2012年04月27日

ヒーロー(第12話)

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ヒーロー(第12話)


キーン コーン カーンコン・・・

「終わった終わった。帰ろうぜ」

「今から、どっか行く?」

「ヤダァ〜携帯落としちゃった」


・・・


二学期末テストが終わったばかり

俺は一人 教科書に目を通した。


「あっ!!」
誰かに教科書を取り上げられた。

「おい!イケメン!教科書なんか読んでんじゃねえよ」

「帰るから、鞄持てよ」
「あ!俺のも」
「俺のヤツも!!」


・・・


「うん」


「おい・・・イケメン!ジュース買ってこい。アクエリアスな」
「俺はコーラ」
「んじゃあ、俺もコーラ」
「俺はコーヒー、熱いやつ」


・・・


「うん」


俺はイケメンじゃない。

『えなりかずき』に似ているところから・・・
あだ名が『イケメンえなりかずき』に

そして『イケメン』に略された

クラスでは目立たない存在。このクラスに入って夏休みを過ぎた頃から

パシリにされるようになった。

元々・・・このクラスには僕より運動と勉強がダメなネットオタクがいた。

そいつのお陰で僕は、いじめの対象から外れていたのに。



それが・・・



七月初旬から不登校になり・・・


いつの間にか、僕の居場所が保険室に変わった。

人間は残酷な生き物だ。
歯に犬歯があるのは、その名の通りだと書いてあった。

狭い空間に押し込めるられると、自分の優越感を得るために虐待が始まる。
そんな習性が・・・人にはある。


クソ・・・


アイツさえいてくれれば
僕は普通に高校生活をエンジョイ出来たのに

僕は機械科
残りの三か月を乗り切っても

また・・・同じメンバー。
クラス替えが、あれば・・・


絶望的だ。もうイヤだ
毎日毎日・・・毎日毎日・・・


せめて


放課後、殴らないで、下さい


冬休みが終われば退学しよう。

両親には悪いけど・・・

死んでしまうより・・・マシだろ?

冬休み初日に、ある人が尋ねて来るまで、そう思ってた。


ピンポーン・・・

「母さ〜ん・・・誰か来たよ」


・・・


居ないのか?


ピンポーン

誰だよ?こんな朝早くに


「はい・・・どちら様?」

扉の前に立ってた人物

「よっ!」


・・・



「上がっても良い?」

「良いけど・・・」


なんでコイツが?


コイツは隣りの普通科で
確か・・・『戸田』って名前



入学してから一度も放したことが無い。
コイツは、そのクラスで・・・



いや
学年一番の『いじめられっこ』だった。


いじめられてた。過去形になる・・・



「お邪魔します」


・・・


戸田のクラスでは夏休み中に12人もの生徒と担任が集団で行方不明になっていた。

その事件直後に登校して来るようになった戸田。
まるで・・・他人


成績トップ 学級委員長 部活動 恋人・・・


なぜ?


「家・・・よく分かったね」

「まぁ・・・そんな事、どうでも良いじゃん」


・・・


「なんにも無い部屋だけど、ゆっくりして行ってよ」

戸田が部屋を見渡して
「君さぁ・・・学校で、いじめに合ってるよね?」

なんだ!!いきなり?

「今日は、いじめられない方法を教えに来たのさ」

「いじめられない方法?」

「そう!確実に変われる方法」


かなり説得力がある。
同じ屈辱を味わった人間にしか分からない。

「ど、どうするの?」


・・・


闇の販売所さ」



闇の販売所


「この店で、ドッペルゲンガーと言う商品を買えば間違い無く変われる」

「え〜・・・なんか怪しそうだから良いよ」

「買えよ!」

「良いってば〜」


「買え!!!」


「うぐっ」


もの凄い力で僕の首を掴み・・・持ち上げた。

「買え!」


「うぐっ・・・お前なんか!べっ・・・勉強じゃ負けないのに」



ドサっ!


急に戸田が力を緩めたので、軽く尻もちをついた。


「試してみるか?」

「さん」

さん・・・?


「いち よん いち ご きゅう に ろく ご さん ご はち きゅう・・・
・・・・・・・・はち さん」


なっ・・・何を言ってるんだ?




