




死んでる?
何を言ってるんだ?


振り返ってみると

いない!!?

「ちょっと、待っててくれ!」

それだけ言うと追いかけた。

・・・


「一樹〜!どこだ〜〜?」

何処に行ったんだ?

さっきまで近くに居た弟が見当たらない。


「クソ!霧が邪魔で前が」

弟が歩いて行った方向へ走った。

何処だ?


・・・


「んっ!」


そういえば、さっきの男
どっかで見たことがあると思ったら・・・

会長が『旧い友人だ』確かに、そう言ってた。
顔を見たわけじゃないが、黒いロングコート。

今、思い出した。

詳しい事は後で聞けば良い。とにかく走った。

また人影?


一樹か?


なっ!?


ロングコートの男が川岸に立っていた。

「なんで、ここに・・・」


「・・・」


「ちょうど、会いたいと思ってたところだ。
さっき、待っておりました・・・とか」

男が川岸の方に振り向いて喋りだした。


「弟さん、この川を渡られましたよ」

!?

「なっ!」


パシャ・・・パシャ・・・


急いで川に入って後を追う。


「お待ち下さい。もう手遅れです」

「何が手遅れなんだ?やっと見つけたんだぞ!」

「ここは三途の川。それ以上進めば、帰ってこれませんよ」


三途の川


「何をバカな事を!
俺はちゃんと、こうして生きている」


・・・


「その川の水・・・
温かいですか?冷たいですか?」


!?


そういえば、感覚が・・・



無い



「俺たち・・・死んだのか?」

「あなたは、まだ死にきれていない。彷徨(さまよ)える存在です。」


「あんた、死神か?」


「死神?まぁ・・・似たようなことはしていますがね。
ですが・・・違います。」

「弟は死んだのか?」

・・・

「死んだのかって聞いてるんだ!!?」


自分でも驚くほどに叫んだ。普段なら絶対にやらないほどに・・・


「彼は渡ってしまいました。私はあなたに用があってここまで来たのです。」


弟は死んだから諦めろ

そんな風に聞こえた。


「ある女性を助ける代わりに・・・あなたには急きょ、死んで頂くことにしました」


な!


「なに・・・怖い事、まじめに言ってんだ!そんな見ず知らずの女のために殺されて
たまるか!大体、代わりとかおかしいだろ!?」


「・・・」


「なぁ?冗談だろ?」

「・・・」


「弟は・・・弟もそうなのか?」

「彼は、こうなる運命だったのです。しかし・・・
あなたは違う。あなたに非は無かった」


言ってることが良く分からなかった。弟は死ぬ運命で、俺は違った?


「じゃあ・・・なんで?俺は、ここに?」

・・・


「あなたは、ここに来るのが二度目ですよ。見覚えがありませんか?」


!?

「あなたは幼少の頃にn交通事故で意識不明になってませんか?」


な!?

「あなたは、ここで石を重ねて遊んだはずです」



驚いた。
子供の頃、事故った時に

ここと似た場所で石遊びをしている夢を見た事がある。


ずっと夢だと思ってた。


夢じゃ無かったのか?

「あなたの父親が、あなたを助けるために偽りの種という商品を買われました。
死なずに済む代わりに


・・・


いつ死ぬか分からない」


「いつ死ぬか分からない?
そんな・・・信じられるか!種で生き返るなんて聞いたことが無い!!!」


「前もって、お知らせする予定でしたが、急な出来事でしたので・・・三途の川まで
お詫びに参りました」


言ってることが信じられない。
仮にそうだとしたらコイツは何者だ?
生死を自由に操れる天使か?悪魔か?


「お詫びに、あなたに一つだけ!どんな願いも聞き入れることにしました」


「願い事?」


「はい・・・一つだけ・・・」



「本当に何でも良いのか?」

「えぇ・・・なんでも一つだけ。生き返らせてほしい・・・
それでも構いません」


・・・

・・・



俺の願い事は




「弟を生き返らせてくれ」


「自分のことよりも弟さんの方が大切ですか?」

「弟は俺よりも10歳も若い。まだやりたいことが沢山あるはずだ。
俺よりも弟を頼む」

「弟さん思いなんですね。誰かさんに聞かせてやりたい」





誰かさん??

