2012年04月12日

穴(第7話)

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霊感

俺には人一倍感じる。

いや・・・二倍も三倍も感じる。もしかしたら、それ以上かも知れない。


うっすら分かる。そんなレベルじゃない


はっきり動いて行動してるのが分かる。


今も・・・サラリーマン風の男がこっちを見ている。



交差点の真ん中で・・・鋭い眼光で


目を合わせちゃダメだ。
知らないフリをしないと


彼らは・・・見えている者に助けを求める。

左顔半分の皮膚が無い。多分・・・交差点事故で無くなった霊だ


『助けて・・・』『痛いんだよ・・・』『苦しい・・・』『誰か・・・』


街中どこに行っても聞こえる悲痛な叫び


俺には・・・どうしようも無いんだ!早く消えてくれ!!


地方の農村で生まれた俺は小さい時には既に霊たちと遊んでいた。


過疎化で子供が少なく同じ年頃の子どももいなかった。

そんんあことは知るよしもなく、毎日毎日・・・


『ヒロくん・・・もう帰るの?』


「うん!もう帰らないと。まだ帰らないの?」


『うん・・・もっと遊ぼうよ。次かくれんぼしよ』

「でもぉ」

「ヒロくん?何してるの?」

隣りの家のおばさんに声を掛けられて


「うん。みんなと鬼ごっこ」

「みんな?」


そのことが原因で村から気味悪がられた。


成長して行くにつれ・・・多くの霊を見るようになった。

落武者・・・老婆・・・赤ん坊・・・生首・・・


彼らは俺が見えていることに気づくと助けを求めてくる。

『熱い・・・熱いよう・・・助けて・・・苦しい・・・なぜ助けてくれない』


やがて絶望から憎悪に変わる。


『なぜ・・・助けてくれない?助けてくれないなら、お前も苦しめ!!!』

生首 悪霊 自縛霊 ・・・様々な霊が引っ切り無しに追いかけてくる

両親も霊感が強かった。
母親は原因不明の病で死んでいた。それから一週間もたたないうちに、父親が
事故死・・・即死だったという。


何かの祟りだと思った祖母が霊媒師に除霊をお願いした。


両親の強い霊感を受け継いでいる。親の死は多分・・・僕びせいだ。

幼いながらそう思った。

霊媒師が言うには・・・何かが霊をたぐりよせているという。
原因は分かっていた。

さっそくお祓いの儀式が始まる。


その間・・・霊たちの声が聞こえて来る。


『やめ・・・て・・・』『お母さん苦しいよ〜・・・』『殺してやるぅぅぅぅ〜

たくさんの声


霊媒師が死んだと聞かされたのは一週間ほどしてからだった。


その日から更に・・・身の回りで怪異なことが起こり始める。

誰かに階段から突き落とされたり、浴室で足を引っ張られたり、寝ていると首を
絞められる。金縛りに合わない日はない。
高校を卒業して祖父母が亡くなった。病死と診断されたが違うと思う。


思い切って村を出ることにした。
村人からは避けられたし、もう未練は無かった。

暗く陰険な村にいるより都会の賑やかな場所が気分も紛れる。

どこにでも霊は存在する。
彼らと目を合わせなければ、近寄って来ない。


取りあえず・・・地味に生きて行こう。

東京に出て始めた仕事が夜の仕事
ホストじゃなくて、男性勧誘の呼び込み

それなりに給料は良かったし田舎では味わえない楽しさがあった。

「お兄さん一時間だけどうですか?」


そうやって毎日が普通に過ぎても・・・見えるモノは見える。


除霊グッズ集めるのが趣味になってた。さすがは東京みたいな・・・


壺 水晶 数珠 お札 お香・・・


働き始めて気づいたことがあった。



一人だけ・・・いや・・・一体の霊だけ他と少し違う霊がいた。 

うまく表現出来ないけど違う霊


その霊は20歳位の女性で、なぜか笑っている。嬉しそうな霊なんて初めて見た。

近寄って来るふうでも無く


夜 布団から天井を見上げると彼女が笑っている。綺麗な霊だな

でも霊は姿を変えて襲ってくる事もある。安心は出来ない。

多分・・・怨念が強すぎる悪霊だ。


「よ〜し・・・今日も除霊グッズ買うぞぉ〜」

カチ カチ ・・・  カチカチカチ


通販サイト・・・いつもの店っと!


