2012年04月22日

カルネアデスの坂 後篇(第10話)

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カルネアデスの坂 後篇(第10話)


これから・・・50歳以上も離れた娘として生きて行かなければ
ならない。

今、出来ることは なんだ?


「倉橋君!」

「はい」


・・・


「近くの書店で10代20代女性人気の雑誌を買ってきてくれ」


・・・

けしからん。なんだ、この露出の多い服装は!?


パラパラ・・・



ん?

携帯が振動する

『通知不可能』


・・・


「もしもし・・・桜井だが」

「こちら闇の販売所です。準備が整いましたので、お時間大丈夫ですか?」

「早いな・・・二時間も経ってないぞ!」



闇の販売所・・・


まだ心の準備も出来て無いのに・・・


あの時、決心したはずだ。自分に言い聞かせて深呼吸をひとつ


「よし!行くか」


・・・・


「いらっしゃいませ・・・お待ちしておりました。」


店内には男と鉄パイプ製のベッドが二つ


・・・


ベッドには女性が横たわっていた。

「彼女は・・・既に深い眠りに入っておられます。さぁ・・・こちらへ」


・・・


無言のまま横たわる。

「お目ざめになったとき、あなたは坂本香織という女性です」

「分かった。成功を祈る」


「もちろんですとも」
男が笑ったように見えた。


そして


深い・・・眠りの中へ・・・



ジリリリリリリ・・・



ん?


目ざましを止めて眠りについた



ん!ん!?


目覚まし時計?


・・・


頭が割れそうだ。

「どこだ?」


入れ替わったのか?
闇の販売所。じゃない場所


・・・


散らかり放題の女性服と雑誌

多分、あの娘の部屋か・・・


それにしても



汚いな!


ガチャ・・・

ドアが開いて

「お姉ちゃん目覚まし鳴ったでしょ?もうすぐ仕事じゃないの〜?」


お姉ちゃん?


もうすぐ仕事?


ん!?

そういえば
この娘の名前しか分からない。

展開が急すぎて肝心なことを忘れていた。


「きみ!!」

「はぁ?」


「私の妹よ。名前は、なんだったかな?」

「そんな冗談より、お姉ちゃんなんて格好で寝てるの?」


かっこう?

「なんと!」


この娘・・・
パンツ一枚じゃないか!!


今どきの娘は 皆こうなのか?


いま・・・何時だ?

18時を少し過ぎた辺り
今から仕事?

「妹よ。私はなんの仕事をしていたかな?」


「はぁぁぁ?キャバ嬢でしょ」

きゃば・・・じょう?



冗談だろ?

見た目は若い女性でも中身は76歳のじいさんだ。

バカらしい!
そんなものにつきあってられるか!


「お姉ちゃん・・・どうでも良いけど遅刻しちゃうよ。
今月ピンチなんじゃ無いの?」


クソ・・・


この娘として生きて行くには、荷が重すぎる。


しかし・・・
俺は・・・もう女だ。
この娘として生きて行くと決心したばかりじゃないか!



既に入りては郷に従え


行ってやる!!


「妹よ。服の用意と化粧をしてくれ」

「はぁぁぁ?なんで私が?それと『妹よ』っての止めてくれない?
まじキモいんだけど」


目上に対する言葉がなっとらん。


クソ・・・


「そうか・・・悪かった。おこづかいを渡すからお願いします」


俺は情けない。


会長という肩書が懐かしい。

人にチヤホヤされた期間が長い
今から・・・俺が接客するのか?
この破廉恥(ハレンチ)極まりない姿
背中がスースーする。



「クミちゃ〜ん。遅いよぅ〜・・・クミちゃん指名のお客さん。もう咳についちゃってるよ
今日も頑張ってね」


は?


「俺は・・・香織じゃないのか?」

「今日も面白いね〜クミちゃん。さぁ!早く行ってあげて」


俺は・・・クミか・・・


「クミだ!よろしく!座るぞ!」

・・・

「くっ・・・クミちゃん今日は、いつもと雰囲気が違うね」

「そうなのか?」


・・・

「えっと〜クミちゃん 何か飲む?」


「いや・・・酒は好かん!」


・・・

「いつもはボトル下ろしてぇ〜って、ねだるのに珍しいね?」

「そうなのか?では

・・・おろしたまえ」


「クミちゃ〜ん。お客さん怒って帰っちゃったよ〜どうしたの?」

「そうか・・・では俺も失礼する。実に不愉快だ」

「えっ!?クミちゃん・・・ちょっと」



バタン!!!


俺には向いてなさすぎる。確かわが社の人事部空きがあったな!
「はぁ〜〜」


自分で育てた会社に面接に行くとはな


・・・



家は・・・どこだ?