「円周率」


「えっ・・・円周率ぅ!!!?」


「ざっと・・・1千ケタ・・・他で勝負するか?」

か・・・勝てない

「何で勝負する?数学 文学 歴史 英語 化学 一般常識 どれが良い?」

「ま・・・参りました」


戸田は、そのまま「借りるぞ」と言いパソコンを触り始めた


カチカチカチ・・・・


「よし・・・取りあえず一体だな」



取りあえず?


戸田が・・・

「商品代だ!そう言うと封筒を置いて帰って行った」


ドッペルゲンガーって何だよ?



ピンポーン

!?


と・・・戸田か?


「はい・・・」

黒いロングコートを着た男が立っていた


「ご注文ありがとうございます。闇の販売所のものですが」



闇の販売所?早いな・・・



「あぁ・・・お金なら、ここに」


「お待ち下さい。ご注文頂いたドッペルゲンガーですが闇市場にて入手困難でして」


「闇市場?」

「大変・・・申し訳ありませんが、お時間を頂けませんか?」

「あの・・・ドッペルゲンガーって一体なんですか?」


「・・・」



部屋・・・



僕は、これまでの経緯(いきさつ)を全て話した。

「そうですか。無理矢理に買わされたのですね」

「どうしたら・・・良いですか?」


・・・


「ドッペルゲンガーは本人を介して人間に限りなく近づく没人形(マリオ)です」

「マリオ?」

「恐らく、戸田と言う少年はドッペルゲンガーでしょう。ドッペルゲンガーは下手をすれば
本人を乗っ取りますから」

「僕が会った戸田が人形?」

「はい・・・間違いありません。インフルエンザウィルスに似ています」


「感染するんですか?」

「いえ、人間が猿から現代人に進化するまで70万年掛りました。しかし、インフルエンザは
・・・その70万年を、わずか一時間で進化します」



な!


たった一時間?


「人間には足元にも及ばない知識が発達し、欲望も発達します。」

「・・・」

「恐らく、あなたを没人形にしようとしたのでしょう。世界征服でも思いついたのかも
しれませんね」



!?


世界・・・征服?


「それほどの知識が二つ・・・あれば可能でしょう」

「あの・・・戸田の家族とかは気づいて無いんですか?」


「彼の家族は、人形でしょうね」


「ど・・・ドッペルゲンガーなんですか?」


「いいえ・・・私の記憶では彼が注文したのは藁人形三体」


「違うんですか?」


「ドッペルゲンガーを作るには本人が押す必要があります。藁人形は人間を復元する
だけの操り人形
ドッペルゲンガーを注文しなかったことを考えると恐らく・・・家族は・・・もう」

「私は・・・世界が征服されても構いませんがね」

!!

「ぼ・・・僕は・・・・イヤだ」

「あなた!彼を止められますか?」


・・・


「あなたに勇気があるのなら、こちらを差し上げましょう」


男は、トランクからガラス製の小瓶を取り出した。

ガラス瓶の中には黒い粉

「人魚をご存じですね?人魚の肉を口にすれば不老不死になる」


・・・


「これが肉ですか?」

「いいえ・・・人魚の肉を焼いた物。人魚の灰です!」


人魚の・・・灰?


「人間以外の・・・あるゆる命を絶つ事が可能です。それが、たとえ悪魔でも」

「・・・」

「この灰を彼に振りかけるだけです。
ただ、気をつけて下さい。人間には劇薬です。」


げ・・・きやく?

「人間に振り掛った場合・・・」

・・・




「壊れます」

「では、失礼します。ご武運を」


バタン!

玄関先で見送りながら思ったこと・・・


あの男の人なんなんだ?
親切だけど世界征服されても良いとか・・・


この展開を楽しんでるみたいな・・・感じだった。

帰り際に男が言ったセリフが頭に残る。



〜「忠告しておきます。彼に・・・あなただとバレては、イケませんよ。
ドッペルゲンガーだと彼は思ってますから」〜



何度も、そのセリフが頭をよぎる

ドッペルゲンガーに成り済ます。
ドッペルゲンガーに成り済ます。


それって

賢いフリをしろって事?

自慢じゃないけど

僕は

バカだ。


いつも赤点ギリギリ。
休みの日も補習・・・補習・・・補習・・・



慣れたけどね。

どうする?

どうしたらよい?

バレない方法?冬休み中に頑張って勉強するか?


