2012年04月04日

寿命(第2話)

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寿命


安アパート。

外は凄い台風でアパートが時折揺れてはきしむ。


東京で一人暮らしをしたいが為に浪人生をしている。



二浪・・・



都内の三流大学を受験したが『不合格』


次、ダメなら田舎に帰ろう。

でも・・・帰ってもやりたいことなんて無い。


ムシャクシャしてた時に・・・


ギャンブルにハマった。

初めは時間潰し程度だった。


一万・・・二万・・・


翌日も


翌々日も


気が付いたら生活費が無かった。


通帳残高・・・



320円。
マジで・・・ヤバい・・・


バイト先から前借りするか、親に泣きつくか

友人に頼み込む


バイト先は不景気で取り合ってくれない。

親は余裕が無い。

東京に来てから金を貸してくれるような親友はいない。



サラ金かな?


※一定の収入があれば、どなたでもご融資致します※


そんな触れこみが東京には溢れかえっていた。



ブイ〜ン



自動ドアを超えて受付には満面の笑みで女性が対応してくれる。


これで、何件目かな?


多分・・・



5件目


一定の収入と言っても月に5万円程の稼ぎ


どこも貸し渋って難色を示す。


諦めかけた時、貸してくれそうな所を紹介してくれた。


今にして思えば・・・騙された・・・


紹介先は闇金・・・


法外な利息


執拗(しつよう)な電話や取り立て



脅し




まるで映画の世界だ。


俺が借りた金額は5万円。



すぐに返せる。



たった5万円・・・



それが


わずか2週間で50万円


絶対無理だ。そんなお金返せっこない。

もう嫌だ。


親に頼むしか・・・


無理かも・・・・・・・




死ぬ?



そんな風に悩んでいたのが1カ月ほど前の話。



今、財布の中身はズシリと重い。


どうしようもなく途方に暮れていた時に見つけた。



闇の販売所
※買い取りも致します。


買い取りも致します?


街をふらついていて偶然見つけた店だった。


この際、何でも良かった。
テレビパソコン、冷蔵庫、洗濯機・・・


売れるものは、何だって良かった。


怪しい雰囲気を漂わせる扉を開け、店内に入る。











何かを売っているにしては店内に物がない・・・むしろ
店だとは思わない



昼間なのにうす暗く電気もついていない。

「すいませ〜ん。誰かいませんか〜?」


「いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」


奥のドアから一人の男が入ってきた。


黒いロングコート・・・目深に被ったフード・・・

口元以外、顔が全く分からない店員


サービス業だろ?



「あの・・・表の看板見たんですけど・・・」



「・・・」


「・・・」



「あの・・・買い取りもしますって・・・」


年齢不詳の店員が笑ったような・・・


「そうですか、何をお売りいただけますかな?」



「えっと・・・液晶テレビとか家電製品でも買い取って
もらえるなら、何でも・・・」



生きるためには仕方ない・・・テレビや冷蔵庫がなくたって
生きて行ける。


「おやおや・・・お客様何か勘違いなさってませんか?うちは
リサイクルショップなどではありませんよ」


「えっ?でも買い取りもしますって・・・看板に」



「お客様、相当困っておいでのようですが当店は・・・


・・・


世にも怪しいモノしか買い取りは致しておりません」




「そんな
俺・・・そんな珍しいモノなんて・・・持ってないし」


「あるじゃないですか?」


「えっ?」




「あなたの若さを買い取りましょう」


「若さ・・・を?」



「はい・・・
あなたの若さ1年を20万円で買い取りましょう」


「じょっ・・・冗談じゃない。そんなもん死んでも売れない」


「おやおや・・・そうですか。それは残念」


「帰ります」

それだけ言って俺はドアを開けた。

帰り際、店員が・・・呟いた・・・



「あなたは きっと また ここに来る」


「2度と来るか!!!」

苛立ちをあらわにしてドアを閉めた。


空腹で倒れそうだ


すれ違う人は皆無口で・・・誰もが俺を馬鹿にしているように
思えた。


もう少しで・・・アパート。


部屋の前・・・


3人の男が俺の部屋のドアを取り囲んでいた。



マジ?