男は川と真逆を振り返り

「よろしいでしょう。あちらの方角に真っ直ぐに進むと良い」



そう言った。

その方角には。やはり霧・・・


抵抗する意味も無かった俺は、すんなり受け入れた。


「あっちだな?行くけど・・・何があるんだ?」

男の口元が笑っているようだった。


「行けば分かります。」

・・・


「分かった」

男の横を通って歩き出した。


「お気を付けて」



少し歩いて振り返ると
男の姿は無かった。

霧に囲まれて見えないのか
それとも・・・
消えたのか


更に歩いて


ん?



あれは!!?


「会長!」

俺を可愛がってくれた人
尊敬する人だった


「倉橋君・・・」





会長に近づこうとするが見えない壁に当たって跳ね返される。


「ぐぅ・・・会長も」

「倉橋君、会社を頼んだよ」


それだけ言うと歩き出す会長。


「会長〜〜!待って下さい!!俺も死んだんです」


会長に追いつこうとするが、近づけない。

会長が振り返って


ニコっと笑ってから歩き出した。


「会長」


俺もう・・・
死んでるんです


・・・


川に向かう会長を見送ると逆を目指して歩き出した。

会長は亡くなられて川に向かった。


ん?


何で俺は川に行かないんだ?

その疑問を無視するかのように霧が歪み出した。

徐々に歪みが増して暗くなる。



俺・・・どうなるんだ?



闇から光へ


「うわっ!!?」


トンネルを抜けて目に直接太陽の光を受けたような眩しさ!

瞳孔が開ききっていたせいか慣れるまで時間が掛かる。


・・・


薄目を開けて少しずつ慣れて行く



ん?ここは・・・



自分の家?

キョロ・・・キョロ・・・


間違えなく我が家の玄関先。
なんで、こんなところに立ってるんだ?

俺は助かったのか?

状況が理解出来ない。
弟は無事なのか?


その時


頭上から声がして


「一樹」


一樹?
声がした方に顔を傾ける



!?


「き・・・きみ確か死んだはずじゃ・・・」


「はぁ?あんたこそ地面に吸い込まれたんじゃないの?」


地面?
なんの事だ?
この子は、うちの二階で確かに死んでいた。

警察も来て騒動になったから間違いない。


「君も助かったのか?」

「まさか一樹も?」


「さっきから一樹一樹って・・・俺は


・・・


一樹だ!」


玄関先にある全身鏡に一樹が立っていた。


「なんで一樹に?」

「なに言ってんの?それより、さっき出てったの・・・うちの妹?」

「妹?」

なんのことだかサッパリで・・・

「私、あなたの手紙見たの!さようなら!!」

「手紙?」
ただでさえ混乱する俺を無視して

彼女は「妹のヤツ靴も履かないで!この靴借りるか」と言い


バタン!


出て行ってしまった。

残された俺は鏡に写る自分を見ていた。


弟だった。


どういうことだ?
あの子が生きているのも不思議だったが


俺は
弟の無事を願ったはず・・・


確かに


弟は
無事だ。


時間と共に冷静になって行く。

日付は死体の見つかる当日だった


タイムスリップ?
弟として?


・・・




二日経過して分かったことがある。


倉橋家には男児は一人しかいなかった。

なぜか俺が存在しない。


そして


殺人事件も無かった。


二週間後・・・

「じゃあ明日から来てくれる?」

「分かりました」


・・・


今、俺は面接に来ている。



桜井建設株式会社。




倉橋一樹として

会長の『会社を頼んだよ』
という言葉を守るために・・・



運命終了

◇次回はスポットライトです◇お楽しみに
小説を楽しんでいただくために、是非第1話『ゲーム』からお読みください。

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posted by まさるっち at 15:23| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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