・・・


・・・


そんなんじゃ、絶対バレる。
無い頭をフル回転する。

戸田のヤツ・・・そう言えば円周率言ってたな。

俺も1千ケタくらい覚えたら良いんじゃない?


・・・


そんな訳ないか

取りあえず図書館でも行って、何か探そう

市民図書館・・・


・・・


・・・


来たのは良いが、どれにする?簡単なのはダメだ。

となると


≪六法全書≫ ≪医療大辞典≫ ≪理工力学≫ ≪精神心理学適応集≫・・・・・

東大行く人の本か?

この文字見ただけで頭痛が・・・


ちょ・・・ちょっとレベルが高すぎた。

もう少し落として


ん?


これだ!



≪雑学王への道≫


「え〜っと・・・なになに」


『問@次の星座のうち実際に無いものはどれか?
@かみのけ座
Aじょうしき座
Bまくら座
Cけんびきょう座』


・・・


『問A信号機の電気代を支払っているのは、次の機関のうちどれか?
@日本道路公団
A各市町村
B警察
C日本政府』


む・・・難しい。
全く・・・分からない。


※答えは一番最後に掲載します。


あまりにも短すぎる冬休みが明日で終わる。明日戸田に

バレずに近寄って
バレずに人魚の灰を


ん!

待てよ・・・


これ失敗したら、口封じに殺されたりするんじゃ



登校初日・・・


「・・・であるからにして、諸君らの未来に・・・」

なげ〜よ!校長の話。


1時間以上も立たされる身になってほしい




・・・



「・・・である。それから最後に、前途有望な諸君なら・・・」


体育館
寒い。


キ〜ン コ〜ン カ〜ンコン・・・


ポン ポン


肩を叩かれて振り返り、無言になる。

「イケメン!後で集合な」


・・・




戸田のことばかり気にして、すっかり忘れてたコイツらの事
忘れてた。


「ぐぅひぇ」

一発入った

「イケメ〜ン!寂しかったかぁ〜!ふひひゃ」


今日は3人か・・・


ポケットの小瓶を守るようにして倒れる。
割れないようにしないと

取り囲むようにして、蹴られる


「うぐっ・・・」「ぶひぅ・・・」


「何をしている?」




戸田だった。


なん・・・で・・・


ここに?

「戸田ちゃ〜ん!君も殴られに来たの?

・・・えっ?」


ブン!

という音と共に宙に舞う巨体。


「ヒィィ・・・」

残された二人が逃げて行く。


た・・・助かった。


「なぜ・・・反撃しない?」


・・・


そう言うと戸田は気絶している相手に馬乗りにした。

「えっ・・・ちょっ」

戸田は殴り始めた。

「や・・・やめ・・・」

みるみる相手の顔が腫れて行き、戸田の拳が血で染まる。


「ゃ・・・めろ!それ以上すると死・・・死んじゃう」


「別に構わない」


更に殴り続ける戸田。


こ・・・コイツ本気で殺す気だ。

「お・・・おい!やめろって」

ボン ガン ズガ・・・

鈍い音がした。



「やめろ〜ぉぉぉぉぉ〜〜!!!」


持っていた小瓶で戸田の後頭部を殴りつけた。


パリン!


止まった


「なぜ・・・止める?」


「ヒィィぃ・・・動いた!」

戸田が立ちあがって、こちらを見る。

「お前・・・人間だな?」


ば・・・バレた!


戸田が歩いて来る。


こ・・・殺される。逃げなきゃ!

戸田が・・・



止まった?
違う!


散らばった灰が動いて・・・


「ウ グ・・・ナ・・・・・ナニヲシタ?」

灰が戸田の身体にまとわりつくと苦しみだした。


「ク クルシイ・・・ウグ・・・」


ドサッ!!


倒れた戸田の身体が、またたく間に黒く変色して行く。


「ウヒャ・・・ヒヒヒヒ」

今度こそ助かった?


・・・


「ウヒャヒャ・・・うひ・・・エヘ・・・ヒ」


世界は救われた?



「ィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ぁヒャヒャヒャヒャ・・・・・・・」



世界を救ったヒーローは



いま・・・





精神障害病院にいる。



ヒーロー終了

◇次回は坂本香織〜前篇〜です◇お楽しみに
※必ず第1話からお読み下さい。

文中の答えは、どちらもBでした。

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posted by まさるっち at 22:19| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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