雨も降ってきて・・・人生で一番ついてない日


重くドス黒いドアを押しあける。


「いらっしゃいませ・・・そろそろお越しになる頃だと思いました」


「そう・・・で・・・すか?」


「ここに来るお客様は必ず・・・もう一度来店なさる。何故かわかり
ませんがね」


そう言うと店員は椅子を差し出した。

無言のまま椅子に座る。


そして・・・


「5年・・・買い取りお願いします」


「承知しました。では・・・こちらの誓約書にサインを」


サイン・・・



空腹のまま『どうでも良いや』
そんな気持ちでサインした。


目を覚ますと安アパート
正午過ぎになっていた。


あれ?いつの間に自分の部屋に・・・



夢?


机の上には無地の封筒。
大金が入ってるのを確認して夢じゃなかった・・・と気づく。
現実?鏡の前に立って確かめたけど・・・昨日と変わった様子は無い。


本当に今は25歳なんだろうか?取りあえず・・・お金を返しに行こう。


闇金業者に80万円支払った。


そのままの足取りでコンビニに向かい食料を調達


何日分かの食料を買い溜めしたつもりだったけど・・・あっという間に
無くなった。


まあ、無理もない。久しぶりの食事だったし。


それに、まだ約20万ちょい残っている。
借金してからアルバイトや予備校にも行ってないや


まっ!いっか!!



パチンコでも行って忘れよ



豪遊・・・わずか3日で20万が消えた。

おっかしいな〜・・・そんなに使ったつもりは無かったけど
財布の中身は空っぽ


人間・・・実際に汗水垂らして稼いだ金じゃないと大切にしないな。



分かってたけど・・・生活費に困った末


闇の販売所を訪れていた。



すんなり買い取ってくれた若さ・・・なんかタダで大金貰ってるようで悪い。


同じように5年の若さと引き換えに100万円。今度は丸々自由に使える。


ラッキー!!


無駄遣いしないようにと思いつつも1万なら良いか!
パチンコに熱中して気づけば負けた。

夜・・・歩いて買える途中にキャバクラの呼び込みと仲良くなった。
そしてキャバクラに行ってしまった。


まだお金はある。


初めて夜の東京を知った気がする。

綺麗で艶(あで)やかで良い匂い、同い年くらいのホステス達


そこで一人の女の子と出会った。田舎では決して会えないような


美人だった。


「お兄さん、こういうとこ良く来るの?」

「いや・・・初めて・・・」


「なんか慣れてそうだよね〜」



そんなに老けて見られたことは無かった。同い年くらいの子に
お兄さんなんて


・・・






まさか!


急いでトイレに入って自分の顔を確かめた。


伸ばし放題のアゴヒゲにボサボサの髪の毛・・・落ちくぼんだ目・・・
艶の無い肌・・・


まだ20歳とは到底思えない自分の顔を触って初めて気づいた。
本当に歳とってる
昨日と違う自分


計算して30歳の自分
たった3日で10年も老けた。
あり得ない・・・どうしたら?



「大丈夫?」
店内に戻って彼女が心配そうに聞いてくる。


「あ・・・うん。ちょっと疲れただけ」


親や友達に合わせる顔が無い・・・30歳の自分を周りが納得する
はずがない。


どうしよう・・・



隣の彼女が嬉しそうに話しかけてくる。
良い匂いで・・・俺の悩みなんか小さく感じる。



このまま時間が止まってくれたら良いのに


バカだな・・・本当に・・・
そう思って家に帰った


お風呂に入ってひげを剃って鏡の中の自分を見る


20歳じゃない!手にも小じわが沢山あって違う人みたいだった


翌日・・・外に出る気力もなく・・・部屋で考えた。


考えても考えても答えなんて見つかる訳無い。


そう思って吹っ切れた



取りあえずパチンコ行こう。


夜、またパチンコに負けた。
そのまま癒しを求めて昨日と同じキャバクラへ


何もかも忘れさせてくれる彼女は魅力的だった。
名前はクミ


話が上手く飽きさせることのない時間。


何してんだろう。



分かってたけど・・・パチンコとキャバクラ通いが止められなかった。


クミの為なら何でもしてあげられる。

クミも多分そう思ってる。
クミの喜ぶ顔が見たくて指名もしたし次々とボトルも降ろした。


そんな生活がいつまでも続く訳もない。


やっぱり・・・最後は・・・



闇の販売所



思い切って10年分・・・200万円契約した。


これでクミに会えるし
ブランド物の鞄をプレゼント出来る。
彼女の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

俺・・・


いま・・・いくつだ?


