2012年04月09日

箱(第5話)  

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ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・ガタンゴトン



朝の通勤ラッシュ・・・

もう何十年も・・・この通勤ラッシュを経験している


そして会社を目指す。


55歳になったばかりで若いもんには負けない!気力と体力には自信があった。

もうすぐ家のローンも無くなる。


あと少し頑張ろう。


先月まで・・・その気力で満ち溢れていた。



そう・・・先月までは・・・


リストラ・・・

何十年も会社に尽くしてきたつもりだ。役職もあり部下もいて、小さい会社ながら
頑張って来た。ローンや子供たちのために・・・


リストラされたなんて・・・とてもじゃないが家族には言えない。



職を失ってから半月。いつもの通り通勤ラッシュに乗り込み・・・
そして職探し


まともな仕事なんてある訳ない


家族にいつまでも隠せる訳も無い。

分かっている



いっそ逃げだしてしまいたい。



図書館で寛ぐ時間が増えていた。
一週間以上通っている。
日本のサラリーマンの約半数が天変地異を望んでいて、いまの生活から逃げたいと
思っているらしい。

こんな世間が悪いのか

それとも私の不甲斐なさか


保険金でなんとか・・・なる。

私だけが犠牲になれば家族の生活は約束される。


残された家族を思うと不憫に思うが仕方ない。




思い立ったら即決断


図書館で色々自殺について調べた結果・・・



・・・




さっそくロープと脚立の購入
そして目的地を決める。



翌日・・・


いつも通りの家族四人での朝食・・・最後の晩餐・・・



すまない。許してくれ。   こうするしか・・・



妻や子供たちの顔を見回す。
「お父さん朝から気持ち悪い!ずっと見つめて」


娘の顔を見つめ過ぎて言われた。
そんな年頃だから仕方ない。


「今日は車で行ってくる」


妻は・・・ただ・・・

「いってらっしゃい」



隣りの県との県境


山道を更に山奥へ


正午を過ぎていた。この辺で良いだろう。

震えている?覚悟はして来たつもりでも怖かった。


中々 実行に移せないでいた。タバコを吹かしたり・・・横になったり



ダメだ!ここまで来て・・・決意が鈍る



18時を過ぎていた。暗くなり始めた山中は静かすぎる。
車から降りて適当な大木を探す。


ロープをくくりつけ、脚立に乗る。




「さようなら」・・・・・







「あの・・・もし・・・」


「誰だ?」


声を掛ける方を振り返った。黒のロングコートをまとった男が立っていた。




こんな山奥に・・・


「こんな深い森の中で何をなさって?」


「見ればわかるだろ?今から死ぬつもりだ!止めないでくれ」




「そうですか・・・これはお邪魔しました。では失礼・・・」


「・・・」


何事も無かったかのように歩き出す男に


「おい」


「はい・・・どうかなさいましたか?」


「止めないのか?」


「止めるなと言われたのは・・・あなたですよ」



「そうだが・・・」


「見れば、あなたは脚が震えてらっしゃる。どうです?宜しければ近くに
私の屋敷があるので、お話だけでもお聞きしますが・・・」



屋敷?深い山奥の更に奥で・・・しかも道もない場所に?


怪しい。悩んでたが、私には死ぬ勇気がない


道なき道を進む。無言のまま・・・


暗い。静かすぎて・・・よからぬことを考える。


映画にあるような殺人鬼。恐ろしい殺され方をするんじゃなかろうか?



「すみません。本当に家があるんですsか?道もないし明かりも無いんですが」


「・・・」


「・・・」



まさか・・・本当に殺人鬼?


殺される!


死ぬ覚悟はあったが殺される恐怖が圧倒する


どうせ死ぬつもりだった。だが怖い




逃げよう。



「今から引き返すと夜道は危険ですよ」



なっ!


まるで心を見透かされたような・・・
何も言わず引き返そうと思った時だった


「あちらに建物が見えますか?」


建物?



あった。今どき珍しい洋風建築の家


家というより豪邸に近い


あの建物の中に多数の死体があったりしないだろうな?



「心配ですか?」






また?心を読まれた



偶然か?



大きな鉄扉を超えてエントランスのドアを開ける。


ホールを抜けて応接室に通された



「今、お茶をお持ちしますので」


「いや・・・お構いなく」



立派すぎる建物に高そうな調度品。何者だ?



男がティーカップを私に差し出して対面に座る。




「さて・・・何か訳ありのご様子ですが・・・」



リストラ・・・家族・・・自殺・・・包み隠さず全てを話した。



あかの他人に・・・



「そうですか。それは大変でしたねぇ。失礼ですが、あなたはお年は
おいくつ?」



「55だが・・・何か?」



「買い取りは無理ですねぇ」




はぁ?