ん〜?


「闇の販売所?」


いかにも除霊グッズがありそうな感じ



え〜っと・・・除霊の道具は・・・?



トルゥゥ・・・トルゥゥ・・・ 


「はい・・・こちら闇の販売所でございます」


「あっ・・・もしもし・・・さっきサイト見て電話したんですけど」


「何をお探しですか?」

「除霊の道具とか無いですか?かなり特別な除霊道具」

「ほう・・・面白いですね。よろしければ当店に足を運んでいただけませんか?
詳しく話をお聞かせ願いたい」



めんどくせ〜 



交差点の真ん中で叫ぶサラリーマンの霊

飛び降り自殺であろう全身血だらけで、這いずり回る女性


とびっきりの除霊グッズありますように!!


心の底から願いつつ闇の販売所を目指す。



闇の販売所・・・あった!


殺風景な店。路地裏に隠れてて普段なら絶対に分からない



「よし!」


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」

「いや・・・さっき電話したものですけど」

「これはこれは・・・ご足労願い申し訳ありません」


やたら丁寧すぎる言葉づかいに、こっちが緊張してしまう。


「どうぞ・・・おかけ下さい」

「失礼します」


面接に来た訳じゃないぞ!


「さて・・・先ほど電話でお聞きしましたが」

「はい・・・俺・・・じゃなかった。僕かなり霊感があるみたいで、霊がハッキリ見えたり
声が聞こえるんです」

「それは・・・高度な霊能力ですねぇ。今この部屋に霊はいますか?」

「いえ・・・この建物には見当たりません」

「そうでしょうねぇ」

「は?」

「残念ながら当店には霊を振り払う類の商品はありません」


じゃぁ〜なんで呼んだんだよ?


「あなたの・・・その霊能力1千万で買い取りますが、いかがです?」

「いっ・・・いっせんまん?」

「でしたら2千万で・・・」


「いやいやいやいや・・・そんなこと出来るんですか?」

「もちろんですとも」


こんな厄介な能力・・・欲しい訳が無い。何度恨んだことか・・・


欲しいんだったらタダでも構わない。


「本当に売っていただけるんですか?」

「はい。いや是非!」

「その能力は、いくら欲しいと願っても手に入れることの出来ない貴重な能力ですよ」

「僕には不要な能力です」

「そうですか・・・では誓約書にサインと振り込み口座を」


本当に無くなるのかな?
半信半疑でサインする。


「では・・・少しの間、目を閉じて下さい」

言われるがままに目を閉じる。男が何か呪文のような言葉を口走る。


「結構ですよ!確かに受け取りました」


「はぁ・・・」


それだけ?

「あの・・・もう霊能力は・・・」

「あなたには・・・もう見えたり聞こえたりしないはずです」


・・・


「ありがとうございました。なんか・・・ウソみたいですけど」

「こちらこそ助かりました。長く探しておりましたから」


辺りに霊を感じない!こんな事生まれて初めてだ。


「じゃ、帰ります」

「お気をつけて」


ドアが閉まる


・・・



・・・


「なぜ・・・彼に憑きまとうんですか?」


「・・・」


自分の目を疑った。

あれだけ溢れかえっていた霊たちが何処にもいない

目の見えない人が手術でもして見えるようになった感覚。
凄い・・・奇跡だ!
悲痛な叫びや助けを求める声もしない


やっと普通の人間になった。災いだらけの日々だったけど、実際なくなってしまうと
少し寂しいな。


「うわぁっ!」


プッ・・プー

クラクションと共に怒声がする。

「何処見て歩いてんだぁ!!気をつけろ!!」

「す・・・すみません」

突然誰かに背中を押された。振り返っても・・・誰も・・・


ん?


あ・・・足が動かない。だ・・・誰かに掴まれているような・・・


「おい早くどけよ!」



「すみません」

身体をねじるように歩道に逃げ込む。

な・・・なんで?霊感ないのに・・・



今まで見えていたから、どうにか対処出来たが




全く


見えない。


殺される!