そんな事よりパチンコで時間潰してクミの店に行くことで
頭がいっぱいだ。


「はじめまして」


クミが俺に言った。





「何言ってんの?もう飲んでんの?」






クミがキョトンとした顔で俺を見る。



・・・


失敗した!!いきなり10年老けたら俺だと分かる訳ない。

トイレで自分の顔を見て思った。


白髪の混じった髪の毛にだらしないお腹
おまけに中年オヤジ独特の匂いもする。


クミに嫌われたくない。


クミを失いたくない。・・・けど。
昨日までの俺って言っても信じてくれる訳ない。


新しい・・・自分に・・・
初めて来店した客になる事でクミと仲良くなれば良い。


その後・・・また何度も指名してあげた。喜ぶ顔が可愛かった。


クミは俺に惚れている。


それから2週間ほどしてクミから欲しい物があると切り出された。


「車?」


「うん。免許取ったけど車無くって・・・欲しいな・・・なんちゃって」


その日はそれで終わったけど。買ってあげたい。


その思いだけで闇の販売所を訪れた。


「おや・・・いらっしゃいませ・・・何かお探しですか?」


いつもと変わらぬ店員と店内

迷うことなく・・・歳を売った


今・・・

俺の手元には600万の大金
これさえあれば高級車が買える。


でも・・・俺って分かるかな?
早く会いたい


大金片手に急いで店を目指した。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ」


おかしい。たった数メートル走っただけで息が続かない
「はぁ・・・はぁ・・・」



ドン!

「なんだぁ〜このジジイ。いきなりブツカッテきやがって」

「あ・・・ごめんなさい・・・ちょっと急いでて」


「急いでてじゃねえよ。そんなんで許して貰えると思うなよ!」


「かっ!勘弁して下さい。本当すみません。」



路地裏で3人組に殴られて蹴られてのた打ち回る。


「このジジイすんげ〜大金持ってんぜ」


「ちょ・・・そのお金は勘弁して下さい。いま・・・手に入れたばっかで」


「うるせ〜」そのまま殴られ


「うっ・・・ぐぇ」


「これで勘弁してやるよ。じゃあな・・・じ〜さん」




なんで・・・こんな目に・・・
体中が痛い。


え?


嘘?


歯が何本も抜けてる。
残りの何本かがグラついて・・・起き上がれない


「チクショー・・・俺が何したってんだよ」


もう・・・クミに会いに行くお金が無い。



このまま死んじゃうのかな?俺・・・



俺・・・いま何歳だよ?


ショーウィンドーに写る自分に聞いてみた。


白髪とシワだらけの顔に似合わない若者の服


中身は若くても見た目はおじいちゃんだ。


何度も何度も顔を触って・・・確かめる。


財布には20万ちょっと


これで・・・どうしたら・・・幸せになる?



「いらっしゃいませ」


闇の販売所


「あの・・・若さを・・・若さを売って下さい。」

「おやおや?お客様・・・若さをお求めですか?」


「いま・・・20万ちょっとあります。それで買える分だけ
売って下さい・・・お願いします」



「・・・」


「・・・」



「残念ながらお客様・・・当店では1歳につき100万円でお売り
しております」



「1歳で100万円?俺は1歳20万で売ったのに・・・」


「こちらも商売ですから・・・」


「そんな!?1歳も買えないなんて・・・どうしたら良いんだよ」


「・・・」


「お客様相当お困りのようですね。こういうのはどうでしょうか?」


「お客様の残りの若さを500万で買い取らせていただきます。」


!!!?


「そんなことしたら・・・俺が死んでしまう」


「はい・・・確かにお客様は死んでしまう」
「ですが、その500万で来世に賭けてみませんか?」


「来世?」


「はい・・・あなたの残りの人生は既に見えています。そこでお客様の
現世の記憶があるまま生まれ変わってみませんか?記憶があるまま生まれ
変わるのに500万なら安くはありませんか?」



「でも」


「記憶があれば決して同じ失敗はしませんよ。始めから善も悪も分かるの
ですから」




そして俺は記憶のあるまま生まれ変わった。


同じ失敗を繰り返さないように・・・


あの日と同じように嵐で強風が身にしみる。


俺が住んでいた安アパートには今女性が住んでいる。


どこかクミに似ているようだけど違う。



俺も安アパートに住んでいていつもその女性を見つめている。



なぜ・・・



同じ安アパートかって?





それは俺が蜘蛛(クモ)だから・・・



生まれ変わったとしても人間とは限らない。



人間の記憶があるまま食事をしている時・・・ハエや蛾を食べている時




記憶は・・・残さないほうが良い



寿命終了


◇次回はペットです◇お楽しみに・・・

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posted by まさるっち at 21:24| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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