買い取り?何を訳の分からないことを言ってるんだ



「もし・・・よろしかったら私がお力添えいたしますが」


「いや・・・他人のあなたに迷惑を掛けることは・・・」



「迷惑などではありませんよ。ただ少し私の仕事を手伝って頂ければ」



「仕事?」


「はい・・・私、珍しい商品の販売を営んでおりまして、少し手伝って頂ければ
・・・あなたが貰っていた給料と同じ額を毎月振り込み致します
10年間振り込みで悪い話ではないでしょう?」


「それは本当ですか?」


「私はウソは言いません」


「何をすれば良いんですか?なんでもします」


「なぁに・・・簡単なことですよ」



「箱に5分ほど入っていただくだけです」


「それだけ?」


「はい・・・それだけです。この箱、間違えて取り寄せてしまいまして・・・
効果が今一つ分からないものでして・・・。実験台になってもれれば」



「実験台!そんな・・・なんの実験台ですか?怪しいじゃないですか!?」



「いえ・・・無理にとは言いません。私からの提案の一つですから」



実験台・・・



どうせ死ぬ気だったんだ。これで死なずに今まで通り家族と過ごせるなら



「本当によろしいんですか?」



「ヨロシクお願いします」


人が一人入れるほどの正方形の黒い箱
これしか無い。これで幸せになれる。


「では誓約書にサインと振り込み先を教えて下さい。」


箱の中を覗くと普通の箱
何も変わったところは無い。
私は無言で箱に入った
そして蓋をされる




闇・・・闇・・・闇・・・



やけに静かだ。ヒザを抱えてうずくまる。





ん?




身体が熱い!どうなってるんだ?

熱い・・・火傷する・・・熱い・・・熱い!?

蓋を開けようとするが、開かない。


熱い!呼吸も苦しい・・・燃えている?

燃えてる訳じゃない・・・くっ・・・苦しい!炎の中にいるような・・・



ど・・・どうなるんだ?




ガタ・・・



蓋が開けられる。ぐ・・・苦しかった


はぁ・・・はぁ・・・助かったのか?




わっ!



か・・・身体が縮んでる。男が巨人のようにデカイ。

上から見下ろす男は携帯で誰かと話をしているようだ



小さくなってしまった?





「そうですか。はい・・・わかりました」


「・・・」




「ではハムスターならどうですか?ハムスターなら内緒で飼えますか?
ちょうど今手に入ったばかりのハムスターがありまして」



ハムスター?私が?


言葉が・・・出ない・・・



「チュー・・・」



「おやおや・・・これは可愛い」

そう言って男は私の身体を拾い上げるとカゴに入れた



おい!聞いてないぞ!?


おい・・・



もはや人間じゃ無くなった私はどうなるんだ?


男は私を外に連れ出した



「お待たせしました」


「キャッ」


「おや?これは失礼・・・驚かせてしまいました」


「あの・・・闇の販売所の?」



「はい お待たせして申し訳ありません」


「こちらが先ほどお話ししたハムスターとカゴとエサになります」


「あの・・・本当に良いんですか?カゴまで」


「もちろんですとも」



男が誰かと話をしている。聞くことは出来るが言葉が・・・



「チュー・・チュー・・・」




・・・




私は誰かに・・・もらわれたのだろう。



わぁ!



うゎっ!


そんなにカゴを振って歩くと、私が・・・うわぁ!?




「ただいま〜〜〜」



そんな



そんなことって




ないだろ!?




(私だ)




(お父さんだ・・・有美・・・)


有美・・・頼む。何か食べ物を・・・。空腹で倒れそうだ



午前2時
私はカゴを食いちぎってリビングに向かった。


信じられない身のこなし、そしてアゴの力


冷蔵庫を喰い破る歯
食べても食べても・・・満たされない。



気が付くと食べた分だけ大きくなっていた


そこから記憶が飛んでいる。

ひたすら肉を食べている事が分かる




人肉・・・



無我夢中で食べた





うまい




もっと・・・肉・・・



暗い。

どこだ?

突然目が覚めたような感覚・・・

ピンポ〜ン



有美が玄関へ向かうのが分かる。

私は何をしていたんだ?


暗い・・・


明かりを点けよう。



もう少し






誰かがリビングに入って来た


有美か?



「明かりをお探しですか?」





「あんた・・・あんときの!?」


「おやおや・・・これは大きくなられましたねぇ。自分の姿を確認されましたか?」



「あぁ・・・ハムスターになってる。どういう事だ?」




「あなたはこの世界の生き物ではありません。私と一緒に行きましょう」


「イヤだ!私はこの姿でも良いから家族を見守りたいんだ」



「家族を?あなたは・・・まだ分かってらっしゃらない。あなたが何をしたのか」




私は取り返しのつかない事をしてしまった。



愛する家族・・・


愛する家族のためにわが身を犠牲にしたのに



愛する家族を食べてしまった。



息子の亡骸の前で涙が止まらない。




「さぁ・・・行きましょう。この穴の向こうに仲間がいるはずです。さぁ!」



私は力なくうなずくと、暗い闇の穴へ入って行った。
有美が心配だった。けど・・・もうどうしようも無かった。



「さて・・・あとは外のお嬢さんだけですね」



箱終了



◇次回は心眼です◇お楽しみに

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posted by まさるっち at 22:07| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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