急いで闇の販売所に引き返す。
見えない相手に殺されるなんて・・・ありえねぇ!


「いらっしゃいませ・・・どうなさいました?そんなに慌てて」

「ヤツらに・・・殺されそうなんです」

「そう・・・ですか。やはり・・・」

「何か知ってるんですか?どういうことか説明して下さい」


「あなたに彼らが見えなくても・・・彼らには、あなたが見えているのでしょうね」

「つまり・・・どういう・・・こと?」

「彼らは今まで通り、あなたに助けを求めてくるでしょう」

「そんな!?俺には、もう霊感なんてない。見えなくなった分、余計危険が増えた
だけじゃないですか!」

「彼らにそんな理解を求めても無意味でしょうね。残念ですが」


・・・


「返して下さい」


「お金・・・要らないですから返して下さい」

「残念ながら、先ほど4億円で売れてしまいました」

「よん・・・おく?たった数分で?」

「はい。大変珍しい商品でしたので、すぐに買い手が見つかりました」


あんな迷惑極まりない能力が4億?そんな能力欲しがる人が?


じゃあ俺・・・これから一体どうして生きて行けば良いんだよ


・・・


「・・・」


ゴーストリングブラックホール・・・そういう名前の商品がございます」

「それってお祓いの道具ですか?」

「最初に申し上げた通り除霊などの商品は扱っておりません」


「はぁ・・・それで?」

「ゴーストリングはあらゆる霊に触ったり感じる事は出来ます。
ブラックホールは、名前通り」


「名前通り?」


「はい、闇の穴です」

受け取るはずだったお金と引き換えに、リングと穴を貰った。




〜〜『あらゆる物を引きずりこむブラックホール。いつ・・・どの時代・・・どの
世界またはどの次元に繋がっているか分かりませんが、彼らを穴に閉じ込めることが
可能です』〜〜



帰りの途・・・店主の言った言葉を思い出す。

「閉じ込める・・・か・・・」

お祓い屋みたいだな


ゴーストリングをハメてみる

ゾクゾクゾクゾク・・・来た。

あの感覚

なんとも表現しにくい第六感。

寒い・・・身体が硬直する

悪寒ってヤツか?


ブラックホールは邪魔な悪霊を捕まえて投げ入れたり生ゴミなど・・・とにかくなんでも
処分出来た。瞬時に穴を作れるのが良い!


ゴーストリングのお陰で除霊の仕事に就いた。霊を捕まえる能力。始めは口コミから・・・
そして一年を過ぎる頃には事務所を構えるほどになる。


どちらも便利すぎる。
ただ穴に放り込むだけで大金が手に入る。


人生が変わった。


全国至る所に除霊に周った。一日10体以上の除霊もあった。
従業員も雇い一人では追いつかないほど忙しかった。


でも楽しいから良い。昔の人を避ける生き方に比べると・・・・・


2年が過ぎた頃、麻布にマンションを購入した。有り余るお金で



「そろそろ彼女作っても良いかな。21歳の若社長だし」


ある夜・・・

リングが無い事に気付いた。


や・・・ヤバい!?あれが無いと仕事どころか命にかかわる。


「あれ?昨夜、確かに・・・ここに・・・寝室かな?」


寝室を探し始めた時


「うわっ!?」



なっ!・・・・・・・・包丁・・・・・・


何処から?


天井・・・からだった。

なんで天井から?



しばらく見上げていると黒い点が現れる。


なんだ・・・ありゃ?


徐々に点が大きくなり、渦が出来る。


あれ


もしかして




ブラックホール・・・じゃないよな?

また何か降って来た。




「うわ!」


生ゴミだった。


『いつ・・・どの時代・・・どの世界またはどの次元に繋がっているか
分かりません』



店主が言ってた・・・言葉・・


・・・


逃げなきゃ!?


ガチャガチャ・・・・


あれ?


あ・・・開かない!?



ウソだろ?今・・・リングがない!


おい!おい!おい・・・


今まで何百何千の悪霊を放り込んだブラックホール。


その出口が・・・ここ?やめてくれぇ


こんな狭い部屋に、数千以上の悪霊が降ってきたら

俺・・・



どう・・・なるんだ?



穴終了


◇次回は夢です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 23:15| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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