トルゥゥ トルゥゥ・・・


「はい・・・もしもし」


寝ぼけ声が受話器から聞こえる。

「もしもし。申し訳ないが迎えに来てくれないか?」

「はぁぁぁぁぁ?今何時だと思ってんの?」


この娘は苦手だ。
すぐに怒る。口と態度が悪い。


プッ ツー ツー・・・

切れた


最近の若いもんは年上に対する態度がなっとらん。


ポン。ポン。


ん?
肩を叩かれて振り返る


「ねぇ?な〜にしてんの?俺らと遊ばない?」

「悪いが・・・先を急いでいるので失礼する」


・・・


熱が出そうだ。やはり無理がある。素直に死を受け入るべきだった。

タクシーを拾い
カプセルホテルへ行く


明日



やはり闇の販売所へ




♪♪♭♪♯♭〜〜〜〜


!!!!・・・!!!


何事だ?
けたたましい爆音量で目が覚める。


ん?


携帯?迷惑な!!!

『メール受信中・・・』


・・・


『この前はあ・・・ゴメン。今日会える?一樹』



一樹_


内容からして彼氏か


・・・


俺が会うのか!?



ポチ ポチポチポチ・・・


『あ たるぇ!ァ・・・ぇだぜぉ』

『よし!こんなもんだろう』

メールなど初めてだ。簡単携帯しか持ったことが無い・・・が
多分・・・大丈夫だ!



『メール送信中』


再び爆音が鳴る。

クソ!!


『メール受信中・・・』


『あたるって誰だよ?まだ怒ってんの?今から渋谷駅の前で待ってます』



・・・


「よし・・・我ながらうまく行ったようだな!」


渋谷駅前・・・


この辺りは、じいちゃんと良く来た。すっかり景色が変わったな。


「香織!」


ん?

「あれ〜?なんで今日に限ってスッピンな訳?」


コイツが一樹?


「まぁ・・・色々あるんだ。それで何か用か?」

「つめてぇ〜。どっか遊びに行く?」


最近の若者の遊びなんぞ知る訳が無い

「将棋なら得意だぞ!」


・・・


「へぇ〜意外。今から うち来る?」


ブゥゥ〜〜〜ン


車で移動してもらって助かった。
なんだ・・・この靴は?
二日歩いただけで、痛くてかなわん。


女という生き物は本当に苦労する。


・・・


「この前は本当にゴメンな」


・・・


何の事かさっぱり分からん。




一樹の家・・・

ほぉ〜。中々立派な木造家屋だ。

ん?


『倉橋家?』

倉橋?


まさかな・・・


「飲み物取って来るから、先に俺の部屋行ってて」

「部屋?」



「二階の突き当たり」

彼は確かに・・・『香織』

そう呼んだ。





そうか!そうか分かったぞ!
人によって使い分けているに違いない。

では・・・やはり香織か?でもなんのために?



ガチャ・・・



全く・・・


足の踏み場も無いとは、このことだ。


ガチャ・・・
「香織・・・炭酸飲めたっけ?って、なんでテーブルの上で正座してんの?」


「空いてる場所は、ここしか無かったからだ」



類は友を呼ぶとは良くいったものだ


「ふぅ〜ん!香織、目・・・瞑(つむ)って」

「なっ・・・」


まさか!?この男、接吻する気じゃあるまいな?


「いいから瞑って」


・・・


本当にするのか?
男だぞ!クソ!?


やってやろうじゃないか


「・・・」


「うっ・・・」


「うぐぅ・・・」

「・・・」

「な・・・なぜだ?」

「・・・」


「どういうことだ?」

「・・・」



「なぜ・・・



・・・



この娘を刺す?



激しい痛みが、お腹に押しかかる。
よろめきながら・・・
一樹にしがみついた。


「ゴメン。邪魔なんだ」


じゃま?

「お前・・・俺の手帳見ただろう?」

「て・・・手帳?」

「とぼけんな!」

「ぐぅぁ・・・」



胸に痛みが来て、温かい血が身体を伝うのが分かる。


「俺、お前の妹と付き合ってたんだよ!別れてくれない・・・
お前が邪魔なんだよ」



なっ!
「そんな・・・理由で!」


「お前さえいなくなれば幸せになれる」

・・・


「ふっ・・・ふざけるな!殺しが正当化されて、たまるか!」


ゴトン・・・


そのまま床に倒れ落ちた

「ふっ・・・ふふふ・・・」
笑ってしまう



「気味悪り〜女!刺されて笑いやがった」


これが笑わずにいられるか!!
騙された

この娘・・・最初から・・・こうなることが分かってて交換したな


虫が良すぎると思った


「ふふふ・・・」

「・・・」


どちらの人生を歩んでいても死ぬ運命だったか・・・


どうせ



どうせ・・・死ぬなら




男のまま死にたかった



一樹が、まだ意識の残っている俺を毛布で包みだした


カルネアデスの坂終了



◇次は迷い人です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 01:04| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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